俺は、いつからあいつのことが好きだったんだろう。
気付いたら好きになってたんだよな。なんつーか…そう、突然。

最初は女のくせに何でも出来て、強くてかっこよくて……嫌いだった。
思い出すんだよな、アニキを。あいつも何でも出来て、強くてかっこよくて憧れだった。
俺もそうなりたくて努力したけど、俺は所詮俺でしかない。
そのうち家族に比べられるようになってからは、やる気も起きないし、アニキのことも嫌いになっちまった。

あいつは何にも言わなかったから。







そう、言ってほしかったんだ。「俺とルークは違う」って。







は兄さんと同じなようで違かった。
あいつはハッキリものを言うし、それにコテンパンにやられてきた。俺の言ってほしくない言ってほしいことを、ズバズバと言ってくれるんだ。
でも優しさも持っていて、他人思いなんだよ。

だから好きになった。








「ルーク、一緒に訓練しましょ」

「おう、いいぜ!今日こそ俺が勝つからな!」

「のぞむところよ」







最初は負けることに抵抗もあったけど、そのうちそれが当たり前になっちまったんだよな。
俺はこいつには勝てない。してる努力の差が違う。







「おい、こんなところで何してんだ?」

「ルーク!?」

「……何焦ってんだよ。ひょっとして迷子か?」

「//////////そんなことっ…」

「何だ、図星かよ」







真っ赤になった顔が可愛いなんて、恥ずかしくて言えないけど。
もともと美人だからな。本人はわかってないけどさ。







「何でも出来るリーダーにも、弱点はあんだな」

「しょうがないでしょ、私だって人間だもの」







いつもだったら食いついてくるこいつが、女らしくそう言うと拍子抜けだった。
いや、それよりももっと………触れたいとかそういう類の気持ちが湧き上がってきちまったんだ。
俺とは違う種類の人間だって思ってたのに、ホントはこんな近くにいるんだって思った。







「なあ、お前さ」

「何よ?」

「俺と付きあわねぇ」

「ばかね。いつも訓練付き合ってるでしょ」

「…」







さらりとかわされたのか?いや、こいつのことだから鈍すぎてわかってないんじゃ。
そう思ってもう一回言おうとしたが、きょとんとした表情で見返されてこっちが真っ赤になっちまうじゃねーか。

恥ずかしすぎて言えねぇ。







「どうしたのルーク、熱でもあるの?」

「うっさい、俺が熱あるわけねーだろ」

「……そうね。なんとかは風邪ひかないって言うし」







そうやって俺を馬鹿にしながら、は俺のおでこに手を当てた。







「うん。大丈夫そう」







ばか。そういうとこがたまらねぇんだよ。







そんなこんなで俺たちの関係は進むわけもなく、第七小隊として俺と、ロディ、ライアン、セシル、カタリナの六人は
ワイワイガヤガヤと楽しく時に、厳しく見習い騎士生活をエンジョイしてたわけだけど、カタリナのマルス様暗殺計画で一変しちまった。
俺たちはカタリナのことでお調べを受けることとなり、その時期は他の奴らから白い目で見られることもあったくらいだ。
も表には出さないけど、落ち込んでることが多々あった。

でもそんな中、のマルス様の近衛騎士登用は見習い騎士全員にとって大ニュースだった。
第七小隊も全員で大喜びし、その日は酒場に飲みに出かけたくらいだ。

その時のことは一生忘れられない大切な思い出だ。







「明日は休みだから無礼講だぜ!」

「あんまり飲みすぎるなよ。泥酔したお前を部屋に連れて行く私の身にもなってくれ」

「いいじゃない、ロディ。泥酔したルークなんてそこら辺にポイしていけばいいのよ」

「セシル、もしルークの身に何かあったら見捨てた私にも非があることになる。そういうことは避けたい」

「ロディさんは真面目ですね」

「ライアン、お前にも同じ責任が発生するんだぞ」

「そっ…それは嫌です」

「オイオイ!祝いの席だ、俺の後始末やなんやらで酒を不味くすんなよな!」







そう言ってちびちび飲んでいるを見ると、どこかに意識を置いてきたようにぼーっとしていた。
気になってじっと見ていると、俺の視線に気づいたのかぱっとこちらを見る。







「何?」

「お前のお祝いだぞ、そんな顔してんなよ。みんなで楽しもうぜ」

「うん」







みんなっつー言葉がやけにむなしく響く。きっとの返事もしょげてるからだろう。







、カタリナには今度会ったときに報告すればいいだろ!あいつは誰よりもお前のことが好きだし、絶対喜ぶと思うぜ」







そう言うと、後ろからセシルにど突かれた。
俺らの中ではカタリナという名前は禁句になっていたんだ。けど、それは逃げに過ぎない。

俺たちはまだ、カタリナとそのことについて話し合ったわけじゃない。
あいつがそう軽々しく暗殺なんてするもんか!そんなことが出来るほど肝が据わった奴じゃないってこと、俺らが一番わかってる。
何か理由があるはずだ。だから今度会ったときこそ、その理由を聞いて納得できるかできないかは自分で判断する。







「そう…そうよね。カタリナには今度会ったときに報告して喜んでもらえばいいんだわ」

「ああ。これからの出来事を溜めといてさ、会ったときに夜通し話せばいいじゃねぇか。女ってそういうの得意なんだろ」







そう言うと、はセシルと顔を見合わせて大笑いした。







「あなたが女の子の得意なことを知ってるなんて思わなかったわ」







はこう言うと、持っていたグラスを置いて俺を抱きしめた。
俺もそうだけど、他の奴らも目を丸くしてを見つめている。







「ありがとうルーク」







そこから見上げられてにっこりされると、胸に矢が刺さったような衝撃が起こった。

お前の放った一撃は、俺に必殺を食らわしたぞ。







そんな俺らが戦争に出るのは、はっきり言ってもっと後だと思ってた。
でも戦いには後も先もないってことがよくわかった。



騎士になるってことは、こういうことだったのか?



マルス様を信じて戦うのはいい。けどこのグルニアの反乱は何だ?本当にグルニアの民が悪いのか。
こいつらはただ怯えて、毎日必死に生きているだけに見える。そして、反乱の首謀者はそれを助けようとアカネイアに足掻いているだけに見えた。

悪いのはアカネイアじゃないのか?グルニアなのか?
けど一介の騎士の俺は何も言うことは出来ない。俺はアリティアに仕えているんだから、マルス様についていくだけだ。

その疑問をアラン隊長に漏らしてしまったことがあった。けど隊長は何も言わずに俺の思っていることを全部聞いてくれた。
そして俺が話し終わってスッキリした時、「あくまでも私の考えだが」そう言って答えてくれた。







「一介の騎士だからといって、自分の信念を曲げてしまうものではない。お前がそう思ったのならば、お前にとってその考えは正しい道なのだ。だからそれを諦めるべきではない。」

「でも俺は何も意見出来ません」

「そうだ。しかし選ぶことは出来るだろう」

「選ぶ?」

「…もし、マルス様がお前の考えと意に反したことをお前に強要したら、それを遂行するか」

「……それが命令ならば」

「……そうだ。それが正しい騎士の判断だ」

「でもそれじゃ…!!!」







俺が食い下がると、隊長は滅多に見せない表情で笑った。







「お前はそう簡単に遂行しようと思わないだろう。たぶん……その命令に対してやる気が削がれる」







うっ……当たってる。
なんで俺の性格がわかるんだろう。第七小隊の奴らの10分の1も一緒にいるわけじゃないのに。







「その後もマルス様の命令を聞きたくなくなるはずだ。ではマルス様がもし、グルニアの平民を殺せと言ったらどうする?」

「それはっ……」







すぐは答えられなかった。けど……







「殺すかもしれません。けど俺はマルス様を主君として信じられなくなる。俺たちもアリティアに住んでる奴らも、同じ様に切り捨てられるかもしれないって思います」

「そうか。そうかもしれんな」







隊長はそういうと、再び笑った。







「ルーク、お前は主君を選べるのだ。一人前の騎士なのだから」

「あ……」

「お前の考えを諦めるべきではないさ」

「……はい!」







隊長は尊敬すべき人だ。とても厳しいけど、強く逞しい騎士の中の騎士だ。
ジェイガン様がアリティアに騎士隊長として残るように言ったのがわかる気がした。
この人の下にいれば、良い騎士がたくさん育つ。俺もその一人になれる。

この時、それを強く感じた。





だからまさか俺の好きな奴が俺の尊敬する人と付き合ってるなんて、思いもしなかったんだ。





あの事件は俺が今まで生きてきてやったことで、一番最悪な事件だ。

が女らしくなったと思ったのは、カダインで俺が風呂場でのぼせた事件の後くらいからだ。
特に行動が変わったとか、気になることをし出すようになったとかじゃなく、ただなんとなくそう見えるようになったんだ。







「なあ、最近が変わった気がしないか?」

「そうか、私はそう思わないが」

「僕も特には」

「……そっか。なら俺の思い過ごしかもしれねぇな」







どんな些細なことでも気付くロディと、よく一緒に戦ってるライアンが言うんだ。そうなんだろう。
その時はそう思った。だから最初は俺の気持ちが増したからかと思ったんだけど…

アリティア奪還の時、もらった休日中ずっと姿が見えなかったからわかったんだ。







「セシル、はどこだ?」

「さあ。部屋に帰ってないから私もわかんないわ」







どう考えてもセシルのこの返答はおかしいだろ。
一番の仲良しで同じ部屋の奴が故国の休日で一緒に過ごさないわけがない。がセシル以上に仲がいい奴なんて、カタリナしかいないはずだ。







「そっか、わかった」

「ルーク…」

「なんだ?」

「…ううん、別になんでもないわ」

「訓練所にいるから、もしが帰ってきたら相手して欲しいって伝えてくれ」

「わかった」







真実を確認するのは怖かった。こんなに怖いなんて思ったこと、今の一度までなかった気がする。
だからこそ休日最終日に訓練所前で会ったに、いつものようにちょっとおどけた風に言ってみたんだ。



どこかで女友達と飲んでたとか、故郷まで足をのばしてたとか言ってくれと願いながら。



けど俺の好きな奴は素直なんだ。隠し事が出来る奴じゃない。そもそも隠し事をするような奴は好きになんねぇよ。
が素直な反応をして捨て台詞を吐いて逃げちまったあと、俺は茫然自失しちまった。
そんな俺を誰かが殴って意識を戻してくれたけど、誰が殴ったかも覚えてない。
そのぐらいショックだったんだ。



人の多いとこで聞いたばかりに、あいつはみんなから質問攻めを受ける羽目になっちまった。
それからはずっと俺を避けるように行動して、目も合わせてくれない。
俺の気持ちも知らないから、きっと恨みに恨んでるだろうな。
ルークがいつもの調子で私を陥れたって思ってるだろ。でも違うんだぜ、








俺は、お前が好きなだけなんだ。







グラでの戦いの最中でも、俺はの相手が誰かが気になって上の空だった。
それを何度もロディに注意され、挙句には途中で(ロディの勝手な判断で)二軍に下げさせられた。
けどそんなことも気にせず、ずっとの相手が誰なのかを考えていた。

でも誰も思いつかなかった。
だからもしかしたらロディが内緒で付き合ってるんじゃないかとも思ったけど、アリティアでの空白の二日間の説明が出来ない。
ロディは俺と一緒に部屋の中にいた。







「もしかしてジョルジュさんか…!」







それはありえた。
二人とも弓使いだ。そして並んで歩いてもなら見劣りはしないだろう。







「ルーク」

「! なんだロディか。俺になんか用か」

「用がなかったら呼ばない。お前を勝手に下げたこと、アラン隊長に怒られた。それで二人で宝物庫の方にアカネイア兵が残ってないか確認してこいって言われた」







ロディの少しふて腐れた顔がなんともおかしかったけど、特に笑わないでおいた。
全部俺のせいだもんな。

宝物庫に着くと、アカネイア兵はおらず震え上がったグラの新兵が立ちつくしているだけだった。
一応、中に誰もいないことを確認し、玉座の方に向かう。すると兵の向こうでジョルジュさんとオグマさん、が何やら楽しそうに話している。
気になって壁に耳を当てたけど、内容は聞こえなかった。
がっかりしていると、ロディの視線に気づく。







「何をしている?」

「い、いや別に」

「……私はジョルジュ殿ではないと思うが」

「! わかってんなら気付かないフリしろよ!!!」







恥ずかしいだろっ!



その後はジュリアンさんに鍵を開けてもらって、玉座の間の次の間に入れてもらった。
そこでは数人の兵士が楽しそうに中を覗いている。
一番前でカインさんとアベルさんがニヤニヤしながら話していた。








「サムソン殿だろ」

「いーや、アラン隊長だって」

「どうしたんですか?」

「アラン隊長が戦ってんだよ」

「ええっ!」







無理矢理中を覗くと、そこでは華麗な戦いが繰り広げられていた。
剣を撃ちつけ合う鈍い音が響く中、二人の巨体が宙を舞って風を起こす。
舞い上がった闘志が俺たちの方まで流れてきて、気持ちが昂るのを感じた。

でも一番気を魅かれたのは二人の表情だ。なんて楽しそうなんだろう。

俺もいつかロディとこんな風になるんだろうか。
そう思ってロディを見ると、尊敬の眼差しでアラン隊長を見ていた。横にいるカインさんとアベルさんもだ。
もう一度戦うアラン隊長を見て、俺もこんな人になりたいと思った。





もしアラン隊長のような人がの恋人だったら、俺は諦めきれるだろうか。





その夜はグラの新人兵士と意気投合して飲みに飲みまくった。
のことがあったからタカが外れてたんだ。だからセーブすることも出来なくて、ロディに注意されても無視して飲んだ。
そのうち新人兵士が酔いつぶれ、ロディがライアンの様子を見てくると言って席を外すと、俺はに会いたくてしょうがなくなったんだ。
その衝動に駆られて立ち上がったのは覚えてる。でもそれ以上の記憶はない。
これは本当だ。だからそこでぶっ倒れたんだと思ってたんだ、部屋で起きるまではな。

だからロディが冷静に俺の起こした事件を説明した時は信じられなかった。そんなことやってないってさ。
でも何回聞いても同じことを言うんだ。そして二十回目を聞いた時、初めてロディがキレた。
だから本当なんだって思った。





俺、なんてことをやったんだろう。





ロディに言われたけど、覚えてないことが罪……本当にその通りだ。
シーマ王女にも色々言われたらしいが覚えてない。というか、そんなに近くにお前がいたなら止めろよとも思ったけどやめておいた。
悪いのは全部俺なんだから、止めなかったロディを責める事なんて出来ないだろ。

そして、そこで初めての相手を聞いた。







「アラン隊長だったのか……」







その事実は、意外なほど気持ち良く受け入れられた。
他の誰にも見向きをしないわけだ。あんなに男の中の男、騎士の中の騎士って人と思い合ってんだ。







は誰よりも努力する奴だ。そしてアラン隊長は騎士の鑑だ。お似合いのカップルじゃないか」







俺の言葉が廊下に虚しく響く。
ハッとして周囲を見るけど、誰にも聞かれてないようでホッとした。

すぐに諦めきれるほど簡単な気持ちを持ったつもりはない。けど勝つ見込みがないのは明らかだ。
だから俺は見守ることにしたんだ。





ずっと、のことを。





二人の幸せを見守れるほど器用じゃない。でもだけは見守っていける。
だってまだ好きなんだぜ。








壮絶だった戦が終わってアリティアを離れた今だって、ずっとを思ってる。







の奴、元気かな〜っ」







俺がアリティアを離れるとき、はアラン隊長の子供を身ごもっていた。
けどそれ以降は知らない。
何年も故郷を離れて旅してるし、特に手紙も出してない。
風の噂でマルス様とシーダ様にお子が生まれたのを聞くような、遠い場所まで来ちまった。

俺が起こした事件の後、とアラン隊長の仲は危ぶまれたけどちゃんと元鞘に戻った。
最初は納得いかなくてアラン隊長に「どうしてこんなことになってるんだ!」って食ってかかったけど、「込み入った事情がある」の一点張りだった。
だからに事情を聞こうと思ったけど、には何も聞けなかった。何か言ったらが壊れてしまいそうなくらい繊細に見えたから、どうしても聞けなかったんだ。
だけどその込み入った事情が明らかになると、二人はそれを受け入れてもっと絆が強くなったように見えた。



本当に勝てないと思った。







「アラン隊長も元気かな」







病は治らないって言っていた。けど二人の愛情があればそんなもの吹き飛ばせそうに見えた。
だから俺は信じてるんだ、今でもが幸せだということを。







「……そっか、だから俺は――」







やっとわかった。俺がとアラン隊長の仲をすぐ受け入れられたわけが。
知ってたんだ。がアラン隊長と話すときに幸せそうにしてるのを。

よく考えればわかったんだ。の相手が誰かなんて。







「ばっかじゃねぇ、俺!」







幸せそうな顔をしてるが好きだった。
だからアラン隊長には勝てない。俺じゃ幸せな表情にしてやれないもんな。







、俺が帰るときまで幸せでいろよ!暗い表情なんかしたらただじゃおかないかんな!!!」







そう叫んで、帰国への一歩を踏み出した。








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ながっ!(笑)
もっと短くなる予定だったのに、何故かこんなに長くなりました。
書いてたらルークになりきりまくって…
あの時はこう思って、この時は絶対こう思ってる!なんて考えてたらこうなりました^^
なんかすごく楽しかったです♪
書き足りない話もあるんですが、あくまでルークがを好きになった理由的な話なので。



2011/08/13