「エドマンド!」
「!」
私は兜を脱ぎ捨てて一目散に彼の元へ走った。
ラバダシ王子とやりあった時に傷でも作ってたら一騒動だもん。
駆け寄ると、エドマンドは血がこびりついた鎧のまま私を抱き留める。
「うえぇ…」
「なっ、なにが「うえぇ」だよ!走って来たのはそっちじゃないか!」
「そうだけど…、生血が…」
体を離すとべっとり。鎧着ててよかった。
「あ…ごめん」
これはさすがに気持ち悪いとわかってくれたのか、エドマンドは素直に謝ってくれた。
「ルーの言った通りだな。も復讐を望むなんて」
「ガッカリした?」
「いいや、血気盛んなのはいいよ。兄さんはどういうかわからないけどね。でも、って戦うのは嫌いじゃなかったかい?」
「嫌いだよ。今も嫌い。でも今回は守らなきゃいけないものもあったから…」
「え?」
自分が戦ってた場所を見て溜め息を吐く。
コルはまだ、戦いが終わったこともわからずにきょとんとしていた。そしてその横には目を爛々と輝かせたコーリン。
「ああっ!!」
エドマンドが大声を張り上げたのは言うまでもない。
でも、それを遮るように誰かが叫んだの。最初は誰かわからなかったんだけど、城門の方を見たらラバダシ王子が立っていた。
自分の部下が山積みになった上に立ち、半月刀をきらめかす。
「!」
彼の狙いは私とエドマンドだった。
どちらかの頭をすっぱりと切れれば、儲けもんみたいな感じかな。
「、下がれ!」
「あっ…ちょ、エドマンド!」
彼は私を突き飛ばすと前に踊り出た。でも彼を庇うものは何もない。
ラバダシ王子はもう飛び上がってる。
ああっ、エドマンドが真っ二つになっちゃう!!!
何も出来なくて、それも恐くて目を瞑ってしまう。
どうしよう、エドマンドがナルニアから消えちゃう!
…
…
あれ?
「ん?」
エドマンドの声が聞こえた。
まだ生きてると思って目を開けると、彼は私を庇うように立っていた。
けど、ぴんぴんしてる。
「あれ、エドマンド…生きてる?」
「うん。あれ………、あ」
私達は顔を見合わせ、そしてラバダシ王子が立っていたとこを見る。
でもそこに彼はいなかったんだ。
「あれ、ラバダシ王子はどこいったの?」
立ち上がってキョロキョロするけど、彼の姿形も視界に入らない。
エドマンドはそんな私の肩を叩いて上を見るように指差した。
「あっ…」
彼が立っていたとこから少し上の方、城門の壁に引っ掛かるようにしてラバダシ王子はぶら下がっている。
顔を真っ赤にして腕をぶんぶんと振り、どうにか降りようともがいている。
「あははっ」
高らかな笑い声が響く。
はっとして後ろを見ると、ルーシーが口に手を当てて笑っていた。
「いい気味だわね」
「その言い方は酷くありませんか、ルーシー女王」
ペリダン卿がルーシーの弓を受け取りながら言った。そんな彼の口元も歪んでいる。
「卑怯だぞ、エドマンド王!私を下ろして正々堂々と戦え!」
さっきよりも顔を上気させて手を振りまくる。
あああ、あんな姿みっともない。部下がみんなやられてたのがせめてもの救いだね。威厳なんてあったものじゃないもん。
「卑怯とか言われても、引っ掛かったのは自分のせいだしな…」
ボソリと呟くエドマンドの言葉が、なんだかラバダシ王子に同情の念を浮かばせる。
なんか、かわいそう。
「この女ったらし王め!その娘はピーター王の女だろう!?貴様、横取りを企んでるんだろう!」
「な、なんだと!?」
隣で呆れて笑ってたはずのエドマンドが、剣を掴んでラバダシ王子に突進する。
私はびっくりしてその腕を引っ張った。
「ちょっとエドマンド!ラバダシ王子を殺す気?」
「止めるな、あいつは僕達の関係を…、僕を侮辱したんだ!」
「そんなこと言っても…」
自分を侮辱されたと言われたら止める術がない。
だって、私だって復讐をしようとこの戦いに参加したんだもん。
「待たれよ、エドマンド王」
口では言い返せないけど、腕を捕まえててよかったと思う。だって、リューン王がその場を治めようしてくれてるんだもん。
リューン王を見た時、ダーリンと目が合ってしまう。彼は無表情だったけど、その瞳だけが揺れ動いていた。
「王子よ、もしそなたが以前にこのように勝負を申し込まれたならナルニア国では一の王から下はものいうネズミにいたるまで誰一人それを断りはしなかっただろう。
しかし、宣戦布告も無しにこの平和なアンバードを攻めたということは、もはや騎士ではなく首つり役人の鞭を受けるに相応しい者に他ならぬ」
おおーっ!!!って、私の心の中で感心しちゃった。
だって、エドマンドなんて若気の至りくらいの勢いで剣を掴んだし、私だって復讐を企んだもんね。
やっぱり、人生の経験が違うんだなぁ…。
「では皆のもの、王子を縛り上げて沙汰が決まるまで牢に手厚く歓迎してやろう」
…リューン王の最後の言葉を聞いてちょっとびっくり。
さすが若い頃は血気盛んな若者だっただけある。ユーモアに溢れているというかなんというか。
「父上!!!」
その時、コーリンがコルを連れてリューン王の前にやってきた。
そしてシャスタを前面に出してにこにこしている。
「おお、来たか来たか。しかしお前達は誰の許可を得ずにこんな戦いにまで参加して……」
「の許可は得たよ」
えっ!?私、そんな許可出してない!!!
「ちょっ、コーリン!!!私そんなこと…」
「は僕らだって気付いてたのに戦いに出るのを止めなかった。だから許可したも同然だよ」
っも〜〜〜!減らず口!
確かに知ってたけど、守ってあげれば大丈夫そうだったし…。
「も内緒で戦いに参加してたんだから、お前達も許可なしだ!」
私が何かを言い返す前にエドマンドが剣をしまいつつ言った。その目をちょっと怒ってる感じ。
それはまあ、内緒にしてたけど…。
「いいのよ。私はがいたの知ってたんだから」
その後ろからころころ笑いながら歩いてくるルーシー。
そういえば確かに私を援護してくれてたなぁ…。
「なっ!?ルー、君は知ってたのか!」
「ええ。兄さん、に過保護なんじゃないのぉ?」
ルーシーはくすくす笑った。
ルーシーがエドマンドのことを「兄さん」と呼ぶときは、確実にからかっている時だ。
本当は一番彼女が恐いかもと思う瞬間。
「まあまあ、それはいい。お前達は無事だったのだから」
話の腰を折られたリューン王は苦笑しながらコルの前に来ると、両手を大きく広げて抱きしめた。
コルはびっくりして目をキョロキョロさせている。
「さあ、その顔を皆のものに見せなさい。どうだろう、おのおの方?これでも疑う者はあるだろうか」
コルとコーリン、二人の並んだ姿は瓜二つ。
これでは誰も二人が双子だと疑いようがなかった。
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アンバードの戦いが終わりました☆
怒ったエドマンド、黒いルーシー(笑)
コルも本当の親に出会えて万々歳です^^
2008/11/15