「どうせ子供ですよ!!」
「ああ、きみなんていつまでも子供だねっ!」
ケア・パラベルに響く大声。
久々なその言い合いに、城の住人は大いに驚いたでしょうよ。
でもね、これは本気の戦いなんだ。
私とエドマンドのね。
「また、再発なの?」
ルーシーが飽きれ顔で言う。
そしてやってられないと言うように部屋から出て行った。
その後にきたスーザンとピーターは、前のいきさつを知らないから驚いて手を出しあぐねている。
「永遠の子供で結構!私はあなたみたいに大人になって捻くれたくないもん!」
「捻くれ…!?何だと!もう一度言ってみろ!」
「何度でも言うよ!
捻くれ捻くれ捻くれ!」
「やめるんだ、二人とも」
この様に、後で考えれば子供過ぎる言い合いをして、私達の戦いはピーターによって遮られた。
むっとした顔でピーターを見ると、彼は私とエドマンドの顔を交互に見て溜め息を吐く。
そして何かを指示すると、私達は引き離されて自室に閉じ込められてしまった。
「ひどい!ピーターも私のこと子供だと思ってるんだ!」
ピーターは一の王として素晴らしい態度で私達に接したのに、それに気付かずに今思えば馬鹿みたいに悲嘆に暮れて、我ながら子供らしい行動に出たんだよね。
私はシーツ等々、長物を繋いでバルコニーから外へ脱出したの。
「ヘラクス!」
「のわ!、何してんだここで!」
「別にいいじゃない。ちょっと付き合ってよ」
「は?今仕事中ですけど」
「休憩中の間違いでしょ!」
仕事中と言いながら、兵舎で武器の手入れをしているヘラクスを捕まえると、逃亡に誘う。
彼なら私に着いて来てくれるってわかってるから、甘えちゃうんだよね。
「……ま、いっか。しょうがねーから付き合ってやる。どこに行くんだ?」
「内緒」
快く引き受けてくれる彼にウインクすると、忍び足で兵舎の外を見る。
よし、誰もいない。
「行くよ、ヘラクス。早く!」
「へいへい」
ヘラクスはいつも身につけてる剣を一つ掴むと、私を抱き上げて背中に乗せてくれる。
ふわりと体が浮かんで跨がった彼の体は、熱くてなんだか自分も熱くなった。
「こっちってまさか……」
10分程走ったとこで彼が呟く。
ああわかっちゃったか。
こっちには何があるかってね。
「、まさかまた試すのか?」
「いいじゃない。試すのは勝手じゃん!それに、今回こそ必要だよ!本気モードの戦いだもん」
「は〜?あんな大声の喧嘩が本気モードの戦いだって?笑わせんなよ」
「聞こえてたの!?」
「声がでけーんだよ」
ヘラクスは振り返って私の頭をごちんと叩いた。
そこを摩りながらえへへと笑うと、彼の肩を強く掴む。
「連れてってくれるよね」
「ま、どーせ今回もダメなんだろ?暇潰しにはなるからな」
ヘラクスはニシシと笑うと、また走り出した。
森を駆け抜けるってのはとっても気持ちいい。
木々の間を抜ける様に過ぎて風を切るんだ。私は思うんだけど、空気が澄んでるのはやっぱり森の中だよ。
たくさんの木々が綺麗にしてくれてるもん。
これから行くとこは歳取りの泉。その水を飲むだけで歳を取っちゃうんだ。
普通の人だったら近寄りたくないでしょ?だって、歳なんて取りたくないもんね。
でも私は違う。
もうこのまま15歳のままじゃいられないよ。
「、確か三回目だよな」
「うん。今度こそは大丈夫だよ」
「今度こそはって、一体どーすんだか」
「大丈夫だってば!」
ホントは大丈夫かもわかんない。けどポジティブにいかなきゃね!
だって、今まで二回も失敗してんだよ。ネガティブにいったらまた失敗しそうじゃん。
失敗の一回目は、白い魔女との戦いが終わった直後。
セントールの星うらべから聞き出して、ヘラクスに乗ってきたんだ。
あの時はアスランの言葉が信じられなくて来たけど、歳なんて取らなかった。
二回目はコルが連れ去られた後。自分の無力さを感じて、またヘラクスと来たけど駄目だった。
あの時は大人になればなんでも出来ると思ってた。
でも歳なんて取らなかった。
そして今日、三回目。
エドマンドと喧嘩したのがきっかけだけど、違う考えもあったんだ。
だって、刻一刻と迫る四人の帰還。それに乗じて起こるナルニアの混乱。
私が四人と一緒にこの世界からいなくなるなら…、気になるけど私にはどうにも出来ない。
けど、もし一緒にいなくならなかったら?私一人で残ったらどうすればいい?
こんな子供の姿で他国からナルニアを守れる?
出来ないよ。自信ないもん。
せめて大人だったら、もっと頼りがいあるかもしれない。戦ったって馬鹿にされたりしないかもしれない。
だから、だからなんだ。
私はナルニアを守りたい。
「?」
「あ、ごめん。何?」
「いや……」
「変なヘラクス。
そういえばさ、早くお嫁さんもらいなよ。腰を落ち着けないといつまでも浮ついたセントールだって思われるよ」
「そのことは言っただろ。俺はを嫁にもらう」
「だから私は…」
「結婚しないんだろ?じゃあ俺もしない。俺が結婚する時は、がする時だ」
ヘラクスはそう言い切ると、フイと前を向いて話し掛けるなオーラを出した。
もう、そんなこと言われても困るのにさっ!
無言が続く中、目的の場所に着いてしまった。気まずい雰囲気で背中から下りると、私は泉に近づく。
理由は二回目に来た時とそんな変わらないかもしれない。
でも、不確かな未来に希望を欲しい。
私が大人になれれば、何かが変わるかもしれない。
だから……
「お願い」
呟いて泉に手を入れる。
そしてその水を掬い、口に含んだ。
「っ……」
途端、体中に鋭い痛みが走ってしゃがんでいられなくなる。
そのまま地面に手を付くと、痛みに耐えるのが精一杯だった。
「、どうした!?」
ヘラクスが私の異変に気付いて駆け寄る。
彼は私の肩を掴むと、自分の方へ向かせようとした。
「痛い!やめて!」
痛みに耐え兼ねて彼の手を払うと、地面に倒れ込む。
そのままのたうちまわってなんとか痛みに対抗しようともがいた。
「っ!毒か?どこが痛む!?」
ヘラクスも必死に聞いてくるけど、答えることなんて出来ない。
ホント痛すぎてヤバイ。
「っ…どうすればいいんだ!クソ!」
ヘラクスはおろおろするばかり。
それも何も出来ない自分に腹が立ったのか、蹄で地面を蹴り出した。
どのくらい経ったかわからないけど、痛みが和らいできたと思った時にやっと周囲の状況が把握出来てきた。
びっくりしたのは、いつの間にかヘラクスが私の体を抱きしめてくれてたこと。
それも、彼らしくなく優しくね。
「ヘ…ラクス…」
「!気が付いたのか!!!ってことは、毒じゃないな。
一体何でそんなに……」
心配そうに覗き込んでくる彼の表情が一気に変わった。
というか止まったというか…?
「ヘラクス、どうしたの?私、体中がキシキシって痛くて…」
「…だよな?」
ほうけた顔で問われると、心配し過ぎておかしくなっちゃったんだと思った。
私は私でしかありえないのに。
「ちょっと、何いってんの?」
「………お前、成功したのか」
「はい?」
成功?何が?と聞こうとして思い止まる。
あれ、私何しに来てた?
そう、大人になろうとしてここに来たんだよね。
「……私、大人になってるの?」
「………ああ」
ヘラクスは目を点にして頷いた後、顔を真っ赤にして逸らした。
一体何なの!って思いながら彼の胸からはい出ると、泉に顔を写す。
「ホントだ。大人になってる…」
そこには、黒髪で頬がホッソリとした大人の私が写っていた。
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あとは締め括るだけ(笑)なのでちょっと楽しいですね〜^^
大人になったを待ち受けるのは、どんなことでしょーかっ♪
2008/12/10