なんだかふわふわと浮いてる感じ…




暖かくて心地よい風が吹いて、気分がいい。そう思って思い切り目を開いた。
そう。今までケア・パラベルの自室で寝ていたんだけど急に私を取り巻く雰囲気が変わったの。
だからびっくりして目を開けようとしたんだけどなんだか開けられなくて…、開けられるようになるまで待ってたんだ。
それが今ってこと!
















「わ!ここってどこ?」
















空を飛んでるまではいかなかったんだけど、広い草原に横たわってたの。
ぽかぽかと暖かな光をくれるお日様とふわふわをくれた草、そして緑を運ぶ風。
それが私をいい気分にさせていたんだね。



ずっといたくなるようなこの場所はナルニアのどこだろう?



ナルニアの全土を巡ったはずなのにこんなとこがあるなんて知らなかった。
ん、それとも無ければまた世界の裏側にでも来ちゃったかな。
















「世界の裏側ならアスランに会えるかも」
















私はわくわくした胸を抑えてくすくすと笑った。
彼が呼ぶ時、もしくは必要な時しか会えないってわかっているのに期待しちゃう。
だって、いつでも一緒にいたいくらい好きなんだもん。
















「…ーん」

「あれ、声が聞こえる」

「…か、…て」

「誰か泣いてる…?」
















遠くの方から声がした。たぶん誰かが泣いてる声。
それが気になって、アスランに会いたいなんて事も忘れて走り出した。
















「えーんえーん」
















数百メートル行ったとこに小さな穴が見えた。声はそこから聞こえるようで恐る恐る覗いてみる。
















「誰かいるの?」

「うん!助けて!」
















中は暗くて見えなかったけど小さい男の子の声だった。
きっと草原をいい気持ちで歩いてたら落ちちゃったんだろう。いきなりのことできっと恐かっただろうな。
















「大丈夫?怪我はしてない?」

「うん、大丈夫。早く助けて!」
















さっきまでの泣き声が私の声を聞いた途端明るい声に変わっていた。
怪我もしてないみたいだし、早く助けてあげなきゃ!!!

長い紐でもないかと周囲を見渡した。でもここは草原だから紐なんてありっこない。
唸るくらい考えて頭を抱える。するとあることに気がついた。
















「あれ、私ってばいつの間に冒険服に変わってるの?」
















目を開けたときは確かにパジャマだったのに、いつの間にか冒険する時の服に変わってた。
でも助かったんだ。だって何かあった時のために腰には強度のある縄を巻きつけてたから。
















「紐を垂らすからそれに掴まって」

「うん」
















そろそろと紐を垂らす。
紐だけ落ちていかないようにちゃんと腕に巻きつけて結んだよ。
















「どう?紐は来た?」

「うーん、紐の長さがちょっと足りないみたい」

「えーっ!」
















そんなこと考えてなかった。そうだよね、穴の深さなんてわかんないもん。
でもどうしよう…もう紐もないし。
















「私の尻尾に紐を結んでくれないか、

「え!?」
















後ろから声が聞こえた。その声の主は見なくてもわかる。
豊かな低い声、でも優しくて穏やかな声……アスランだ。
















「アスラン!」

、君はここに来たんだね」
















アスランはそう言うと頭をもたげて私の頬に自分の鬣をなすりつけた。
ふわふわの毛が耳にあたってくすぐったい。
















「アスラン、しっぽに紐を結んでいいの?」

「ああ、結んでおくれ」

「しっぽの先の毛が取れちゃったりしない?」

「大丈夫だよ」
















心配しつつ尻尾のふさふさしている部分の前に紐を結ぶ。
するとアスランは下半身を穴に埋めた。
















「ちょ、落ちちゃったりしない!?」

「大丈夫。私には鋭い爪があるんだ、地面に確実に引っかかるから落ちたりはしない」
















私の心配をよそにアスランは爪でがっしりと地面を掴んだ。
そして穴の中にしっぽと紐を垂らす。
すると、中から男の子が出てきた。



ライオンの男の子が。
















「ライオン……」
















アスラン以外の喋るライオンに会ったのは初めてだった。だから出てきたのがライオンの男の子だったことにすごくびっくりしちゃった。
















「ありがとう!助かったよ」

「いいえ、どういたしまして」
















子ライオンはにっこりと笑った。
アスランは嬉しそうに微笑み返すと私を見つめる。
















「どうしたの?」

は何故ここにいるのだ?」

「寝てたら急にここに来てて……アスランが呼んだの?」

「いいや違う。……いいや、そうとも言うかもしれない」
















アスランは眉間に皺を寄せると子ライオンを見た。
子ライオンは息切れしているのかはっはっはっと息を吐いている。
















「あなたはアスランっていうの?僕もアスランって言うんだ」
















えええ!?この子もアスランと同じ名前なんだ。
















「そうか。君、早く帰らないとお母さんが心配するぞ」

「あ、そっか」
















子ライオンは私が来た方とは反対の草原を見た。
そして私とアスランを見上げると二カーッと笑い、こう言った。
















「お父さん、お母さん、ありがとう」
















お父さん、お母さん!?



子ライオンが何でそう言ったか分からない。
でもその言葉を聞いてアスランが深く深く頷いたのが印象的だった。
そして子ライオンは草原に消えていった。
















「行っちゃったぁ…。可愛い子ライオンだったね」

「可愛かった…そうか、ありがとう」

「ありがとう!?ってまさかあの子アスランの子供とか!?」

「私に子供はいない」
















はははと笑う声がこだまする。草原だから声は遠くに飛んでいってもおかしくないのに。
でもあの子、なんで私とアスランに「お父さん、お母さん」って言ったんだろう?
















「それは、私達があの子から見て大人だからだろう」

「そうなの?」

「ライオンは群れで生活するのが普通なのだ。子供は群れの中のメスなら誰でも授乳してもらえる。オスには外敵から守ってもらえる。
彼から見たらオスもメスもみな父親と母親に見えるのだろう」

「私は人間なのに?」
















そう言うと、アスランは目を細めて笑った。そして私の背中にまわって鼻先を押し付ける。
まるでどこかへ連れて行こうとしてるみたい。

アスランに押されるがまま草原を歩いていく。するとぽつんと小さな泉が見えた。
そこへグイグイ押されると、彼が横にちょこんと座った。
















「池を覗いてみなさい」
















アスランの言葉に頷き池の中を覗く。池の中には何も見えない。
でも…
















「ライオン?」
















池にはライオンが写っていた。アスランかと思ったけどこれはメスライオン。彼はちゃんとたっぷりの鬣をたくわえたオスライオンとして隣に写ってる。
















「これってば、わたし!?」
















そう。このメスライオンは私だったの。
















「君のどこが人間なのだ?」
















アスランはくすくす笑いながら私の首筋におでこをくっつけた。そしてすりすりと擦り付ける。
それが気持ちよくて思わず声が洩れる。だから私もおでこを彼の鬣に擦り付けた。
















「さっきまで人間だったのに」

「子ライオンが出てきた途端、はライオンになったのだよ」

「そうだったんだ。だからあの子は私をお母さんって言ったんだね」

「…そうだろうね」
















アスランはぺろりと舌を出すと私の顔を舐める。ううん、くすぐったい。
彼はじゃれあうように軽く私の背中に足をかけると地面に転がした。
















「わっ!アスランてば」

「どうだい、ライオンの気分は」
















背中を草に擦り付けてごろごろと転がりながら空を見上げる。
草の匂いが鼻をかすめ頭がぼうっとなった。
















「うん、最高」

「そのままライオンになってはみないか?」

「え?」

「君はとても魅力的なメスライオンだ。毛もつやつやで小麦畑のよう。そして睫毛が長く、可愛い」
















その言葉で私は顔が赤くなるのがわかった。ほっぺたも熱をもっている。
寝転がるのをやめて立ち上がると、凛々しい彼の横顔を見つめた。
彼は百獣の王ライオン。そしてナルニアを造ったライオン。















でも私は?
















「それってプロポーズみたい」
















私がそう言うと、アスランはハッとした表情で私を見た。
そして無言で私の目を見つめる。
















「ありがとう、

「ううん。でもアスランにとって私がどんなに魅力的なライオンかわかっちゃったよ」

「そうだ。君はとても魅力的過ぎて私の気持ちを揺るがせる」

「ほんと?」

「本当だよ」
















アスランは立ち上がって私に近づくとほっぺにチュウをくれた。
なんかぺロリよりも嬉しかったよ。
















「私が恋をするのはいつでも、君だけだ」
















彼は耳元で囁くと小さく溜め息を吐く。そしてさっき歩いてきた方に向くと片方の前足でそちらを指した。
















「気づいたかね、あれはずっと昔の私だ」

「?」
















あまりにもいきなり言われたから最初はわからなかった。でも指している方向と「ずっと昔の私」ってとこでわかった。
さっきの子ライオンはアスランの過去の姿だってことだ。
それじゃあここは過去ってこと?
















「そうだ。私は昔、に助けてもらった。その時も君に恋をしたんだ。
あの後、私は美しいメスライオンの話を母親にたくさんしたものだ。きっと母はうんざりしていたがね」

「私を呼んだのはあの子?今のアスランみたいに私を呼んだの?」

「きっとそうだろう。昔の私はその力に気づいていなかったのだが」

「…どのぐらい過去なんだかは聞かないけど、ここはナルニアじゃないからアスランの雰囲気も違うんだね」
















気づいてた?今のアスランはナルニアで会うアスランと一緒なのに話し方がほんのちょっとだけ違う。
もっとフランクな感じで解放的っていうか…

アスランは空を見上げると思い切り溜め息を吐いた。
そう、びっくりするぐらいに大きい溜め息。
















「小さい私に会った時にここが過去だとわかった。だから私はあるまじきことを考えてしまったのだ。

しかし君が私の考えを正しい道に戻した」

「…」

「私の考えたことはわかったかね?」

「う…/////////」
















真っ赤になる。なっちゃうよ、なっちゃう!
アスランて思ってたよりなんていうか…こう、そう…えと…
















「はっはっはっ!私はオスライオンなのだよ」

「私、帰る!」
















なんか頭がパニくってる。隣にいるライオンはアスランなのにアスランじゃないみたい。
いつもは暖かく包んでくれる雰囲気をかもしだしてるのに今日は違う。荒々しい若い感じ。
過去に来たもんだから頭まで若くなっちゃったのかな。
















「言ってくれるな、。しかしそうかもしれない。

…さあ、ナルニアの元いたところに帰りなさい。また来るべき時に会おう」
















彼の言葉に目を瞑り、数秒経って開けるとそこはベットの中。
白いシーツとお布団に包まれてぬくぬくしている。

あれはきっと夢だった。私はそう思うことにした。
だって私はナルニアの…アスランの守人なんだから。














『君との別の未来を』














********

蒼様、サイト4周年リクエストありがとうございました!!!
(名前出してよかったですか!?)
アスランとのほのぼの雰囲気を出したつもりなんですが、
日常には出来ませんでした。
(ナルニア自体アスランが出てくる場面が少ないので日常が思い浮かばなかったです)
今までない場面にしたのでちょっとはっちゃけてしまいました(汗
ラヴ入ってますし。
気に入って頂ければ嬉しい限りですが、駄目だろって時はご一報下さい^^UP取りやめます(笑

リク頂いたことも嬉しかったのですが、この企画が唯一記載されている
INFOのブログを見ていただいていることも嬉しかったです。
これからのやる気にズンズン繋がりました!!!

今後も本編を宜しくお願いしますね!
ありがとうございました!


2010/02/02 ノビルサフラン ほしのき