「夏だね。」

「うん、夏だよ」

「マジ暑い!」

















あたし達は去年来た海の前で立ち止まって呟いた、というか叫んだというか…。

暑い夏の始まり。
今年もたくさん遊ぼうって約束してあたし達は海に来たんだ。
夏休みの初っ端から堂々とさ。
本当に楽しい。


でも二人はあたしに気遣って別の海に行こうかって話もしてくれた。
そりゃ色々思い出しちゃうかもしれないけど、思い出は思い出。
今年の海は三人で満喫するんだから、あたしがまごまごするなんておかしな話。


























「いっくぞー!」






















男らしく吠えるランちゃんの周りには、いつしかわけわかんないくらいたくさんの男共。
ランちゃんはモテるからさ、あたし達が追っ払わないといけないわけ。
本当、勘弁して欲しいじゃない?

























「いったよーちゃん!」

「へ?」
























ビーチボールが鼻の頭に直撃した。
柔らかいから痛くないけど、かなり恥ずかしい。



























「何してんだ

「だってチサちゃんが…」

「私は何もしてないよー」




























チサちゃんのせいにしようとしたけど、うまくいかなかった。
あーあ、あたしってホントついてない。
























夏なんて嫌。


























まあ、季節は移り変わり夏は毎年来るもので、あたしは逃げも隠れも出来ないわけなのよね。
毎年来る夏を見送らなければいけない事実を、まだ受け止められない。
あんなことがあったんだから、何もない夏をただ何気なく見送るなんてあたしには出来やしないんだ。


去年の夏のこと、両親が旅行で家にいない時に彼は降って湧いたように現れた。
10日間だけの共同生活だったけど、色々あって楽しくて…良い思い出ばかり。
それはずっと褪せることなく心に残っていた。









彼の名前はワルター・デルクェス。
テイルズオブレジェンディアのキャラクターだ。
金髪で白い肌、深い蒼の瞳。男の人としてはカッコイイ部類の人間。



で、あたしと釣り合うなんてことはない−…。



色々振り回して振り回されたけど、最後は一緒に花火を見てまた会いたいって気持ちは伝え合った。



でも……



彼は、ゲームの中では死んでしまう。
そんな彼にまた会えるなんてこと、あたしは信じてるけど…


…ううん、信じてる。

絶対。

また会える。







あたしがこう考えて過ごして一年が経った。

また彼の来た夏。

また会えるかもしれない夏。

嫌なようで…来て欲しかった夏。

期待してしまった夏。


















そんな夏も昨日で終わった。

















いつもと同じようにチサちゃんとランちゃんと海に行って帰って来て、長い夏休みを過ごして…終わる。

あたしは部屋に篭ってベッドに現れた彼の姿を思い出した。






















「ワルター、元気にしてるかな。」



















おもむろにプレステを引っ張り出してレジェンディアをセット。
テレビをつけるとワルターの「ナムコ」の声が響いた。


今日はツイてる。

いつもワルターが死んでしまう前までしかプレイ出来ない。
もう何回プレイしただろうか。

彼に会うためだけに。























「ああ、どうしてこう毎日暑いんだろ。もう九月になるってのに」






















無駄に独り言を言ってみたりしても、この心の隙間は埋められない。


ワルターに会わないと、埋められないよ。


急に気分が乗らなくなって電源をプチっと切ると、ベッドに横になってぎゅっと目をつむった。
























「会いたい。会いたくてたまらない。

一目だけでもいいから、生きてるワルターに会いたい…」





















涙が出て来た。
あたしはいつからこんなメソメソ人間になったんだ!
なんて思いながら、やっぱり涙は止まらなかった。























「花火大会も終わっちゃったし、昨日でちょうど一年経ったんだ。

長いよ、長すぎる。」






















また会えるって、いつ会えるの?本当に会えるの?

教えて、ワルター…























目を開けたらベッドの横、ちょうどテレビの方から強い光が入った。
びっくりしてそちらを向くと、何故かプレステが光り出している。





















「え、何!?壊れた?」


















ベッドから跳び起きて光るそれを触る。
熱くもないし光ってる以外不思議なとこはない。
あたしは訝しげに電源を入れた。

プレステは難無く立ち上がり、「ナムコ」の部分まできた。



















「ナムコ」


















あ、珍しい。またワルターだ。
あたしはその声に頭の中でエコーをかけて何度もこだまさせた。

ワルターの声をこだまさせながら、コンティニューを押すと、いつのまにやら知らないセーブデータがあった。




















「これ、一体何?」


















ドキドキしながらそのデータを選択する。
だって知らないセーブデータがあったら、恐る恐る好奇心満載で見ちゃうに決まってるでしょ?





















「あれ…?」




















しばらく画面は真っ暗で、何も起こらない。
やっぱり壊れたのかと思って画面に手を伸ばすと、

突然…























「きゃっ…」





















ピカーっと光り出したかと思うとその輝きがあたしを包みこんだ。





















「え、え、え!?

ちょっと、何なの!?」



















あたしの叫びをよそにその光は体を持ち上げ、そのまま画面に激突…

じゃなくて取り込まれちゃった!!!

























「何これー!

助けてー誰か!

…助けて!ワルター!!!」























画面は輝いていたけれど、取り込まれてみると世界は真っ暗だった。

どうしようもなくそのまま、あたしは奈落の底へ落ちていった。























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お久しぶりなひと夏の思い出。一年ぶりになります☆
夏になると書きたくなる元気な女の子。
今回は用事があって夏に書けませんでしたが、秋でもいっか♪なんて気持ちで頑張って書きます(笑)

2007/08/29