「やっぱりそうだったんですね」

「何だよ、ジェイ。やっぱりって…」















得意げな顔のジェイに、何故か機嫌の悪そうなセネルが聞いた。















「だって僕達、水の民の里でワルターさんの名前を一言も言ってないんですよ。なのにさんはワルターさんの名前を言った。それは知り合いだということです」














ばれちゃってたか。
あまりにもワルターのことばっか考え過ぎて、あたし言っちゃったみたいなんだよねー、彼の名前。

















「あたし言ったよ〜?」

「ノーマのはあだ名だろう?」

「あ、そっかぁ」















ノーマは馬鹿笑いすると、クロエの背中をばしばし叩いた。

あたしはワルターに送ってもらったあと、皆を集めに…と思ってウィルの家に行った。
するともう皆集まっていて、ジェイが何か話そうとしてるとこだったんだ。
















「ジェイ、もしかしてこの話を皆にするために?」

「そうですよ。

知り合いかどうかちゃんと確かめる前に、さんがワルターさんに連れてかれたのには焦りました」

「見てたんだ、さすが」

















ふう、と溜め息をつくジェイを笑うと、ノーマと目があった。
















「まさかちゃんの想い人がワルちんだったとは、びっくりだねぇ〜クー?」

「ああ、…あ、いや!

…すまない、

「別にいいよ、クロエ」















慌てるクロエに声をかけると、あたしは再びジェイを見た。
彼は腕を組んであたしの事を見ている。

















「ワルターが丸くなったのは、の御蔭だったのだな」

「ワルターが丸くなった…?」
















今まで見守っていたウィルが発した言葉に疑問を覚える。

















「ああ、現れて気付いた時「すまない」と言ったのだ」

「現れて気付いた?」














ウィルの言ってることがいまいちわからない。
あたしはそのまま彼の言葉を繰り返すように聞いてしまう。
















「先ずはそこから話しますか」














ジェイがそう言ってくれたので、あたしはソファに座った。

















「ワルターさんは僕達に倒された後、姿を消しました。きっと、さんの世界に行った時ですね」

「そう。彼は傷だらけで倒れてたもん」

「その後、色々あった後…」

「ジェイ」
















話を抜かそうとするジェイを呼び止める。
彼はきっとその色々をあたしが知らないと思って省いてくれてるんだ。

















「あたし、わかるからいいよ」

「え…?」

「黒い霧とか、グリューネとか色々。知ってる世界から来たんだ」














そう言うと、ジェイ以外の皆が不思議そうにあたしを見た。
まだよく理解出来てないみたい。

















「そうですか、では…」















ジェイは詳しく話してくれた。


グリューネがいなくなったその後、ワルターは彼らの目の前に落っこちてきたらしい。
落ちて来た彼の意識はなく、少しの擦り傷をウィルが治したみたい。その時、ワルターがうっすら目を開けて「すまない」と言ったんだって。


















「そう…なんだ。

じゃあ無事に戻って来たんだね」















目を潤めると、あたしは涙が落ちないように頑張った。
















「ええ。」

「よかった、ずっと心配してたんだ…」
















一年間ずっと祈ってた。ワルターが生きてますようにって。

あたしの想い、本当に報われたんだなあって思う。
涙ごしに皆を見ると、温かく微笑んでくれていた。
















さんて本当にワルターが好きなんですね」

「えっ…その」
















シャーリィの言葉に照れてしまう。
だって、彼女の言う通りなんだもん。
















「私、協力します!何でも言って下さい!」

「ほんと!?」















シャーリィがそう言ってくれると心強い。
彼女はワルターにとって、メルネス様だからね。


















「ありがとう、シャーリィ!」




































              *








































海に行くとやっぱりワルターはいなくて、来ないんだと思った。



一緒にいるべきではない



その言葉があたしの心を縛る。
こんなに溢れ出すワルターへの気持ちを押さえ込むなんて、あたしには出来ないよ。





















「来てませんね」

「うん…」

「大丈夫ですよ、きっと。ワルターさんは来ます」

「ありがと、シャーリィ」

















ワルターを信じられるシャーリィが少し妬ましかった。
あたしももっと一緒にいられたら、純粋に信じられるかもしれない。


あれ

何だかあたしがここに来た時のシャーリィと同じ気分なのかも。




















「ねぇ、シャーリィ」

「はい、何ですか?」

「最初、あたしがセネルといた時妬ましかった?」


















シャーリィはびっくりすると、目をぱちくりさせる。
そして恥ずかしそうに下を向くと、「はい」と言った。


















「あたしも今妬んだよ」


















告白すると、シャーリィは再び目をぱちくりさせて笑ってくれる。


















「似てますね、私達」

「うん、そうかも」
















あたし達がくすくす笑うと、皆から変な目で見られた。
























よ…
















その時、頭の中に滄我の声が響き渡る。
あたしとシャーリィは同時に海を見た。
















「聞こえますね、滄我の声」















それに頷くと耳を澄ます。波が静かに、緩やかに
音色を奏でている中で、低い壮厳な声が聞こえた。
















「何?滄我」















ゆっくりと答える。
焦っちゃいけない。例え存在を疎ましく思われていたとしても。

















……よ、我が心はそなたに賭けている。

















「賭けている?何で?ワルターを元に戻すためにあたしを呼んだんじゃないの?」
















それは違う。
我は、かの青年の想いをに伝えたかった。
そして、の想いも。















「……どういうこと?」















あたしは狼狽してシャーリィに目を向けた。
そして周囲にいる仲間達をも見る。



















「どうしたんですか?」

「滄我はなんと言っとるんじゃ?」


















皆に滄我の声が聞こえないことに気付くと、あたしはシャーリィに通訳を頼んだ。



















「いいんですか?」

「うん。

あたしを信じて仲良くして親身になってくれた皆には、知る権利があるよ。」

「わかりました。」


















かの青年はこの地に戻ってくると同時に、そなたの世界と時間の流れが違う事に気付いた。そして、悩んだのだ。

自分がどんどん歳を取っていくにも関わらず、そなたはその数分の一の歳しか取らない。また会えたとしてもきっと、自分に気付かないくらい歳を取っても知れない、と。














「え……」













あたしはとんでもない思い違いをしていることに気付いた。
滄我はあたしを疎んじてたわけじゃない。あたしをワルターから遠ざけるために故意的に呼んだんじゃないんだ。















ワルターだって、あたしのこと……。














かの青年は、と共に生きられぬという考えに囚われている。
が自らの元にいなければ、今の気持ちをそのまま、生きていける。

そなたには、それを取り除いて欲しかったのだ。

、そなたも思っているのだろう。
かの青年がもっと、皆に愛されるべきだと。













「うん…」











かの青年は、必要とされることは知っている。
しかし、愛されるということを知らないのだ。

だから…















「やめろ!!!」














遮られる滄我の言葉。
それを遮ったのは……











「ワルターさん…」










ワルターだった。
滄我の声を皆に伝えていたシャーリィが、彼の名を呼ぶ。















「ワルター、来てくれたの…」















あたしはとんとんと砂浜を跳びながら彼の元へ辿りつく。
そして彼の手を取ると両手で覆った。















、何故こいつらがいる?」














ワルターは怒っているようだった。でも手を離そうとはしない。














「みんなにも、知って欲しかったから」












あたしは彼の手を離すと、その体をぎゅーっと抱きしめた。














!!」













彼は顔を真っ赤にしてあたしの体を引き剥がしにかかった。
でもあたしは、力いっぱいに抱きしめているから離れない。

















「ワルター、会いたかったよ」

「!!」

「あたしね、ワルターのこと好きなんだ」

「!!!」















やっと言えたと思った。
あの花火の時に叫んでから一年間、あたしの想いは溜まりに溜まって来た。
ワルターは近くにいないし、生きているうちに会うこともないんじゃないかとも思った。



半ば諦めかけながら想ってたんだ。

ワルターのことが好きだって。

だから会いたくて、会いたくて…やっと会えた。



最初はあたしのこと覚えてないと思って悲しかったけど、生きててくれたことが嬉しかった。
その後、あたしのこと覚えててくれたって知った時、嬉しかった。

時間の流れが違うのは悲しいけど、ワルターが生きてあたしの前にいるってことだけで、あたしは笑ってられる。

だから、


















「あたしは、ワルターが好き」

「……」

「ね?」

「……生きる時間が違っても…か?」















彼は恐る恐る言った。
滄我の言葉で彼が何を恐れているか知ったあたしは、もう無敵だ。
















「当ったり前でしょ!」

「……

…しかし、老いは早い。

が十年でも、俺は三十年だ。

別れはすぐに来る」

「ばっかだなぁ、ワルター」














あたしが笑うと、ワルターはちょっとむっとした。

ワルターって馬鹿にされんの嫌いだもんね。
















「時間なんてさして問題じゃないの!!

あの十日間だって、実際は十日だったのに短かったり長かったり色々感じなかった?

あたしは感じたよ?

それは、ワルターといたからだと思うんだ。

楽しかったでしょ?」














彼はコクリと頷く。
あたしはにっこり笑うと、ワルターのおでこにでこピンを食らわした。
















「一緒にいて、その時をどんな風に過ごすかで決まるんだよ。

ワルターとだったらあたし、時間なんて忘れちゃうよ」

……」















あたしは最後に最大の笑顔を向けて言い放つ。


















「こんなあたしに愛されてんだ!

時間なんて恐れんじゃないよ!!

あんたは水の民最強の戦士ワルター・デルクェスだろっ!!」
















ニカーッと笑うあたしを見て、ワルターはふと微笑んだ。
その顔は、何かに開放されたようで清々しかった。




ワルターが恐れてたのは時間なんかじゃなかった。

彼が恐れてたのは……



















「その顔が気に入っている」

「顔?」

「ああ。

好きだ、


















ワルターはあたしの耳元で小さく呟いた。
途端に顔が熱くなる。

















「あたしがいれば、百人力でしょ?」

「ああ、そうだな」

















彼が恐れていたのは愛がなくなること。















あのままだったら、あたしが失くすかも知れない愛を持ったまま世界に帰って彼をずっと想っていると感じられたかもしれない。
目の前でその愛を失くされることが恐いから、ワルターはあたしから離れたがったんだ。





















































「……ということで、あたしは帰るまでワルターのとこでお世話になります!」

「何故こいつらに報告する?」

「だって、セネルにはお世話になったし」

「……フン」
















拗ねたワルターをよそに、あたしは皆を集めてお礼を言った。
みんなにはお世話になったもんね。
















「残念ですねセネルさん、好きになってたのに」

「何だと!?」

「ジェイ、言うなよ!!!」














ジェイの言葉にワルターが怒りを露にしてセネルを睨む。
セネルは慌てふためくともう遅いのにジェイの口を塞いだ。















「え、そうなの?ごめんね、セネル」

〜」

「またご飯作りに行ってあげるよ」

「だめだ」

「お前には関係ないだろ。ワルター」

「俺のだ」

「なんだよ!!さり気なくのろけやがって!!!」
















こうやって見てみると、本当はワルターも皆と仲良くなれそうな気がした。
あたしは何だか嬉しくなると、ワルターの手をぎゅっと握る。















「いこっか、ワルター」

「…そうだな」
















ワルターはデルクェスを出すと、あたしを抱き上げた。
















「みんなありがとう!!みんなのお蔭だよ!!

クロエ、ノーマ、また相談乗ってね!シャーリィ、今度恋の話しようよ!!」

ちゃん!また会おうね〜!」

「いつでも相談に乗るぞ!」

「色んな話しましょうね!!」
















彼らはあたし達が遠くなるまで手を振ってくれた。
たくさんの友達が出来て、本当に嬉しい。



ありがとう、みんな。
本当にありがとう!!!





























は、人に好かれるな」

「ワルターもだよ」

「俺は……」

「まずあたしね…それと…」

「……」

「ワル……!!」


















彼の顔が近づいてきたかと思うと、温かな柔らかいものが唇に触れた。
それは長い時間に感じたけれども、本当は短かったみたい。


















「えっと…」

「行くぞ」


















ワルターはそう言う小さく見えてきた水の民の里へと降り始めた。




えっと、今のって?














「ワルター……?」

「なんだ?」

「今のって?」

「……」














ワルターは何も答えてくれなかった。
けど、なんだか心が弾んで、満たされて、
ワルターを好きで良かった。
想って来て良かったと感じた。























「帰るのは、まだまだ先かなぁ……」

「何か言ったか?」

「ずっと一緒にいようねって言った!」

「嘘をつくな」


















ワルターもあたしもわかってる。
また離れ離れの生活が来る事を。

でも、もう大丈夫。
お互いの気持ちがわかったから。



ワルターが好き



あたしの気持ちはいつまでも変わらないよ。
歳を取っても、ずっと。






















「楽しい時間を過ごそうね」

「ああ」




















限りある時間、限りある中で色々感じて過ごそう。
もっともっと、お互いを知ろう。



























ずっと想って来た一年間。
長かったけど、報われた気がする。

日本はもう秋になって紅葉が始まってることだろう。
去年の今頃は秋の空に願ってた。


ワルターが生きていますように。

そして、

ワルターに会えますように、と。


また日本帰ることがあってもあたしは願う。




























ワルターに会えますように



























『秋空に願って』





















END




*****************



「あたしの愛の次は、友達愛が来るよ!!

愛され上手になってね、ワルター!!」



終了☆
今回は「ひと夏」とは打って変わって、ヒロイン、レジェンディアに行く!?話でした^^
そして前とは違ってヒロイン視点の段階を踏んでワルターと♪なお話でちょっと物足りなかったかもしれません(笑)
次は何するんだろう、どうするんだろう?なお話から、どういうこと?次はどうなっちゃうの?な話にしたかっただけ^^;
で、結局これか・・・みたいな感じに。
どうもごめんなさい↓

とりあえずラブになったお二人。
これから18禁の世界に…なりません(笑)
数日過ごしたヒロインはまた日本に戻るんじゃないでしょうか?
そして再び彼に会うときはもう・・・・・・!?
なんて自分で妄想^^

時間差、年齢差のお話を別件で書いたばっかなのでそれに順ずるお話になってしまったのがちょっと後悔。
もっともっと膨らませたかったのに〜〜!!その書いた話がまとわりついて離れんかった!!!

たぶんHAPPYで終わったので続きはないと思ってます。
彼らに何か起こらなければ…ですが^^

ここまで読んでくださった皆様、どうもお疲れ様です。
そして有難う御座いました!!!

こんなバカ話を書くほしのきですが、末永くお付き合い下さいます様、お願いいたします!!


2007/09/16