「うわぁ〜〜〜っ!」
いきなり明るい場所に出たことにびっくりして、あたしは大声を上げて何かに激突した。
ぐにゃ
というのが激突した音で、激突という言葉相応の痛みはなく、ぐにゃの柔らかみの感触だけ残った。
一体何にぶつかったのか、恐る恐る目を開けてみる。
「?」
ふさふさの毛。
「貝がら?」
貝殻がついてる。
ふさふさ、ぐにゃぐにゃ、何これ?
「い…痛いキュ…」
「喋った!?」
あたしはそのふさふさから飛びのくと、じっとそれを見据えた。
「喋ったなんて酷いキュ。ピッポを下敷きにしてよく言うキュ」
「ピッポ…?」
今ピッポとか言ったよね?
それにあの喋り方、どう考えても、モフモフ族のピッポじゃない!?
ってことは、ここはレジェンディアの世界!?
「なんで?どうして?」
「なんでどうしてじゃないキュ。ピッポは痛かったキュ」
彼は拗ねたように言った。
とりあえず謝った方がいいみたい。
「ごめんね、ピッポ」
「…しょうがないキュ、許してあげるキュ」
彼はそう言うと立ち上がって服を叩いた。
そしてとことことあたしの前に来ると、手を出す。
「怪我してないキュ?」
「う、うん」
その手を握ると、ふさっとした毛が手に当たって気持ち良いい。
そして握り締めると、柔らかく温かかった。
「ありがとう、ピッポ」
そのまま立ち上がると、頭を深々と下げて御礼をする。
「別に気にしなくていいキュ。でもピッポの上に落ちて来たからよかったキュ。ちょっとでもズレていたらマズかったキュ。」
ピッポに言われて気付いたけど、ここは岩だらけのごつごつした山地みたい。
彼の上じゃなかったらあたし、死んでたかも。
「ホントだ〜〜!!命の恩人ピッポ様!」
「苦しゅうない、ちこう寄れキュ」
「ぷっ…」
「キュキュキュ〜♪」
ピッポはノリの良い楽しい道連れだった。
あたしは行く当てもないし、この世界のこともゲームでプレイした以外はわからないので彼に着いて行くことにした。
もしかしたら…ワルターに会えるかもしれないと思って。
「なんていい名前キュ。空と一緒キュ。良い詩が出来そうキュ」
「うん、いいでしょ?
でも、ピッポっていう名前もすごく可愛い!」
あたしがそう言うと、ピッポは嬉しそうに跳びはねていた。
ピッポに着いて行くのはいいけど、あたしこれからどうすればいいんだろ。
ジェイのとこに行くのかな…。
…どうしよう、こんな恰好だし、違う世界から来たなんて言っても信じてもらえないだろうし。
だいたいここの時間軸ってどのくらいなのかな。
ワルターのあの事があってから、どのくらい経ってるんだろ…。
ワルターは生きてるのかな。
あーもー、恐くて聞けない!!
確実に一歩一歩を踏み出しているのに、あたしの頭の中はこれからどうするかとワルターの生死のことでいっぱいだった。
なので躓いたり転んだりもしたけど、その度にピッポが助けてくれて何とか大きな怪我はしなくてすんだ。
「は危ない子キュ」
「えへへ〜ごめん」
そろそろ機嫌が悪くなってもいいくらいなのに、ピッポは終始心配をしている。
申し訳ないくらいにね。
……とにかく誰に会っても知らない人の振りに決めた。
どうせ初対面なんだし。
「セネルさ〜ん!」
ピッポが急に立ち止まって、小さい手をふりふり「セネル」の名を呼んだ。
って、セネル!?
初めに会うのはジェイの予定だったのに。
別に予定も何もないんだけどさ、初めがセネルなんて思ってもみなかったから驚いちゃったんだよね。
「!!」
セネルは目を見開くと、あたし達を指差した。
「ん、指差してるけど」
「おかしいキュ?」
セネルの顔があまりにも必死なので、あたし達はそろりと後ろを向いた。
そこには、
「エッグベア!?」
がいた。
あたし達を食べようと、涎を滴らせている。
「ちょっ…ピッポ!」
「に、逃げるキュ!」
ピッポはあたしの手を掴んでセネルの方に走り出した。
けど、足の長さからいうとピッポの方が足手まといに。
すごく申し訳ないと思いつつ命には何事も勝てないと思って火事場の馬鹿力並にピッポを抱き上げると必死に走る。
「連牙飛燕脚!!」
あたし達がセネルの横を走り抜けた途端、彼は技を出してエッグベアに向かっていった。
そして一撃。
かなり強く蹴り飛ばしたようで、エッグベアは動かなくなった。
「…ふう、焦った」
セネルは汗を拭きながら寄ってくると、ピッポを見てあたしを見た。
「無事でよかったけど、誰だ?」
不思議そうにピッポに聞く。
彼の疑問はきっと、あたしの服装が関係してるんじゃないかと思う。
でも、それよりも言ってやりたいことがあった。
「指差しただけじゃわかんないじゃない!危ないって叫ぶとかしなさいよ!」
怒鳴ると、セネルは困り顔で怯んだ。
「気の強い女だな…」
怒ったら何だか悲しくなってきちゃって、今度は涙が出て来た。
「すごく…怖かったんだからぁっ…」
あたしが泣き出すと、セネルは本格的に困った顔をして背中を撫でてくれる。
「泣くなよ…俺が悪かったって…」
「そうだけど、セネルは命の恩人だから許す〜」
「あれ、俺の名前?」
「ピッポが呼んでた〜」
マズイと思いつつ、ピッポが呼んでたことを思い出して誤魔化す。
「あ、そうか」
ふう、セネルが単純でよかった。
「泣き止んだとこで悪いけど、名前を教えてくれないか?呼びにくい」
「あ、ごめん。あたしはっていうの。・」
ワルターに名前を覚えさせるのが大変だったのを思い出す。
セネルが、セネル・クーリッジなんだから、あたしは・になるよね。
「か。俺はセネル・クーリッジ、ウェルテスで魔物退治をやってる。宜しくな!」
彼はニカッと笑うと、握手を求めてきた。
喜んでうけると、彼は再びニカッと笑った。
「ここは危ないから街に戻ろう」
「うん」
あたし達はダクトに向かって歩き出した。
その途中、セネルがわかってくれるかわからないけど、今までのいきさつを話してみた。
セネルはうんうん唸ってたけど、一応理解してくれたみたい。
「行く当てもない、お金もない。ないない尽くしだな、は」
「ハッキリ言わないでよ。あたしだって何が起こったのかわかんないんだから」
膨れてみせると、セネルは笑った。
そしてあたしの肩をぽんぽんと叩くと、
「とりあえず俺の家に置いてやるよ」
と言ってくれた。
年頃の男女が一つ屋根の下で過ごすなんて…って思ったけど、ワルターの時もそうだったなんて思い直して、
「うん。お願いします!」
と、この申し出を謹んでお受けする事にした。
心細いけど、大丈夫だよね。
…大丈夫。
きっと、ワルターもあの世界ではこんな気持ちだったのかもしれない。
そう思うと何だかホッとした。
*************
第二話☆
ピッポとセネルに出会いました〜。セネルが初対面なのに良い人になってる^^
次はウェルテスです。
2007/08/31