あたしとセネルは途中でピッポと別れを告げた。
助けてもらったことをたくさん御礼して、また会うことを約束して。
「ピッポは帰るのかな」
「そうなんじゃないか。あそこには兄弟もジェイもいるしな」
「あそこって?」
「あいつらはモフモフ族って言うんだけど、モフモフ族の村に住んでるんだ」
「へえぇ。名前そのままだね」
「ああ」
知らない振りも楽じゃない。
何でもかんでも聞かなきゃいけないし。
「今からどこ行くの?」
「俺ん家。灯台の街ウェルテスってとこにある」
「そうなんだ。楽しみ!」
「そうか?」
「うん!」
「//////」
セネルは照れると顔を赤くしたので、あたしはそのほっぺたをつつくと、くすくすと笑ってあげた。
「わああ!!凄い!」
ウェルテスに着くと、あたしは目が見開かんばかりになった。
だって、日本にはこんな街ない。ハッキリ言ってメルヘンの世界。
ゲームしてると上からデジタル画像を見下ろす感じになるでしょ?
それが実際目の前にあるんだから!
「可愛い!」
あたしがそう叫ぶと、セネルが怪訝そうに「可愛いか?」と呟いていた。
きっと、この世界はこういう家の造りが主なんだろうから可愛いとかないのかも。
「早くセネルの家に行こう!」
「あ、ああ…」
彼をせっついて歩き出す。
歩きながらセネルが遺跡船について語ってくれたけど、どれも知ってる話ばかりだったから上の空で聞いちゃった。
それでも彼は真剣に話してくれたけどね。
「ここが俺の家だ」
セネルは両手を広げると、一軒家を見せてくれた。
木の造りが味わい深く、わくわくしちゃう。
「うわー!良い家!セネルには勿体ないくらいじゃん」
「俺に勿体ないって、どういう事だよ」
「言葉通りだって」
「こいつ!」
セネルとじゃれ合うのが楽しい。
彼は軽いげんこつをあたしの頭に食らわすと、ニヒヒと笑いながら家の中に案内してくれた。
「はベッド使っていいぞ。俺は下で寝るからさ」
「何言ってんの!あたしは押しかけなんだから下でいいよ。セネルは自分の家なんだからベッドで寝なきゃだめ!」
「でもそれじゃマズイだろ」
セネルは困った様に言った。
一体何がマズイのかわかんない。
「何がマズイの?」
「…別に」
「……わけわかんないっ」
「いいんだよ」
セネルはそのまま台所に向かうと、パンとハムを出してお皿に盛った。
それを無言であたしに渡すと、自分はそのままドアへと向かう。
「セネル、どこ行くの?」
「魔物退治の報告。はそれ食べて待ってろよ。
あ、その服だと目立つからなんか服も用意してやる」
「え?そんなことしてくれなくてもいいよ!あたしお金ないし、何にも御礼出来ないもん!」
「御礼か…そんなの体で返せるだろ」
セネルは自分の発言になんの疑問も持っていなかった。
最初はね。
でもあたしの顔が茹でダコみたいになると彼も理解したみたいで、
「そんな意味じゃない!!掃除とか料理とか色々あるだろ!!」
って怒って出て行っちゃった。
あーあ、あれってあたしが怒らせたことになるの?
この家に一人にされても、プレステもないし本もないし何にもしようがない。
うろうろしてもこのシンプルな部屋には何にもないんだよね。
しょうがなくパンとハムの前に座ると、もぐもぐと食べる。
気付かないうちにお腹が空いてたみたいで、あっという間に平らげてしまった。
「…これからどおしよ…」
考えてもしょうがない不安が押し寄せてくる。
だって、あたしには何の力もない。
あてもない。
お金もない。
セネルが言ったけど、ないない尽くし。
はないない尽くしな人間です。
「はぁっ…」
ため息をついて後ろにばたんと倒れる。
「天井たか〜い」
無駄な呟きなんてなんの慰めにもならない。
天井が高くたって、セネルが服をくれたって、あたしはどうすればいいのかわかんないよ。
せめてワルターが居てくれたら、話を聞いてくれたかもしれないのに。
あたしはまたため息をつくと、そのまま眠ってしまった。
「…が…とは…」
浅い眠りの中で誰かの声が聞こえた。
この声はセネルじゃないし、一体誰?眠りは浅いのに中々目が覚めない。
あたしは唸りながら、なんとか起きようともがいた。
「セネルさんが女の人を連れ込むなんて思ってもみなかった。」
今度はちゃんと声が聞こえた。
でも、一体誰だろう。
「どうするべきかな。
このまま黙って帰るのもいいけど、こんな見たことない服装の女性…存在自体が気になるし…」
…これってまさか、ジェイじゃない?
もしかして勝手にセネルの家に入りこんだわけ?
頭の中がスッキリすると、体も起きられる準備が出来たようだった。
あたしはそのままむくりと起き上がると、目の前に座っているジェイを見つめる。
彼は腕を組んで考え込んでいた。
「あたしが気になるの?」
「はい、当たり前じゃないですか。こんな見たことない服装…
…!!」
彼は返事をしたにも関わらず驚くと、ポケットに手を忍ばせた。
「あたし、何にもしないよ」
「……」
ジェイは静かにあたしを見据えると、肩の力を抜いた。
「すみません、癖なもので」
「別にいいよ」
あたしはジェイがこんな人だってわかってたから冷静になれるけど、普通の人だったら慌てちゃうよね。
「あなたは冷静な人ですね」
「そうかな?
あたし、っていうの。・。あなたは?」
「僕はジェイです」
「あなたがジェイなんだ。さっきね、ピッポに助けてもらったんだ。」
「ピッポに…?」
ピッポの名前を出したらジェイは全く警戒心を無くしたようだった。
でも、彼の疑問はなくならないみたい。
「あなたはどこの人ですか?見たことのない服装ですよ」
「あたしは…」
ジェイにはしっかり理解してもらえると信じて、ここに来たこと、ピッポに助けてもらったこと、セネルに出会ったことを話した。
「そういうことだったんですか。僕はてっきりセネルさんがシャーリィさんに内緒で連れ込んだ女性かと…」
「シャーリィさん?」
「ああ、シャーリィさんはセネルさんの妹ですよ」
ジェイはそう言うと、あたしの頭から足先までじろりと見渡した。
「恥ずかしいじゃん」
「変な意味はないですよ。
しかし、セネルさんが警戒しなかったことといい、僕も気が緩んで反応出来なかったことといい、さんには不思議な力があるのかもしれませんね」
「じゃあ、信じてくれるの!?」
ジェイは頷くとあたしをじっと見た。
そして微かに笑うと、フイとドアの方を向く。
「帰って来たようですよ」
「え、セネルが?」
「はい」
あたしは立ち上がると、ドアの方へ駆けて行った。
*************
第三話です。
ジェイと出会いました☆って、セネルの家に何をしに来たんだか…(笑)
もしかしてヒロインに会うために来たのかな…なんて。
2007/09/01