「おかえりー!セネル!」
「ただいま、」
あたしが元気良く出迎えると、セネルは穏やかに微笑んだ。
手には紙袋を大事そうに抱えている。
「誰かが向かえてくれる家っていいな」
セネルはしみじみとそう言った。
あたしは苦笑すると、ジェイの方を見る。彼はニヤリと不気味に笑むと、正座でセネルを見上げた。
「おかえりなさい、セネルさん」
「ただいま……って、何でジェイがいるんだよ」
セネルは一気に気分を害したらしく、紙袋を床に放り投げるとジェイを睨んだ。
「そんな恐い顔しないで下さいよ」
「、何でジェイがいるんだ?」
「わかんない。起きたらいたの」
「起きたらいたって、まさか…」
「違いますよ」
「の寝込みを襲おうと…」
「セネル、ジェイはあたしがいること知らないんだよ。襲おうとしたならセネルの寝込みじゃないの?」
「まさか、ジェイ…」
「違うって言ってるじゃないですか!!!」
あたしとセネルのやり取りに、ジェイは憤慨して立ち上がった。そしてあたし達をじろりと睨むと、腕を組む。
「寝込みは違いますよ」
彼は言い直した。
「寝込みは?」
「はい。しかし忍び入ったのは本当です。僕はどんな些細な情報も仕入れないといけませんからね」
「へぇ〜、それで俺の家に?」
「はい」
「…ジェイが空き巣に入ったとウィルに報告だな」
「僕はシャーリィさんに、セネルさんが家に女性を連れ込んだって報告しますよ」
彼らはしばらく見つめ合った後、同時にため息をついた。
何がなんだかわからないうちに、彼らは肩を叩いたりにこにこ笑い出していた。久しぶりだな、とか、久しぶりですね、とか言い合ったあと、セネルがジェイに相変わらずだなとか言っていた。
なんだ、さっきのは旧友に対する挨拶みたいなものだったの?
「、ジェイは俺の仲間なんだ」
「うん、ジェイから聞いたよ。ついでにあたしの事も全部話しておいた」
あたしがこう言うと、セネルはちょっと傷付いた表情をした。あたしはそれを無視すると、セネルに近寄る。
「セネル、服を本当に用意してくれたの?」
「ああ、これだ」
彼はさっき放り投げだ紙袋を拾うと渡してくれた。
それをバリバリいわせながら開けると、中から出て来たのは少しフリフリのついたスカート。袖の長いケープみたいな上着と、中に着る薄い長袖。
「ありがとう!!着替えてくるね!」
あたしはそう言うと、洋服を抱えて二階へ上がった。
「覗かないでよ!」
上から声をかけながら、急いで着替える。
見られることはないだろうけど、やっぱ恥ずかしいもんね。
「じゃーん!どうよ?」
くるりんと回ってみせると、セネルが手をぱちぱちと叩いてくれた。ジェイの方をちらっと見ると彼もしかたなく叩いてくれる。
あたしはお辞儀してその場に座るとにっこり笑った。
「セネルもジェイも、あたしのこと信じてくれてありがと」
「いいよ。なんだかの事は信じなきゃいけないって思ったんだ」
「僕もそうですね。
…誰かの力が働いているというか…、そんな気がします」
「ふーん…」
ワルターが日本から帰る事に関していたあの声なのかな。
もしかして、あたしの事見守ってくれてる…?
「そのでれっとした顔はやめた方がいいですよ。あなたには似合わない」
「え?」
ジェイがそう言ってフイと目を逸らした。それを追いかけようと目線をずらすと、セネルが視界に入ってくる。
「は笑ってるのがいいと思うぞ」
「ありがと、セネル。あたしも、二人とも笑った方がいいと思うよ!」
こう言うと、彼らは苦笑していた。
あたしとセネルとジェイは、ウィルの家に行く事になった。あたしの紹介兼新しいセネルのお仕事をもらいに。
セネルったらね、さっき仕事の話をし忘れちゃったんだって。
「のことは大体話しといたから大丈夫だ」
「お、セネルったら気が利くね!」
「バカ、俺はいつでも気が利くんだよ!」
セネルはあたしを小突くと、先頭きって歩き出した。
しばらく歩くと、商店の並びに入る。
武器屋があって、美味しい匂いを漂わせているパン屋があって…、思わずパン屋さんに入りそうになるあたしの首ねっこは、ジェイにしっかりと掴まれてしまいましたとさ。
「素敵なお庭!」
ウィルの家の花壇はきちんと整備され、色とりどりのお花が咲いていた。
でも手前と奥のお花の種類はちぐはぐで、きっとウィルとハリエットの共同作業だったんだと窺わせる。
「あ、セネル君」
と突然、ドアが開いてハリエットが出て来た。
その後にシャーリィも。
「あ、お兄ちゃん」
彼女はセネルを見てぱっと可愛い笑顔を見せ、次にあたしを見て目を細めた。
まるで「誰?この女の人」って言われてるみたい。
後ろでジェイが苦笑するのを聞きながら、私はシャーリィにぺこりとお辞儀した。シャーリィもハッと気付く様に目を細めるのをやめると、お辞儀を返してくれた。
「、こっちはシャーリィで俺の妹。こっちはハリエットでウィルの娘だ」
「よろしく!シャーリィ、ハリエット」
あたしが元気良く挨拶すると、シャーリィはびっくりしたみたいで「はい!」と返事をした。
「こっちは。今日から俺ん家の居候だ」
ああ〜!
セネルの鈍感!馬鹿!
初っ端からあたしとシャーリィの仲を悪くしてどうすんのよ!
思った通り、シャーリィは『居候』という言葉に反応した。
でも今度は目を細めるとかはなかった。
「どうしちゃったのよセネルくん。居候なんて…」
「ああ、色々事情があってな。には行く宛てがないんだ」
「そうなの?」
ハリエットが首を傾げた。
あたしが頷くと、彼女は「かわいそう」と言ってくれた。
「それじゃしょうがないですね。
さ、行こうハリエット」
シャーリィは強制的に話を止めると、ハリエットの腕を引っ張った。
「え、うん」
ハリエットは理解不能という顔をしながらシャーリィに引っ張られていく。あたし達はそれを見守っていたけれど、最後にセネルが叫んだ。
「どこに行くんだ?」
「水の民の里よ!」
シャーリィは振り向く事もなくずんずん歩いていたので、ハリエットが代わりに答えた。
水の民の里!!!
その言葉を聞いた途端、あたしの中にこの気持ちが駆け巡った。
あたしも行きたい!!
そして思わず口にも
「あたしも…!」
出してしまった。
シャーリィとハリエットが立ち止まってあたしを見た。
彼女達はもう数十歩も先を歩いていたのに立ち止まったので、あたしの声がそれ程大きかったのを痛感する。
セネルもジェイもあたしを見てるし、気まずい。
「ごめん、何でもない。
…いってらっしゃい、シャーリィ、ハリエット」
辛うじてそう言うと、地面を見つめた。
彼女達が何事もなかったように立ち去ると、ジェイが興味なさそうに呟いた。
「あたしも行きたい、ですか」
その意味ありげな視線を無視すると、あたしは一番にウィルの家に入って行った。
*************
ワルター相手なはずなのに、ワルターは出てこないし、セネル相手になってる!!!
あわわわ、でももうすぐ出てくるはず(笑)
2007/09/04