彼が忘れていたとしても、許せない言葉だと思う。
許せなくて、悲しくて、辛い。


あたしは、そんなつもりじゃないのにどうしてあんな事言うの!?


半ば癇癪を起こしかけてやめる。


だって、あたしは知ってるじゃない。
ワルターがああいう人だってこと。


何も考えずに走って来たので、どの方角に来たとか、どのくらい走ったとか一切わからなかった。周りを見回すと全てが森。
そして魔物の咆哮が聞こえる。















「しまった」













と思った時にはもう遅い。きっとあたしのにおいは嗅ぎ付けられてる。
あたしは方向転換すると、来た道らしい方に走り出した。


どうしよう、ここでやられたら帰れないし、死んじゃうわけよね。


ぐるぐると同じとこを走っている感覚に囚われながら、必死に冷静になろうとする。


考えろ、考えなきゃだめ。


でも考える程関係ないことが頭の中に渦巻く。


逃げるように出て来たのに、今更セネル達のとこに戻るの?


そうだ、逃げてきたのに。


シャーリィが嫌がるよ?


うん、わかってる。でも…


本当はみんな、こんな泣き虫はうざったいって思ってるかもよ?


うん…でも…


セネルは言ってくれた!

悲しい時は泣いていいって。はねつける人はいないって。


あたしは、それを信じてる。


















「セネル!!!」
















あたしの口は、いつの間にかセネルの名を紡いでた。
森のざわめきと獣らしい咆哮が飛び交う中、小さくなる心をなんとか保ちながら一心不乱に走る。

何回か小さな魔物とすれ違うことはあったけど、それらは皆あたしに気付く前においていった。
ある茂みに向かうと、小さな光が見えた気がする。

あたしは口を開くと、
















「セネル!」
















再び彼の名を口にした。















!」














茂みを抜けると、そこにはセネル達がいた。
みんな必死にあたしを捜してるみたい。

セネルは腕を広げると、走る事を止められないあたしを抱き留めてくれた。














「大丈夫か、!?」














セネルは必死に、でも優しく問い掛けてくれた。
















「うん、大丈夫」

!」

さん!」

ちゃん」














みんな次々と声をかけてくれる。
あのシャーリィだって














「彼にはちゃんと怒っておきましたから!安心して下さい!」














こうやって言ってくれる。














「ありがとう、シャーリィ」

「いえ…」













あたし、こんなにみんなを心配させて何やってるんだろう。

自分勝手な気持ちで動いて、本当の仲間だったら一緒に戦えないだろう。
それでも、あたしの事心配して捜しに来てくれるみんなに感謝。
まだ会ってから一日も経っていないのに。














「ありがとう、みんな」













御礼を言い頭を下げる。
みんなは赤くなって頭を掻いていた。















その時、黒いものが目を掠めると、目の前にワルターが降り立った。

彼はなんとも無表情で、とても腹が立った。
そして言われた言葉を思い出す。



























あたしは彼の目の前まで歩いていく。
セネルや他の仲間達はあたしの行動に呆気にとられてるみたいで見ているだけ。

あたしはワルターの前で止まると、キッと睨み上げた。



















「セネルとあたしはそんな関係じゃない!

セネルのこと、悪く言わないでくれる?



…あなた最低だわ、ワルター!」


















あたしはそう言い切ると、もう一度睨み上げて後ろを向いた。















「…」
















そしてセネル達の元に戻ろうとしたその時、

















「えっ…」
















いきなり腕を掴まれた。

振り返ると、明らかに狼狽した様なワルターの顔。

















「離して!」
















あたしはそれを振り切ると、セネル達の元に戻った。

















「いきましょ、みんな。今日はあたしが腕によりをかけて特別料理を作ってあげる!」

















強引にみんなを連れて、水の民の里を出た。
もう、彼のかおなんて見たくなかったんだ。
なのに…




















あたしの頭の中には、大人びた気がするワルターの狼狽した顔がいつまでもフラッシュしていた。






















































「美味しかった〜!」


















ある材料を駆使しつつ、これで大丈夫なんだろうかっていう料理を何品か作った。
みんなは文句を言わずに食べると、美味しい美味しいと言ってくれる。
















は料理うまいんじゃのう」

「本当!ハティもこのぐらいになりたいな」

「それは無理なんじゃないですか、才能もありますし」

「ジェイ君、なんですって!?」














ハリエットは今にもジェイに飛び掛かりそう。
ジェイはつーんとすると、黙々と食べ物を口に入れた。


















「あたし片付け始める」

「私も手伝おう」

「ハティもー」

「私も手伝います!」
















みんなが一通り食べ終わったのを見計らって片づけを宣言する。
クロエとハリエット、シャーリィは自ら手伝うと言ってくれた。なのにノーマにはそんな気配全くなし。

















「ノーマは?」

「えーあたしパスー」

「なんでよ?」

「あたしまで手伝ってさ、世の中の女の子がみんな家事大好きなんて思われたら世界が崩壊しちゃうじゃん」

















わけわかんないこじつけを盾に、彼女は動こうとしない。

はあ、しょうがない。


















「わかったわかった。じゃあその考えを一生貫いてよね」

「おうよ!」

















貫く気がするなぁ。恐いくらいに…
まあいいや、片しちゃお。



































「さて、帰るか」





















洗物の後、みんなでうだうだしているとセネルが欠伸をしながら言った。

















「帰るぞ、

「う、うん」
















まだだらだらしている皆におやすみの挨拶をする。

















「ウィルさん、話があるんですが…」

「ジェイ、お前もか…」

















ジェイとウィルにお休みを言おうとしたけれど、二人でこそこそ話に入っちゃって言えずじまいに終わる。


















「ハリエット、ウィルの分もおやすみ」

「うん、。おやすみ!また来てよね」

「もちろん!!」















あたしはセネルの後ろにくっついていくと、彼の家へと向かっていった。






















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ワルター最悪宣言(笑)
女の子って強いなぁ…^^

2007/09/09