「今回は、全くお顔を見せなかったわね。」

「ああ、そうだな…」

「サジェとシフォンに貴女の用件を押し付けて、高みの見物だったというわけなの?」













暗闇の奥深くで、私はあの黒い霧の女性と対峙していた。
その女性は怒りを噛み殺す私をせせら笑うかのように、薄っすらと口元に笑みを浮かべていた。
そんな姿を見ていると、噛み殺していた怒りが頂点に上がってきそうで押さえ込むのも馬鹿馬鹿しくなってしまう。














「良いご身分だこと。」














辛辣な言葉を浴びせ踵を返す。
彼女とは話すことも無い。何故ここで対峙しているのかもわからないくらいだもの。



数歩行くと、いつの間にか目の前には黒い霧の女性が立ちはだかっていた。
彼女は薄気味悪い笑いを一層濃くして、私に近づいてくる。














「な……何なの?」

「……そなたは完全になった。それは、其の時を待つだけということだ…」

「……」

「いや、まだだな。グリューネの覚醒がまだ終わっておらぬ。」

「!!グリューネ……貴女達は、やはり関係があるのね。」














彼女は私のそばを離れると、遠い彼方を見た。
そして感慨深く語る。















「我とグリューネは同質のものだ。力を等しく持ち、世界を等しく持つ。我らが等しくないとすれば……」

「……うっ…」















彼女に睨まれて突然頭痛が襲ってきた。
頭を抱えるとしゃがみ込む。ズキズキと疼き、立ち上がれない。
















「思い出さぬのか?」
















当然のように言われる言葉。私に何を思い出せと?















「世界を見守る者にとって、我等の存在はそんなにも相容れぬ存在であるのか。」















世界を見守る者……この女性とグリューネの存在…因果関係…















「力を使えば、世界をも屈することが出来る存在だというのに、記憶を封じるとは……」














世界を屈する力…封じた記憶……それは…!!


























































「……明光のグリューネ…暗闇のシュヴァルツ……?」
























































「思い出したか。」



























































































ちゃん。」

「……」

ちゃんってば〜!」

「えっ…何、ノーマ?」

「ぼーっとし過ぎ。中身落ちちゃうよ?」















ノーマに指摘されて自分の手を見ると、中身の出掛っているサンドウィッチが目に入る。
慌てて口に運んで噛み付くと、ジューシーなトマトの味が口内に広がった。














「ど〜したの?」

「今日見た夢を思い返していて…ごめんなさい。」

「いーけどさ。あれ、見てよ。」















彼女が指差したのは、水際で楽しそうにお喋りをしているクロエとシャーリィ。
彼女達は女の子座りをして笑い合っている。
















「ね〜、あの二人どうしちゃったわけ?」















最近のあの二人の仲の良さに気付かなかったのはノーマだけなのかしら、と思いながら苦笑した。
シャーリィもクロエも、お互いと仲良くなったと喜んでいたものね。















「あの二人、仲良くなったのよ。」

「えっ!?いつから?」

「えーと…」

「モーゼスさんとギートとのことがあったくらいからですよ。」
















流石ジェイ、良く覚えているわね。私がニコニコすると、彼は気持ち悪いと言う様に目を細めた。
セネルもジェイの言葉に頷いたものだから、ノーマは顔色を青くする。















「そんな前から!?ヤバイっあたしも乗り遅れる!!!」














ノーマはそう言うと、彼女達の方に走っていった。














「ね〜ね〜、何の話?あたしも混ぜて〜!」

「二人だけの秘密なんです。ね、クロエ。」

「うん、そうだな。」

「…リッちゃん、今クロエって言ったよね。言ったよね?絶対に言ってたよね?

あたしも、ノーマって呼んで!」















くすくすと笑う二人に、ノーマは眉を逆さへの字に曲げて必死にお願いしている。
私は微笑ましい場面で向き直ると、お茶を飲んで一息ついた。














「よかったわね、セネル。」

「ん……ああ。何とかしなきゃって思ってたんだけどな…」

「いいのよ。女の子同士の悩みは、女の子同士でなければ解決できないの。」

「そういうものなのか?」

「そういうものなの。」














セネルは不思議そうな顔をしていたが、嬉しそうに笑っていた。













涼しげな風が吹き、私達を暖かな太陽が照らす。こんなに平和なのに、本当は世界中で色々な事が起きている。
何だか私達が平和でいることが悪いと思ってしまうくらい、色々な事が……















、大丈夫か?具合が悪いなら日陰に…」

「ワの字!」













私を心配してくれたワルターの言葉を、モーゼスが遮った。ワルターはイラっとしたみたいで、モーゼスを睨み上げる。















「…なんだ?」

「酒の飲み比べじゃ!」

「……いいだろう。」















モーゼスの誘い…というか挑戦に乗ると、ワルターは私をほっぽって立ち上がった。
まあ、いいけれど。
それよりお酒って…まあ、無礼講だしいいのかしら。














「あっ!俺も俺も〜♪金髪に負けねー!」














ヴァイシスも…。
いずれはクルザンドの王になるのに…。やっぱり止めるべきかしら。

そう悩んでいるうちに、私が止めなくても止めてくれる人が現れた。















「ちょっと!みんな未成年でしょ!お酒禁止!!!」














ハリエットだ。
コップにお酒を注いだ所で止められ、ウィルから睨まれ、三人は溜息を吐いた。
私はしょんぼりしている彼らからコップを取り上げると、グリューネに渡した。















「ありがとう、ちゃん。」














グリューネは唯一お酒に酔わないから。だからこういう時でも大丈夫。
ウィルはすぐに赤くなってしまうのよね。















「はいパパ、今度はこれ食べてね。」













ハリエットはお酒がなくなった事を確認すると、ウィルの元に戻って自分の籠からサンドウィッチを出した。
パンの間には得体の知れないものが挟まれている。















「良く食べれますね。魔物より恐ろしいのに。」

「ジェイ君、何か言った?」

「じ、冗談ですよ…。」














得体の知れないサンドウィッチをぐっちゃもっちゃ言わせながら飲み込むウィルを見て、ジェイは呟いた。
小さな声だったはずなのにハリエットの耳にはちゃんと届いていて、鋭い瞳で彼を睨んでいた。
私もそう思うけれど、彼女にはなかなか言えないわね。















「どう?おいしい?」

「…昨日の晩飯に比べれば、確実にうまいな…」

「でしょ!みんなもの作ったサンドウィッチばっか食べないで、ハティのも食べてよ!」

「俺はが好きだからのがいい。」















ハリエットの切々たる訴えを無視するかのように、ヴァイシスは私の作ったサンドウィッチを掴んで噛み付いた。














「ヴァイシス君たら!!!だから王子って我が儘で嫌なのよ!

モーゼス君、食べるわよね?」

「ワ…ワイか!?」















逃げられそうも無いと判断したのか、モーゼスはそれを一つ掴んで頬張った。
ウィルの時のように、ぐっちゃもっちゃと音がする。














「…へ(セ)の字…」














モーゼスは食べ賭けをセネルに渡した。
セネルはやっぱりハリエットの目が恐いのか、そのサンドウィッチに齧り付く。















「ワイ……何だか気分が…」

「黙って食え…男だろ。」















最後は二人で思い切り飲み込んだようだった。
一体どんな味がしたのかしら。
















「ジェー坊、食わんとなくなるぞ?この喜びを分かち合わんでどうする?」

「っ!!やめてくださいよ!!!」














モーゼスがぼーっとサンドウィッチ見ていたジェイに、それを押し付ける。
驚いた彼はモーゼスの手を払い、離れて背を向けた。
















「無理矢理食べさせようとするなんて…このバカ山賊が!」

「なんじゃと!!!」














「ジェイ、イキイキしてるキュ!」

「皆さんと一緒にいるのは楽しいキュ!」

「ジェイがどんどん明るくなって、ポッポたちも嬉しいキュ!」















言い合いを始めたジェイとモーゼスの雰囲気を理解する?様に、モフモフ族の三兄弟は言葉を続けた。
彼らは嬉しそうにニコニコとジェイに笑いかけると、ジェイはジェイで照れたのか顔を赤く染める。
確かに、ジェイってどんどん明るくなっている気がする。皆と一緒にいて幸せそうに感じている時もあるもの。




私達仲間というものは、その人一人ずつの心の拠り所だものね。














「言われて見れば、昔より愛想もようなったかの。」

「きっと、セネルちゃん達のお蔭ねぇ。」













二人の言葉を聞いたジェイは、何故だか固まってしまったように動かなくなった。
私は心配になって立ち上がろうとするけれど、ヴァイシスに止められてしまう。















、あのさ。」

「?何、ヴァイシス。」

「ジェイのことなんだけど…」

「ジェイのこと?」

「気になる事が……」
















「みんなちゅ〜も〜くっ!!!」














神妙な面持ちのヴァイシスの言葉もノーマの元気な声には負けてしまい、ヴァイシスは溜息を吐くと泉の方で仁王立ちする彼女を見た。
もう何個目かのサンドウィッチを食べ終わったウィルも、もぐもぐしているグリューネも、背を向けていたジェイも彼女を見る。
ノーマはみんなの視線が自分に集まったことを確認すると、持っていた小さな葉っぱをヒラヒラさせた。














「…そうか、今日は星祭か。」

「星祭キュ?」

「説明はウィルっちに任せた〜!」













自分に注目させた割には、ノーマはウィルに任せてしまって自分は座り込む。
ウィルはコホンと咳をすると、説明してくれた。












「葉に願いを書いて川や泉に流す。そうすると書いた願いは叶うと、古くから信じられている。それが星祭だ。」













……あれ、私なんだか…知っているような気がするわ。



ウィルの説明を聞いて首を傾げる。胸の奥の奥の方で小さく心が鳴ったのが聞こえた気がした。
そして何故か、ワルターの方に目が行く。













「……」











ワルターも同じように驚いた顔をして私を見ていた。




もしかして、これって……




私達は二人でシャーリィを見た。彼女もまた、目を見開いて動揺している。
















「私、知っているわ。ずっと…遙か昔にしていた風習よ。皆に信じられていたお祭なの。」

「俺も知っている。昔の、に教えてもらった。」














私達はウィルに向かって言った。でも、本当はシャーリィに向かって言ったのよ。














「……私も、知ってます…何ででしょう…?」












シャーリィが呟いた。
私達全員で目を見合わせると、穏やかな笑いが起こった。














「本当に昔からあった風習なんだな。」

「ね〜!叶いそうじゃない〜?」














ウィルとノーマの言葉に嬉しくなる。
きっと、輝きの泉にいるから……記憶が戻る事もあるのかもしれないわね。
そんな想いを馳せながら、私達は小さな葉っぱを一枚ずつ手に取った。
唸りながら自らの願いを思い浮かべる。



そんな中、わざと雰囲気を壊すように上げられた冷たい声。














「僕には、願い事なんてありませんから遠慮しておきます。」













ジェイはガヤガヤとした仲間達に背を向け、スタスタと歩いていってしまった。そこをキュッポ、ピッポ、ポッポが追いかける。














「ジェイ、待つキュ!」

「何じゃ、ジェー坊のやつ。ノリが悪いのう。」

「やりたい人だけでやればい〜じゃん!無理にやらせても、盛り上がらないし!ジェージェーにも葉っぱ渡したし、後でやりたかったら自分でやるって!」













ノーマの纏める声を聞きつつ、私達はジェイを気にしながらも星祭のお願いにのめりこんでいった。













「わー!グリューネさんのお願い凄いです!」

「どれどれ…『世界が平和でありますように』?グリューネの凄いとこは胸だけじゃないんだなー。」













さり気なく下品な発言をしているヴァイシスのお願いを見ると、『クロエ殿と仲良くしつつクルザンドを平和に』と書いてあった。
お願いは一つだと決まっていないけれど…普通は一つ書くのではないかしら?













「お!、俺のを見たな〜!見せろ〜〜〜!!!」













そう言う甥を無視して防御していると、クロエのお願いがノーマによって発表されていた。













『エルザに幸多き人生を』












素晴らしいお願いだと思って自分のを見ると、この場の雰囲気ではとても見せられるものではないと思った。
いつの間にか目の前にはワルターが立っていて、私のお願いを気にしていみたい。














「書けたか?」

「……ええ。でも、見せられるものでは…」













その時、ワルターと私の葉っぱを、ヴァイシスがひょいと取り上げた。
そうよね、何にしろ甥は私達よりも背が大きいもの。














「っっっ!!!何だよ!!!

何、同じ願い書いてんだよ!!!」














ヴァイシスは勝手に見て勝手に嘆き、勝手に私達の手の中に葉っぱを戻した。
そして嘆きながら皆の所へ戻っていく…













ちゃんとワルちんておんなじ願い事だったの?何て書いてあった?」

「言いたくもない!!!」












ノーマの問いにヴァイシスは嘆く。
でも、それは勝手に見て私の願いを知ってしまった彼なりの罪滅ぼしなのだろう。














それにしても……




私はワルターを見上げた。まさか、同じ願いごとだとは思わなかったから。
だって私が書いたのは…













『サジェとシフォンが安らかに眠れますように』












なのよ?















私はハッとして手元にあった葉っぱを見た。……ヴァイシスったら。














『二人が安らかに』













ワルターの文字で綴られていた短い言葉。でも、その気持ちが嬉しかった。
何故彼がこう書いたかはわからなかったけれど・・・、シフォンは一番ワルターを頼っていたし、ワルターも何か思うものがあったのかも知れない。














「ありがとう、ワルター。私、ワルターの分を流してもいい?」

「ああ。」












私達はお互いのお願いごとを流す。
流れていく葉っぱを見ながら涙が溢れそうになって、隣にいたワルターに抱きついた。













?」













慌てる彼に泣きそうな小声で…「少しだけごめんなさい」と言うと、皆に気付かれないように涙を流す。
二人に対しての涙はこれで最後。絶対そうする。



ワルターは私を隠すようにすると、小さく息を吐いた。

















「ジェーイ!!!」

















未だにキュッポ、ピッポ、ポッポに囲まれながらも背を向けているジェイをヴァイシスは呼んだ。
ジェイは嫌そうに向き直ると彼を睨む。
















「何ですか、ヴァイシスさん。」

「俺がジェイの願い事書いたぞー!!!」














ヴァイシスは嬉しそうに葉っぱをヒラヒラさせた。
それを見てジェイは訝しげに立ち上がって歩いてくる。ヴァイシスはそれを嬉しそうに見ると、持っている葉っぱをもう一度確認した。














「我ながら良い出来だと思うんだよなぁ。ジェイの思いを切実に語ってるだろ?」













そして甥は書いた願いを叫ぶ。














「『ヴァイシスさんくらい背が高くなりますように』」

「!!」













ジェイの顔色が変わった。














「無理じゃろ。」














そして彼は、簡単に言い切ったモーゼスに向けて飛び上がると、














「死んでください、モーゼスさんッ!!!」













苦無を投げた。














「なんでじゃ!書いたのはヴァの字じゃろ!!!」

「死ねッ!!!」















逃げ回るモーゼスに問答無用で苦無を次々に投げるジェイ。
それを見てヴァイシスは大笑いしていた。















「ほんとッ!仲間っていいよなぁっ!!!」














そしてジェイのお願いだと言った葉っぱを流すと、自分も追いかけっこに参戦していた。

























































その日の夜中は地震が起きて、ワルターと共に目が覚めてしまって朝近くまで色々話し合っていた。
今まであったこととか、色々な気持ちとか…




彼の葉っぱのお願いを見て、シフォンが彼を頼っていたのを見て、自分も少し頼りたくなってしまったのは本当。
誰にも話したことの無いその…苦しみとかを、少しだけ、ほんの少しだけ話したの。




そうしたら…













「わかった」












って。
何がどのようにわかったのかは理解出来なかったけれども、安心できた。
誰か、頼れる人が居てくれるのはとても支えられることだと思った。












本当は、最期までずっと…一人で戦うつもりだったの。
だって、苦しいのは私一人だけでいいから。











そう思って彼に聞いてみたの、この話を聞いて苦しい?って。














「……嬉しい……と思…う。」













途切れ途切れだったけれど、確かに聞こえたその言葉。
それだけで涙が込み上げてきてしまって、胸がいっぱいになってしまってどうしようもなかった。














「どうして?どうして嬉しいの?」













子供みたいに泣きじゃくりながら聞くと、ワルターは困ったように溜息を吐き私の背中を撫でてくれた。













「話してくれるとは思っていなかったからな…」

「私が話した事で、何かを背負わされる苦しみは無いの?」












そう聞くと、ワルターは逆に驚いたようだった。馬鹿にした様に鼻でふと笑うと、ぎこちない手つきで私の体を抱きしめてくれる。














「背負うのではないだろう?分かち合うだ。」

「……ワルターの言葉じゃないみたい。」

「……言わせたのは誰だ?」

「私だけれど。」














その後はくすくすと笑いが込み上げてきた。悩んでいた自分が本当に馬鹿らしく思えてきてしまったのだ。
何でもっと頼りにしなかったのだろう。彼はこんなにも私のそばにいるのに。














「大好きよ、ワルター。」

「っ!?何を……」

「皆と同じくらい。」

「……」














にんまりと笑って布団を被る。急に眠気が襲ってきて意識を手放す。
ふんわりとした睡魔に纏われた頃、ベットの重みが弾んだので彼が自分のベッドに戻ったのだと思った。



ワルターはいつも、私が眠るまで見守ってくれている。
感謝しても、仕切れなかった。






















































翌日、私達はマダムミュゼットに話があると言われ、彼女のお屋敷に向かった。
そこにはシャーリィとヴァイシスが住んでいる。今日はジェイがセネルを起す番だったので、私とワルターは気にせず朝食をとって向かった。














「おはようございます、マダム。」

「いらっしゃい、さん、ワルターさん。」













私達は優しい笑顔に迎えられ、ふかふかのソファに座った。
まだ来ていないのはジェイとセネルにヴァイシスだ。














「おはようございます。」

「おはよう。」













さっぱり顔のジェイと、寝ぼけ眼のセネルが到着。後はヴァイシスだけだ。















「さて、話を始めましょうか。」

「マダム、ヴァイシスが来ていませんが?」














マダムの言葉にウィルが問う。私達も同じように彼女を見た。
するとマダムは、面白おかしそうにクロエを見る。















「クロエさん、皆さんには言っていなかったのですか?」

「!!へっ…ええ。」














クロエは方をビクリと震わせると、泳いだ目で仲間達を見回した。
みんなは何でクロエが、と思いながらも彼女に注目する。














「ヴァ…ヴァイシス…は、帰国したんだ。」













あら?違和感。














「ええ!!!そんな、誰にも言わずに?」














一番最初に驚いたのはジェイ。きっと彼とはタッグを組んでいたから内緒で帰国したのは意外だったのでしょう。















「マジかよ。」

「ヴァの字も連れないのう。」













セネルもモーゼスもとても残念そう。横にいるワルターもガッカリしている。皆のこの顔を見せてあげたいわね。
あなたはこんなにも愛されているのよって。














「いやいやいやいや〜、みんな、ツッコむとこそこじゃないって!

クーがイシーのこと「ヴァイシス」って呼び捨てにしたんだよ?」













ああ、そこが違和感だったのね!
先程感じた違和感は正にそれだった。私達はノーマの言葉にニヤリとしてクロエを見る。
クロエはいらぬ事をとノーマを睨み、皆の視線に負けて顔を赤くした。














「ヴァイシスが……そう呼んで欲しいって……」

「ほーほー。で、一人で見送ってきた、と。」

「…………うん……」














皆はやってらんないさながら溜息を吐くと、もう一度クロエを見た。彼女は縮こまってかわいそうなくらい小さくなっている。















「クロエ、みんなで見送りたかったよ?」

「すまない、シャーリィ。」

「い〜じゃないの〜。どーせイシーがクーだけに見送ってもらう事を望んだんでしょ?」

「う……」














言葉に詰まるクロエを見て、セネルは名案を思いついたかの様に頷く。
一体何を言い出すのだろうと思うと、クロエにとってはとんでもない事を言い出した。














「ふーん、そういう関係か。クロエ、本当にヴァイシスのとこに嫁げばいいんじゃないか?」

「なっ……そんな、クーリッジ!!!」

「あ〜あ、セネセネってば言っちゃったよ。」














私達は本当にかわいそうなクロエを見て悪いと思いながら、一人でヴァイシスを見送ってしまった彼女に罰だと思って笑っていた。


















**************

ヒロイン編終了〜☆お疲れ様でした!
結局、オリジキャラの心情について細々と描写してなんじゃコリャ状態になってしまい、大変申し訳なく思ってます。
読みにくいところがあったこともお詫びいたします。
それでも、ほしのきは書きたいように書けたから満足!でした。
これであとはジェイ編とワルター編、グリューネ編に繋がっていけそうです^^
これからもっともっとワルターとラブものになっていくので、覚悟しておいてください!!!
でもジェイ編はジェイです!(笑)
ヴァイシスも何のために来たの?って感じがしましたが、成長した彼とクロエの話。仲良くなるワルターとヴァイシス。
そんなところを書きたかったのです。オリジが出せて本当に幸せでした!

読んで下さった皆様に感謝の心を。
そして、これからも宜しくお願い致します!


2008/02/24





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