彼が何かを思って皆を隔てているのに気付いたのはそう、輝きの泉でのピクニックの時。





皆は少しつれない、と思ったみたいだけれど、変だ、と感じたの。

いつもと違うって。





それについてはヴァイシスも同様で、一人距離を置いたジェイに向かってお節介と言っていい程のちょっかいを出したわ。
でも、結果的にはそれがよかったのでしょう。
ジェイはモーゼスに苦無を投げ付けて追い掛け回していたもの。






その後、額に汗を浮かべた彼にハンカチを差し出したの。そしてそれとなく話し掛けた。
でも私もヴァイシスもあまり変わらないことがわかったわ。
クルザンドの人間て、時として考えもせずに本能だけで動いてしまうのよ。















「あなたと僕は似てますからね。」














そう言われた時、私とジェイの似ているところは必死に大人びようと努めていることだと思ったわ。
それについて少し考えて反論しようとすると、彼は私の言葉を遮る様に会話を終わらせた。

まるで、それ以上関わりたくないかの様に。












私を突き放したの。











それから、私とジェイには隔たりが出来てしまったの。

見えない隔たりが。



































マダムの屋敷に集まって、ヴァイシスの帰国と頼み事を聞かされた時のこと…。
『忍者』と聞いて顔色が変わったジェイを見て、心配事は増してしまった。








わかったのは彼の反応を見てからだった。
ヴァイシスともっと話しておけばよかったと後悔したわ。



少し考えればわかるじゃない、ジェイが忍者出身だと。
私は自分の事ばかりで周りを何も見ていなかったのよ。













彼に何か思う事があるならばそれは、過去の事だわ。

















「ジェイ、一緒に守りましょう。」

「当たり前です。」

















私達と新たな隔たりを作ろうとしていた彼への予防策。
それは、確認する様に言った弱々しい言葉。













でも、それでも、自信を含めて言い放った言葉だから。彼がどこにもいかない様にと、私を頼って欲しいと。












私がわからないうちに皆の『不の気持ち』を取り除けるのならば、取り返しがつかなくなる前にどうにかしてあげたいの。
















ジェイの場合は皆と違って心配だったから。

内面に持つ孤独、それは彼を支配しているから。
















第三者からくる『不』に影響された皆と違って、孤独というものは厄介な感情。
















だから、私はジェイが心配なの。

























































ノーマのウィルオヤジ、グルューネママ事件があった後、愉しそうにころころ笑うマダムとカーチス、イザベラを残して彼らは屋敷を後にした。



春の訪れを告げようとしているのか、温かな風が彼らに纏う。
路地の傍らに咲く小さな花が、その場所の平和を誇っている様だった。












「温かいわね。」

「もう春なんでしょうか?」












が季節の変わり目に気付いたのか呟いた。するとシャーリィがにこにこと春の訪れを確認する。















「遺跡船に季節はないだろう。大陸中の海を漂っているのだからな。」

「さすがウィルっち!」

「大陸中の季節が体感出来るわけか…」

「遺跡船次第だけどな。」















彼女達の話しにあっという間に他の仲間達が加わった。
彼らはダクトに乗って目的の場所に着くと、全員で背伸びをした。
毎度の事ながら、大人数で乗るダクトは狭いのだ。














「ワイは夏がええ。ジェー坊はどうじゃ?」













ジェイに上手く話を回したモーゼスをナイスと思いながら、はジェイを見た。
すると、














「あなた達が相手にするのは忍者なんですよ!そう脳天気な話はやめてください。」













彼にそう怒られてしまったのだ。仲間達は顔を見合わせるとだんまりしてしまう。
しかしノーマがそんなジェイを気にしないかの様に喋り出した。
















「ね〜ね〜、オヤジ〜。オヤジってば、オヤジ〜!」

「まさかとは思うが、俺を呼んでいるのか?」

「オヤジ以外に、オヤジいないじゃん!」










ノーマはけらけらと笑った。その笑いは明らかにウィルをバカにしている。
笑いが巻き起こる中、苛立ったジェイがノーマを睨んだ。










「緊張感を持ってくださいと言った筈です。それに、忍者の危険性は伝えましたよね?」









しかしその睨みも言い方も、彼女にはてんで効果なく冗談で返されてしまう。












「末っ子がしっかりしてると、あたしらが楽できていいね〜。」

「クカカ!まったくじゃ!」

「末っ子は僕じゃなくて、シャーリィさんでしょう?」











自分がバカにされているため、先程とは違った意味で苛立ってきたジェイは、いつもの雰囲気を取り戻すかのように怒る。
は自分が馬鹿にされることを許せないジェイを可愛いと思った。












「あり、そうだっけ?」

「年齢的にはそうなるな。」

「背だって、僕の方が高いですしね。」











鼻息荒く言い張るジェイを訝しんで、はシャーリィをじっと見つめた。













「本当なの?シャーリィ。」

「はい、たぶん……」

さん、疑うなら確かめてくださいよ。」

「いいけれど。」














シャーリィはジェイの横に並ぶとぴっと背筋を伸ばした。
ジェイも同じように背筋を伸ばす。

















「う〜ん…う〜ん……」

「早くしてくださいよ。」

「だって、こんな微妙な……ねぇ、ワルターどう?」

「……わからん。」















ワルターはちらと目を細めたがすぐに諦めた。それほど微妙な差なのだ。
そこへグリューネが出てきて二人を見比べる。















「ジェイちゃんの方が、ちょ〜っぴり大きいみたいねぇ。」

「ほら。わかる人には、ちゃんとわかるんですから。」

「ジェージェー、何でそんなに誇らしげ?」

「本当よ、グリューネだってちょっぴりって言ったじゃないの。」

の言うとおりだ。」















彼の背の件に関してとワルターは反論した。
きっと世間についてわからない人に分類されたかのような言い草をされたからだろう。















さんとワルターさんは、ちゃんとわかってない人の部類にわけておきますから。」













ジェイはにっこり笑う。












「なんじゃその、わかってない人の部類っちゅうやつは。」

「モーゼスさんはその部類じゃないですよ。」

「じゃあ何じゃ?」

「バカの部類です。」

「何じゃと!」

「なるほどぉ〜。」

「姉さん、なるほどじゃないいんじゃが…」
















いつものように可哀相なモーゼスを、グリューネはにこにこしながら「仲がいいわねぇ、と頷いていた。
その時、無言でジェイの隣に立っていたシャーリィがてくてくとクロエの前に歩いて行き彼女を見上げる。
















「クロエは背が高くていいなぁ。」

「私はもう少し小さくてもよかったけど。」

「あたしがちょ〜どいいってことだね!」

「う〜ん、さんじゃないかなぁ。」
だろう。」

「あら、そうかしら?」

「あたしだってば〜!」













がにっこりすると、シャーリィとクロエが同時に頷いた。
しかしからすれば、女の子は小さいほど可愛いという気がしていたのだが。













「ノーマ、それで何の用だ?」












腕を組んで静かにみんなの話を聞いていたウィルが、話の途切れ目に声を発した。
ノーマは頭を掻くと、首を傾げる。














「ん?何の話だっけ?」

「呼んだだろ。オヤジオヤジ連呼して。」

「あ〜…それなら、ただ呼んでみただけ!」













近づいてくるウィルに恐れをなしてノーマが仰け反る。
そしてニヤニヤが引き攣った笑いになった時、ノーマはウィルの拳骨を食らった。
















「おがっ!」

「そりゃ殴られもしますよ。」

「自業自得だな。」

「そうよ、ノーマ。」

「そうですよ、ノーマちゃん。」

「あ〜ん、グー姉さんまで〜!!!」
















ノーマは泣き真似をしてグリューネに抱きつくと、そのまま地下道に入っていってしまった。それに続くようにジェイとモーゼスも入っていく。
とワルターとウィが共に足を踏み出し中へと消えていくと、その場に残されたのはセネルとシャーリィとクロエだけとなった。
シャーリィはもじもじしながらセネルとクロエの顔を見ると、言いにくそうにしかし嬉しそうに呟く。













「こんな時に不謹慎かもしれないけど。こういうの、いいよね。

みんなと一緒にいると、あたたかい気持ちになれる。自然と笑顔になれる。」

「それを守るために私達は戦うんだ。」

「他人を虐げる欲望のために、シャーリィを利用させたりはしない。」












二人の言葉に、シャーリィは嬉しさを零れんばかりの笑顔で頷く。












「みんながいるから、不安じゃなくなるんだね。」

「私達がいる限り、シャーリィを守ってみせる。」














「セの字、置いてくぞ!」













仲間が追ってきていないことに気付いたモーゼスが大声で叫んだのが聞こえた。














「すぐ行く!

行こう。」

「「うん!」」












三人は嬉々として地下道の中に消えていった。


















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わー…なんか微妙な繋ぎ話になってしまった…。
まあ、おもしろくするためにもこういう話も必要なんです(笑)


2008/03/07






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