地下道を出てモフモフ族の村の跡地に出た彼らは、辺りを見回した。
忍者が居るなんて情報があったのがおかしいくらいにシンとしている。

モフモフ族が住んでいた家々は閑散としているが、彼らの温かみがまだ残っているような気がしてわくわくするとは思った。
始めて来た場所は、何でこんなに心が弾むのだろう。忍者がいて警戒しなければいけないのに。



は目を広げて大振りに左右を見回した。残っている道具などは埃を被ってはいるが、まだまだ使えそうだ。
この場所だって、暖かな空気とそれを都合良く掻き回す風と共に生きられる素晴らしい場所だ。













「素敵なところね。」

「そうですよね。」

「ディノワームさえ居なければな。」

「本当だ。」













の言葉ににっこりするシャーリィを見て、セネルとクロエが溜息を吐く。
二人はきっとここに来て何か大変な事があったのだろうと思った。













「シャーリィだって大変だっただろ?」

「そうだけど……」












先程私の言葉に頷いたシャーリィもその場にいたのだとわかったけれども、あまり大変だった感じがしない。














「あの時のシャーリィは、セネルに守られて、ワルターにも守られていたからな。」












くすくすと笑うクロエ。隣で頷くウィル。
私がみんなと出会う前に何があったかは聞いている。きっとそのことなのだろう。














「ワルターは地下道で岩の下敷きになったよな。でも生きてた。いつ何があっても生きてるお前は、随分しぶとい奴だと思う。」

「何だセネル。俺に喧嘩を売っているのか?」

「……何でそうなるんだよ。褒めてんのに。」

「褒めてるように聞こえん。」















再びクロエがくすくすと笑う声が聞こえた。


































ジェイは達より数十歩前に行き、辺りを見回していた。
その肩に宿る警戒心。緊張しているのではないだろうけれど、ガチガチに固くなっている気がした。













「だ〜れもいないじゃないのさ。もしかして、逃げちゃった?」

「いえ、いますよ。」












ジェイの言葉に仲間達は辺りを見回す。しかし姿は見えない。













「ほほう、この私の気配を感じ取るか。」












声がしたと同時に、目の前に煙幕の様なものが立ち上がりそこから、一人の忍者が姿を現した。
顔には仮面をしており、どんな者だかは分からない。











……この声、何処かで…










はそう思うと耳を研ぎ澄まさせる。
何処かで聞いた事のある声だ。きっと思い出せる。
彼女はこう思って真剣に考え出す。しかし全く思い出せない。












「姿を見せるとは愚かですね。」












ジェイは辛辣な言葉で言い放った。
しかし忍者の方は何故だとでも言う様に、両手を上げて首を横に振った。













「愚か?この私が愚かですか?その言葉、そっくりお返ししますよ。」

「……どういう意味だ?」

「あなた方がここに来る事は、私にとっては予定通りのことですから。」













腕を組んで考え込むウィル。忍者の言っている意味が理解できない達。
彼らはぽかんとまではいかなかったが、全くわからないという顔で忍者を見た。



































「わかりませんか?揃いもそろって、おバカなようですね。灯台の街に情報を流せば、自然と行き着くところは決まっている。あなた方に私の情報が届けば、必ず調査に来るはずですからね。」

「わざと情報を流したと言いたいのか?」

「ええ、もちろん。でなければ、あなた方は、私の足跡をみつけられないでしょう?」














忍者はククと笑うと、一瞬を見た。
しかしそれは誰も気付かなかった。見られたでさえも。















「何でよ?そんなの、わからないじゃん。」

「だって、無能なんですから!」

「むき〜!誰が無能だ〜!」

「…口の軽い忍者もいたもんですね。先程の忍者は殺気を丸出しでしたし。」

「いいんですよ。いくら軽くったって、聞いたあなた達はすぐに死ぬんですから。」

「上等じゃ!かかってこんかい!」

「それでは遠慮なく、煌髪人のお嬢さんを頂きますよ!」













忍者の言葉にシャーリィはビクりとしてセネルの後ろに隠れた。
セネルも彼女を守るようにシャーリィの手を掴む。
仲間達も彼女を囲むように陣形を整えた。流石に手出しは出来ないだろう。














「言ったでしょう?全てこちらの予定通りだと!知らないとでも思っていましたか?」













忍者の横に、再び煙幕と共に現れたのは魔物だった。
その魔物は彼の命令を聞くかのように、たちに飛び掛ってくる。
















しかし、その魔物は彼らの敵ではなかった。
何事も無く目の前で倒された無残な魔物の姿を見て忍者は唸る。














「むう……。」














そして、彼は一目散に逃げていった。














「あ〜逃げた〜!」

「僕に任せてください。」













ノーマの叫びに答えるようにジェイが言った。そして、見たこともない速さで追いかけていく。
まるでそれは、忍者の如く。

仲間達は唖然として彼を追うこともしなかった。















「待て、ジェイ!一人じゃ危険だ!」















セネルが叫んだのはジェイの姿が見えなくなってからだった。それほど、ジェイの足は速い。















「ジェイを一人で行かせてはだめよ!」














が取り乱したように言った。その姿に仲間達は驚く。
彼女はこんな事で取り乱したりはしないはずだ。













「どうした、?」

「……嫌な予感がするの。早く、追わなきゃ。ウィル…」

「ああ。後を追おう。」













ガクガクと震えるの肩に手を添え、ウィルは仲間達を促した。
がこんなにも心配をしている不安を胸に残しながら。















暖かな光に包まれたモフモフ族の村の跡地を抜けると、そこはまた別世界が広がっていた。
ジェイがいなくなった焦りを感じながらも、はこの遺跡の巨大さを目の当りにして息を飲む。
















「……なんて、すごい遺跡なの……」

ちゃん、感心してる場合じゃないよ。」

「でも、本当に…なんていうか…感慨深くて。」

「その気持ちわかるな。俺も初めて見たときはそう思ったものだ。」
















ウィルはちゃっかりとみんなが忘れていた自分が博物学者だということを知らしめた。
はその場に感激していたので気付かなかったが、彼女以外の者は小さく溜息を吐く。


















「さあ、行くぞ。」


















セネルが促す。は頷くと仲間の後についていった。

にとってはやはり初めての場所だったので、何もかもが手探りだった。
遺跡の造りもわからず、どのように進めばいいのかわからない。
見渡せば他の道も見える吹き抜けな造りをしていたが、ところどころの老朽化が激しく、道がなくなっていて遠回りをしなければならないこともあった。
しかしセネル、クロエ、ウィルが先導し他の者は何も言わずについていく。
今の三人はにとってはいなくてはならない存在に思えた。
















「……さっきのは、いつも冷静なジェイにしてはらしくない行動だな。」

「早く追いつこう。」


















































乾いた風が吹き、砂埃が舞った。
ひゅううという音が耳に入ると、その音に擽られた様な気がして手で軽く擦る。
そのまま纏めた髪を払うように手を後ろへ放ると、何事も無かったかのように追いかけて逃さぬようにその後姿を目に焼き付けた。


突出した岩が彼を隠そうとしていたが、その忍者はそれで身を守ることもせず僕に後姿を追わせた。
まるで見せ付けてわざと追わせている様だったのに、気付かなかった。そんなこと考えもしなかった。
ただ、いつもと違って頭に血が上り、冷静ではなくなっていたんだ。




















何かひっかかる、と思いながら

それに気付こうとしなかった

真相を理解するまでは……



















追いついた!そう感じた時、僕は爪術を放った。
紫色の閃光が降り立ち、彼を囲んで雷鳴を轟かせた。
忍者はそれに立ち止まり、意を決した様にこちらへ向かってくる。

決死の覚悟で向かってきただろうその行動を鼻で笑うと、僕は再度閃光を落とした。
しかし、忍者はもうそこにいなかった。











「バカな!」












目を瞠る。そしてその後を追おうと目を凝らして上半身を突き出したが、彼は見つからない。
その時、僕の後ろで煙幕の音がして驚き振り向く。



















そこに立っていたのは、懐かしく辛い思い出

もうずっと忘れたいと願っていた過去

これからの僕には必要の無い記憶



















「そ、そんな……。あなたは……。」

「またあえて嬉しいですよ。親愛なる我が弟子、ジェイ。」











僕の時間は止まり、過去へと逆転を始めた。
封印すると決めていたけれど、いつも付き纏っていた闇の部分に心が覆われていくのがわかった。
















もう何年も経つのに、僕の体と心は全てを鮮明に覚えていて、彼を拒絶している。
恐怖に身が竦み、唇が震えた。

開いた瞳孔は、そのまま彼の闇に吸い込まれていったんだ。


















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わー!
ジェイとロンロン様が出会いました!!!
鬼畜が見られますな(笑


2008/03/14





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