その光景は不思議で、目の前に自分がいるのにも関わらず、私は上から傍観しているの。





















私が見ている私…
はジェイとキスをしていて…まだ、眠っているようだった。
そのうちジェイのキスが濃厚なものに変わり、私は微かに寝言を言いながらそれを受けて…そしてしばらくして目を開けた。




の顔ったらきょとんとして、呆れるくらいにジェイを見つめていた。
ジェイはというと一瞬動きを止めたけれど、すぐに私の唇を軽く吸い上げて離れた。



















ああ、これは夢なのだ。
こう思った時本当に夢から覚めたので、起き上がった時はいつも以上にぼーっとした。
























「あら?」















私はジェイのベッドに寝ていた。
布団もしっかりとかけられていたけれど、自分からここに入った記憶はなかった。


















「??」
















それに、ジェイのベッドに勝手に入るわけないわ。

ということは…



















「おはようございます、さん」

「おはよう、ジェイ」

「もう少し寝ていてもいいですよ?まだ朝早いですから」

「いえ、大丈夫です。

ここに運んでくれたのはジェイ?」

「僕以外の誰があなたを運べるというんです?」


















言われてみたら確かに。キュッポ達なら三人がかりではないと無理よね。
コクンと頷くと、ジェイは微笑んだ。


















「食事が終わって僕がお風呂に浸かっているうちに、あなたは寝てしまったんですよ。まあ、キュッポ達もですけどね。」

「まあ!」

「後片付けもあなたを運ぶのも全部一人でやらなければいけなかったので、随分骨が折れました。」


















皮肉っぽく言うその姿は普段のジェイそのもの。昨日の不安定な彼はもうどこにもなかった。
















気持ちが纏まったのだ。

彼にもう、迷いはないのだろう。





















「ごめんなさい、そうとは知らずに…」

「いいですよ。おかげでさんの寝顔がたくさん見れましたから」

「寝顔…」

「いつもはワルターさんに独り占めされてますからね。昨日の夜は満足しました」

「私の寝顔で許してくれるの?」




















全て一人でやらせてしまったにも関わらず、ジェイは私の寝顔を見ただけでいいという。


それでいいのかしら。



















「……では、キスを」

「えっ…」



















ジェイはゆっくりと近付いて来ると、私の肩に手をかけて頬にキスを落とした。



















「あの、ジェ……」

















彼を呼ぼうとした時、それは遮られた。
口にキスを受けたの。

















「……」

「…ふ…」

















思わず声が漏れて顔が真っ赤になった。
あれ、おかしいわ。顔が赤くなるなんて。


















さん、顔が赤いですよ」

「え、ええ…」

















ジェイは顔を離すと、満足そうに笑った。

















「あなたが顔を赤くするとは思いませんでした。これも、サレイジェさんがあなたの心を元に戻したからでしょうね。」

「………そうかもしれないわ」
















ジェイの言葉は目から鱗だった。



さっき見た夢…昨日の出来事だって、あまりの驚きでキスについてジェイを問い質せなかったもの。
前そんな事をされても、全然恥ずかしくなかったのに、今は男の子とキスをした事実があるということが恥ずかしくてしょうがない。


















「ジェイ…私、キスを…」

「あなたは気にしなくていいんですよ。これは僕の自己満足ですから」

「自己満足?」

「はい。

もう一眠りしないということでしたら下に降りて朝食にしましょう。」

「ええ、ジェイ。」

















ジェイは有無を言わせぬ様に話を遮ると私を促す。
私はというと、注して深く考える事なくジェイの言葉に従った。




















































「ソロンの居場所が掴めました。」







ジェイにそう言われた時は、もうわかったのだと彼を尊敬する。
きっと、昨日私が眠りこけているうちに捜し当てたのだわ。

















「凄いわ、ジェイ。さすが不可視のジェイね!」

「…さん、いつ僕が不可視という通名で呼ばれているのを知ったんですか?」

「ええと…ごめんなさい。忘れてしまったわ。でも最初は知らなかったわね。」

「はい。遺跡船の事は何も知りませんでしたよね。」

「ええ。感じていたのはステラの放っていた温かな光と………兄様の闇のような謀。」

「……」

「遺跡船にも私にも、大変な出来事は兄様の闇と水の民の苦しみだけではなかった。今、何かが起ころうとしているわ。」

さん…」

















ジェイは持っていたホタテの貝殻(お皿ね)を置くと、私を見つめた。
その瞳の真剣さに、思わず目を逸らしてしまう。




















ヴァイシスが言っていたの。














ジェイも…私の事好いてるって。

……恋の好くってことよ。



















もちろんモーゼスからもセネルからも告白されたのは覚えてるわ。
彼らが言ってくれた事はとても嬉しかった。でも、あの時はそういう事に頭を向けられない程に一生懸命だった。














でも、今は違うの。
そうやって気持ちを伝えられるとドギマギする。顔も赤くなってしまう。

頭がパンクしそうよ。













私はサジェを恨むわ。こんな事なら前の方がよかった。
あの、クルザンドの社交界でヴァイシスと共に男性を追い払っていた頃の方が。


















「大丈夫ですよ。あなたなら何だって乗り越えられます。」
















そんないかがわしい事を考えていた私に、ジェイは真剣に言ってくれた。
私は顔が緩むと、にへらと笑ってしまう。

















「ありがとう、ジェイ。」

「どう致しまして」

















そう言ったジェイの表情が少し暗かったのは気のせいでしょう。
















「さて、食事も終わりましたしウィルさんに報告といきますか。」

「ええ。」


















































村を出てウィルの家に向かう私達は…その…、手を繋いでまるで恋人同士みたいだった。
ジェイは一言も発する事なく私の手を取り歩き出した。私は彼の少し早い歩調に合わせながら顔を赤くして歩いたの。



ウィルの家に着くと彼は起きていて、そして何故かワルターとコーヒーを飲んでいた。
私達は話しがあると言って部屋に入り、二人の鋭い視線を受ける。
















「?」














不思議に思って二人の視線の先を見ると、私とジェイが繋いでいる手だった。
二人の視線は痛いほど突き刺さる。



敏感なジェイはそれに気付いているだろうけど、無視していた。
















「ソロンの居場所がわかりました。みんなを集めましょう。」















私達は手分けして仲間を集めに走った。
ワルターはノーマとシャーリィ、ジェイはモーゼスとグリューネ、私はクロエとセネル。私は早々にクロエを見つけると、セネルを起こすのを任せて一足先に戻る。
だって、セネルを起こすのは手間がかかるのだもの。


てくてくと歩いてウィルの家の前に来ると、モーゼスとグリューネを家に押し込むジェイと鉢合わせた。
途端に顔が赤くなる。

















「顔が赤いですよ。」

「…私は病気なのよ。」

















目を逸らしてそう言うと、ジェイはくつくつと笑った。



















「病気…ですか。まさか本当のさんがこんなに初だったとは思いませんでした。」

「うぶ…?」

「そうです。あなたは僕からキスを受けたことで、僕を男として意識せざるを得なくなったんです。だから顔が赤くなる。」



















ジェイは依然笑っていて、私は眉を潜めるばかり。


















「なんなら、もう一回してみますか?」





キスを…



















微かに聞こえた言葉に全身がほてる。

















「わっ私…」

















近付いて来るジェイの手に困りながら何か言おうとしていると、














「何をしている?」














後ろからワルターの不機嫌な声が聞こえた。


















「別に、ワルターさんが気にするような事ではありませんよ。」


















ジェイはそう言って家の中に入っていってしまった。
ワルターは舌打ちすると、私の腕を掴む。



















「あ、えと、ノーマとシャーリィは?」

「そろそろ来るだろう。」

「そう…。」

「……」

「……」
















何故か気まずい雰囲気になり、言葉が出てこない。
でもワルターに言わなければいけない事が一つ。


















「私、当分ジェイのとこにいるわ。」

「……そうか。」


















ワルターは不機嫌そうに頷くと、私を置いて家に入っていく。




心なしか彼は……恐かった。




私はその場に立ち尽くし、ノーマとシャーリィが通るまでずっとで突っ立っていた。



































最後のセネルとクロエが集まると、ジェイはソロンの居場所を説明した。
仲間達は真剣に聞き、所々質問したりしている。直ぐにでも向かおうとなった時、シャーリィの身の置場で悩んだ。















「シャーリィはどうする?」

「?どうして、クロエ。」

「……あっ、そっか。狙われてるのリッちゃんだもんね。」














不思議そうなシャーリィに、納得するようなノーマ。
確かに、ソロンはシャーリィの力を手に入れたいと言っていたわね。
ソロンを倒すのも大切だけれど、シャーリィを守る方が大切だわ。


















「私も一緒に行きます。」

「みんなと一緒の方が、安心できるものねぇ。」

「僕もそれがいいと思います。近くにいた方が、状況も掴みやすいですから。」

















ジェイが頷く。
私も一緒にいたほうがいいと思うわ。遠くにいて身を心配するよりも、近くで守っている方がよっぽど安心できるもの。

















「セの字はいいんか?」

「もちろんだ。シャーリィが自分で決めたことだからな。」

「なら、決まりですね。忍者の潜伏場所は雪花の遺跡です。」

「わかった、みんな行くぞ!」
















セネルを先頭にみんなで家を出て行く。ジェイはそれを見送るように、しかし遠くを見つめるように立っていた。
私は何となく彼のその姿が気になって顔が赤くなるにも関わらず横に立っていると、廊下からハリエットが入ってきた。


















「あれ、ジェイ君と二人?」

「……あ、僕達ももう行きますよ。」

















ハリエットに気が付いたジェイは、私の手を取って歩き出した。
前だけを見る彼は気づかなかっただろうけれど、私の顔は真っ赤だっただろう。




















私って、本当はこんなにもウブだったのね。

今になってわかった事実に、こんなにも頭を悩ませるとは思わなかったわ。


















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男の子に大胆な行動を取られると、気になってしょうがなくなる女の子^^
それも自分に気があるとか言われてたら普段の数倍気になってしまいますよね。
そんな感じ。
ヒロインはだいぶ歳相応になってきた気がします♪


2008/03/30








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