さっきはふがいない顔をしとったかもしれんが、今は大丈夫じゃ。
なんたって人を超えてる体型というか・・・ナイスバディな姉さんの体が触れとったんじゃ。
デレデレせずにはおれん…





いやいや…そんなことは思っとらんぞ?信じるんじゃ。





と嬢ちゃん、あんのバカジェー坊を助けなけりゃあかんからのう。
ワイはデレデレ…じゃなく、もたもたしておれんのじゃ。
















モーゼスはセネルやウィルよりも早くダクトを降りると、ずんずんとモフモフ族の村に向かった。
その入り口に手をかけて入ると、洞窟のしっとりした空気が顔を覆った。
いつもなら心地よいと思うその冷気も、今日は額に浮かぶじとりとした汗にを冷たくして嫌な予感をさせる。
彼はそれを払いのけるとわき目も振らずに村に入った。





足を踏み入れた途端に聞こえるのはざわざわとしたモフモフ族の働く音のはずだった。
少し高い声に紛れて、彼らが仕事に勤しむ姿を見ると気持ちが和むのだ。
しかし今は違う。ざわざわとした音も、彼らの声も何も聞こえない。














「やけに静かじゃの」

「みんな寝ちゃったのかな?」

「お昼ねはいいわよねぇ」












おかしい、そんな時間じゃないはずだ。モーゼスは思う。
まだ昼間だ。それにも関わらず、この心地よい音たちが消え去るはずはない。














「いくら何でも、静か過ぎるだろ」

「とにかく、キュッポ達を探すぞ」












みんなは頷くと、村のあちこちに散って探し始めた。











おかしい…誰もおらん…











ここまで誰もいないとおかしいと思ったモーゼスは、こういう状況では何が起こっているのか推測しだした。
ジェイが行動を起し、モフモフ族がいない…













ワイは馬鹿かもしれんが、こういう状況はわからんでもない。
ワイが何かしでかして、子分たちがおらんのと一緒じゃ。












「まさか…」












考えられるのは二つ。











モフモフ族全員が人質に取られてジェイが行動した

もしくは

ジェイが人質に取られてモフモフ族が行動した

どちらかだ。














「セの字!!!」

「どうしたモーゼス、何か見つかったのか?」












セネルは遠くで顔を上げた。
モーゼスはセネルを近くへ呼ぶと、自分の考えを話した。













「……モーゼスにしては珍しいな」

「何がじゃ」

「いや、その考え合ってるかもしれないな」

「ほうじゃろ」

「だから珍しいって思ったんだよ」












くすりと笑うセネルを見届けて、モーゼスはウィルを探しに向かおうとしたその時、ジェイの家からノーマが走ってきた。
その表情は危機迫ったように慌てている。













「たいへん!!たいへん!!」

「今度は何だ?」












ノーマの声を聞いてウィルが出てきた。
ノーマは安心すると、深呼吸をして息を整えた。













「ホタテらの家に、置手紙があったのよ!とにかく家にきて!」

「わかった」












彼らはその置手紙の内容を読んだだろうノーマの顔を見て、神妙に頷いた。
一体、その手紙には何が書いてあったのか…









本当は、何が起こったんじゃ……?ジェー坊…









モーゼスは暗い顔をしたジェイを思い出して唇を噛んだ。












家に入ると、クロエがじっと手紙を読んでいた。
その目は瞬きされることもなく、穴が開きそうなほどそれを見つめている。











「クッちゃん…」











モーゼスは彼女の名を呼んだ。
この大人数が入ってきたのにも気付かないくらい彼女は真剣に読んでいたのだ。
きっと重要なことが書いてあったに違いない。













「シャンドル…、みんな…。これが置手紙だ、読んでくれ」












クロエはセネルにそれを渡すと、悔しそうに目を細めた。
セネルが持つ手紙を、他のみんなも覗き込んだ。あのワルターでさえも、紛れて覗き込んだくらいだ。


















「お願いだから、ジェイのやったこと、許してやってほしいキュ」

「ジェイは脅されていただけなんだキュ」

「ソロンの仕事を手伝わないと、キュッポ達は皆殺しだったんだキュ」

「ジェイはポッポ達を守るために、仕方なくやっただけなんだキュ」

「ソロンは刺し違えてでも、キュッポ達が仕留めるキュ」

「だから、ジェイを許してやってほしいキュ」

「ジェイにはみんなが必要だキュ」




















「「「お願いだキュ。ジェイのこと、よろしく頼むキュ」

















読み終わった時の焦燥感をモーゼスは味わっていた。
一体どうしてこんなことになってしまったのか。ジェイにとっては、自分達は相談相手にも匹敵しなかったのだろうか。

















「キュッポ達は知ってたのか」

「ジェイが話したとは思えない。恐らく自分達で調べたんだろう」















ガンッ














モーゼスは居た堪れなくなり、思わず近くにあった階段を蹴飛ばした。
足にじんとくる痺れ、しかしこんなのはジェイやキュッポ達が味わった気持ちからすれば、自分が今苛まれている気持ちからすれば、何のこともない。














「どいつもこいつも勝手なマネしおって!!ワイらは何なんじゃ!!そがあに頼りにならんのか!!」

「その気持ちを、本人達にぶつけてやれ。何としても、居場所を突き止めるぞ」












ガンッ











モーゼスはもう一度階段にその気持ちをぶつけると、少しすっきりしたのか仲間達を見た。










絶対に助けて、誰一人欠けることなく文句を言ってやる。









そう決めたら行動は早い。自分は山賊の頭なのだから。














「俺は街に戻って情報を集める」













ウィルが言った。モーゼスは頷く。












「ワイも行くわ。兄弟に手伝わしちゃる」

「頼む!」














今出来る事をする!
もう過ぎたことも、これからのことも関係ない。出来る事をして、助けるのみ。













モーゼスはドアを開けて駆け出した。























































セネルはじっとドアを見つめていた。
暖かなこの部屋はどんなに眠気を誘うだろうか。しかし彼は、眠ってしまうということはなかった。

















「なんで俺が…」






































「仕方ないだろう、負けたんだ」












仲間達全員が大切な三人を助けるために動くというのに、自分はジャンケンに負けたというだけで待ちぼうけの役になってしまった。












「待つならノーマの方がいいじゃないか」

「だめだ。ノーマは寝てしまうだろう?そう思わないか、クーリッジ」

「まあ…寝るな」

「なんだと〜!」












クロエに言い切られ、セネルは渋々頷くしかなかった。
ワルターは空から捜せるし、モーゼスとウィルは先に行ってしまったし、あとはクロエとノーマと自分しかいなかった。












「あ、グリューネさんは?」

「グリューネさんは村の入口にいる」

「じゃあ…」












いいだろ?と言おうとした瞬間、ノーマがズイとでてきた。














「二人で行動でしょ〜!何かあったらどっちかが報告しなきゃだし。セネセネってば、グー姉さんを一人にするわけ?」

「いや………すまない」

























ということで、彼は家の中で待ちぼうけなのだ。
しかし寝るには寝れず、村も出れず、じっとドアを見つめているだけ。何もやらないといつも以上にそわそわしてどうしようもない。
セネルは溜め息を吐くと立ち上がった。













































「グリューネさん」

「セネルちゃん…」












村の入口まで行くと、グリューネの後ろ姿が見えた。近寄っていくと小さな声で歌が聞こえた。
聞いたことのない曲だが彼女が口ずさんでいるようだ。













「何の歌なんだ?」

「うーん、わからないのよねぇ」

「ふーん…」

「…ちゃんが苦しそうなの」

「えっ…」

「だから歌わなきゃいけないの」












相変わらずどこからそんな情報が入ってくるのか、それがどんな意味かはわからなかったので簡単に頷く。
そして彼女の横に腰を降ろした。








グリューネの歌は心地良い音色だった。の歌を最近聞くことはないが、その音色に似ている。













は何故苦しがってるんだ?」

「霧を浄化しきれないの。彼の闇は深く、まだ力を発揮出来ない彼女には霧が濃すぎて対応出来ないのでしょう」











ソロンのことだろうと思う。暗殺を生業とする忍者だ。自分がわからないくらいに心の闇は深いだろう。
そしてそれを、ジェイもやってきたのだ。彼の本当の心もわからない。


でもジェイが、仲間達を待っているだろうことはわかる。

俺達の絆は、そんな脆いものではないんだ。













しかしに何かあったら、俺達は今のままでいられなくなるかもしれない。















「……














セネルは拳を握ると、地面に打ち付けた。土はそれに驚き、多くの粒を跳ね上げる。
そこには彼の拳が、くっきりと跡づいた。














「俺はいつも、何もしてやれない!守ってやりたいのに、守ってやれもしない!」













彼は歯軋りをして口元を歪ませた。
グリューネはそれを見て、優しく微笑む。














ちゃんは、守ってもらうことを望んでいないと思うわ」

「グリューネさん…」

ちゃんが好きならば、セネルちゃんはちゃんのやりたいことを助けて、共に歩んでいけばいいんじゃないかしら」

「……」












いつもはぽーっとしているグリューネが、真面目にそして核心を突いたのでセネルは驚いてしまった。
しかしよくよく考えると、いつもほんわかした雰囲気で核心を突く彼女を思い出した。












俺はもっと仲間の気持ちを理解しなきゃ駄目なんだな…
グリューネさんだって、ほんわかしてるだけじゃない。
















「ありがとう、グリューネさん」

「いいわよぉ」















グリューネの笑顔を背に、セネルは軽い足取りで家に戻った。




それから朝にかけて待ち続け、仲間達が一人、二人と情報なく帰宅してきた。
誰もが悔しそうに唇を噛み締めたその時、モーゼスが勢いよく走り込んで来た。






















「ジェー坊と嬢ちゃんが帰って来た!!!」






















****************

仲間達のお話はここで終わり。
次は場面が戻ります^^
(わかりにくくてごめんなさい…^^;)


2008/05/01





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