「セネルさーん、さーん、ちょっと聞きたいことがー……」


















ジェイはノックもせずにドアを開けると、中の光景を見て驚いた。



















「あら、ジェイ。ごめんなさい、セネルは寝ているのよ」

















「見ればわかりますよ」と言ってやりたい気持ちを押し込めて、辛うじて「そうですか」と言う。
まさかこんな具合にことが進んでるなど思ってはいなかったので、さすがのジェイも皮肉を言えなかった。



















「起こした方がいいかしら?」

「いえ、いいです」


















イラッとしながらそう言って、「また来ます」と家を出る。
次に向かう場所は、あそこしかないと思い、足を向けた。
















































「ってことなんですよ。何なんですかね、あの二人は。普通、ベッドがあるにも関わらず、恋人同士でもなくひざ枕して寝ますか?
さんは当然のようにセネルさんの頭を撫でながら、縫いもをしてるんですよ」


















苛々が増して、ジェイは足をトントンと鳴らしながら言った。
それを既に集まっていた仲間達は聞いている。



ウィルの家には、クロエやノーマ、グリューネ、モーゼスも集まっていて皆がみな二人の話をしに来ているようだった。
ジェイの話にやっぱりという表情で頷いているのだ。






















「あたしは宿屋に残ってたちゃんの荷物を取りに来たセネセネを見たけど、その仕事はさも自分の役割だって感じだったなぁ」






















ノーマが言った。するとクロエが






















「私は病院で作った薬を届けに来たに会ったが、すぐにクーリッジが心配して迎えに来たぞ」

「ワイはウィの字に頼まれた魔物退治にセの字と行こうと思って待ち合わせとったんじゃが、セの字が来たすぐ後、が弁当を忘れてると走って来たのを見た。悔しいからの、おこぼれにあずかってやったんじゃ」

「わたくしは、セネルちゃんとちゃんが手を繋いで散歩してるのを見たわぁ〜」
















「「「ええ〜っ!」」」






















序の口な目撃談の後、グリューネの決定打話に皆が驚く。






















「手を繋いどったじゃと?」

「ええ」

「グリューネさん、本当なんですか?」

「そうなのよぉ〜、それは仲睦まじくねぇ。恋人同士っていいわねぇ〜」






















「「「そんなの認めな(ん)(い)(ません)!」」」





















ほんわかと頬に手を当てるグリューネに、モーゼス、クロエ、ノーマ、ジェイは強く否定した。
それを傍観していたウィルは、溜め息を吐くと口を開く。





















「お前達はどうしてもとセネルを恋人同士にしたくないのだな。

俺は、の恋人はセネルもありだと思うが」

「何言ってんの、ウィルっち!ちゃんの相手はワルちんしかいないんだよ!

「そうだ。クーリッジには悪いが、にはワルターしか似合わない」


















ノーマとクロエがそう言う中、モーゼスとジェイは静かに聞いていた。
自分達の話が上がってもいいはずなのだが、ノーマとクロエの中ではの相手はワルターしかありえないのだ。




















「しかしな、ワルターはではなくシャーリィを選んだんだぞ?シャーリィだってセネルではなくワルターを選んだ」

「それはそうだけど…」

「そうねぇ。ちゃんがセネルちゃんを求めても、おかしくはないんじゃないかしら」


















吃ってしまったノーマに、グリューネは言った。



















が背負っているものは誰にもわからない。それをもし、ワルターが一緒にいた事で気持ちを保ってたとしたら…」

「あ…」



















グリューネの言葉に続けるように、ウィルが言った。その意味を悟ると、他の者達は口をつぐむ。



















「セネルには、誰かを支える力も、貸せる力もある。そして、セネル自身がの力になることを望んでいる。

だからワルターがいない今、とセネルが恋人同士になってもおかしくはないんじゃないか?」




「「「………」」」












ウィルの言うことは最もだった。
は頑固で気も強いが、心は繊細で折れやすい。それをわかっていないのは本人だけなのだ。
誰かが支えてやらないと、彼女は彼女ではなくなってしまうかもしれない。

















「気に入りません」

「ジェイ?」

「気に入らないって言ったんです。何故それがセネルさんでなければならないんですか。

僕でも、モーゼスさんでも、言ってしまえばウィルさんでもいいはずです。それなのに…」



















歯ぎしりをするように、ジェイは強く噛み締めた。小さな白い手が、ぶるぶると震えている。
そんなジェイをて、グリューネはゆったりとした足取りで彼の前に立つと、手を広げてふわりと抱きしめた。



















「本当は、わかっているのでしょう?ジェイちゃん」

「…わかりたくない。わかりたくないですけど………

わかってなかったら、弟だなんて言いません。僕はもう、さんの争奪戦から外れてるんですから」



















悲しそうに言うジェイの肩に、モーゼスの大きな手が乗った。
するとグリューネは片手をジェイから離して、モーゼスの後ろに回す。


















「ワイもじゃ。

ワイも、わかっておる。にはワの字かセの字の強い心が必要なんじゃ。

悔しいが、ワイは負けたんじゃ」

「モーゼスさん…」

















グリューネの腕の中で、二人は見つめ合った。
ノーマはそれを見て、「ここに男子愛生まれる」という発言をし、ウィルにげんこつで思いきり殴られた。




























































、どこに行くんだ?」

「シャーリィとワルターにマフィンを持って行くの。セネルも来るでしょう?」




















当たり前のように言うをセネルは見つめた。





一緒に行ってやりたい。





けれども、ワルターと話すを平静に見つめることは、今の自分には出来ない気がした。




















「いや、ダクトまでは一緒に行く。けど水の里までは行かない」

「えっ………そう」

















残念そうに俯く彼女を見て、心が折れそうになったが、なんとか行くと言わずに済んだ。

焼きたてマフィンを少し冷まし、手際よく袋に詰めこんでいるの後ろ姿を見ながらセネルは思う。





ここで行かせたら、ワルターの元に帰るんじゃないか。

でも、いくらなんでもそんなことがいきなり起こりはしないだろう、けれど。




















「セネル?」

「あ、すまない。行こう」



















セネルはニカッと笑うと、の荷物を持っていない方の手を握った。


















「ワルターとシャーリィに宜しく言ってくれな」

「そんなこと言うなら、一緒にくればいいのに」

















ダクトに到着すると、セネルはの手をゆっくり離した。
その手を名残惜しそうに離し、一緒に来て欲しそうにしているを、自分の気持ちを守るために突き放す自分はなんて弱い人間なんだと思う。




















「すまない」



















セネルはそう言って彼女を抱きしめると、額にキスをした。
見えなくとも、自分の痕跡を残せる気がしたからだ。




真っ赤になって額を押さえるを抱き上げてダクトに乗せると、先程よりもすっきりした気持ちで送り出せる気がした。





















*************

相変わらずラブラブで(笑)

次は水の民の里に移ります^^


2008/09/15







153話へ