、何度言ったらあいつに会いに行かなくなるんだ!!」

「……は私の友達だもの!!何故会いに行ってはいけないのですか?!」

「あそこはお前が行くような場所じゃない。訓練する者達が行く所だ。」

「だって!」




























これはあの時の事だわ。
ウィルに話したから、思い出してしまったのね。
























「絶対会いに行くわ!」

「二度と行くな!!

お前が次に行ったら、あいつには永遠に会えなくなるぞ!!」

「っ…ヴァーツラフ兄様!!」




























ああ、この後だわ…。
































「そんな事仰るなんて、私の兄様じゃない!!

私の兄様は、ヴァル兄様とヴェティ兄様だけなんだからっ!!」































……」



































……ヴァーツラフ兄様のあの顔、きっと一生忘れられない。
あのように哀しそうにされて、どんなに傷付いた事か。






私のために言って下さったのに…。






……ああっ…ヴァーツラフ兄様っ…!





























































「…フィ…」





















「…!!」

「は、はいっ!」



















名前を呼ばれて驚くと、私は勢いよく起き上がった。














あ、ここは宿屋なのだわ。

クルザンドではない…。












気付くとワルターが私のベッドの縁に座ってこちらを見ていた。






























「ワルター?」

「大丈夫か?うなされていたようだが。」

「あ、うん。大丈夫よ。」

「……とりあえずその涙を拭け。」

「えっ…涙?」




























頬を触ると肌が湿っている。
目尻まで指をやると、まだ雫が溜まっていた。































「ごめんなさい。」



























私はわけもなく謝ると、袖で涙を拭った。









顔を洗いに行った後、鏡の前に座り、髪の毛を梳かす。


長くなった髪、そろそろ毛先だけでも切らなければいけないと思う。









ワルターは訝しげに私を観察していたけれど、目を伏せて外を見た。





つられて同じように外を見ると、青い空に日の光が窓から差し込んで、今日も晴れていることを教えていた。































「話さないのか?」



























ふと思い出したようにワルターが言った。
私は肩を震わせると、鏡の中の自分を見る。そしてその後ろに写っているワルターを見た。


鏡の中の彼と目が合ってしまい、心の中のもやが一層濃くなる。





























「私…」

「…話したくないなら、それでいいが…

一人で重いなら…」

「ごめんね、ワルター。」

「……」
































私はとかし終わった髪を三つに分けてくるくると編み込む。

はい、三つ編みの出来上がり。





























「パンでも買いに行きましょうか?」




























朝食のパンを買い忘れていた事に気付き、今出来る一番の笑顔を彼に向ける。
ワルターは複雑な顔で「ああ。」と言った。















































                  *
















































「ワルターはどんなパンがいいの?甘くないやつよね。」

「何でもいい。」

「あらそう?じゃあ同じでいいわね。

お兄さ〜ん、これとこれくださいな。」

「いらっしゃい、ちゃん!今日も可愛いね。」

「やだ、ありがとうっ!」






























普通の人間には言える言葉を、何故俺やあいつらには言えないんだ?

を見ていると、苛々する時がたまにある。








その時、相手が欲する言葉をわかっているのに言えない。


……自分に引け目を感じているからだろう。




























「帰りましょ、ワルター。」

「ああ。」

























最近は前にも増して酷くなった気がする。

原因はきっと、こいつの中にある力との戦いと、ヴァイシスという甥が来たせいだろう。





























「どうしたの?」

「いや。」

「考え事をしていると、木にぶつかるわよ?」

「フン…」

「ふふ…」






























くったくのない笑顔を向けている筈なのに、何故こんなにも俺の前から消えてしまいそうで不安なんだ?





























このような事を考えていると、前を歩いていたが急に立ち止まり俺はそれにぶつかった。





























「きゃっ……ほうら、ぶつかったじゃない。」

「それは貴様が急に止まるからだ。」

「あら、そう?

それよりあそこにハリエットがいるのだけれど…何か抱えていない?」
























が指した方に、この前までが居候していた屋敷に居たガキが布に包まれた赤子を抱いてうろうろしているのが見えた。

























「俺には赤子に見えるが?」

「やっぱり?ハリエットの子…なわけないし…。」

「ありえんだろう。」

「ハリエット〜!!」






















首を突っ込まなくていいものを、こいつは大声でガキの名を呼んだ。

まあ、こいつの性格からして仕方ないな。























「あっ、とワルター君!」



















ガキは俺達に気付くと、よたよたと近寄って来た。




















「どうしたのその子?」

「あいつを観察してたらいきなり知らない人達に呼び止められて、この子をお願いしますって、ハティに渡して来たの。」

「あいつって、ウィルのこと?」

「うん。」

「そう…。ハリエット、赤ん坊を貸してくれる?」

「いいよ、はい。」






















はガキから赤ん坊を受け取ると、優しく抱いた。
それがあまりにも様になっていて、狼狽してしまう。


























「どうしたの?ワルター。」

「…いや。」

「…なんかこうやって見てると、とワルター君の子供みたい…」





















!!

















「なっ…何を言う!」

「あーっワルター君が照れたー!」

「ワルターが照れたわ〜。」

まで何を言っているんだ!!」

「あらあら、ごめんなさいねワルター。」























……ムキになりすぎた。









顔が赤いのか暑い。



俺はこいつらから顔を逸らすと、赤子の顔を見た。













静かに眠っている。



























「どうするんだ?」

「そうね、とりあえずウィルに相談しましょうか?」


















はガキに片目をつぶると、ウィルという男の家へと歩き出した。




















*********************

不安がるワルちん。

ああ、ハリエットが可愛い…!!

久々のヴァーツラフ兄様が書けて最高ですっ♪

2006/10/01










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