シャーリィを守らなければいけないと思ったのは事実だから否定するつもりはない。
でもそんな自分を差し置いて、
俺を置いてワルターの元に向かったには酷く落胆してしまった。




























一人で行くのと二人で行くのは違うだろう?
一緒に行って欲しい、そう言ってもらえれば…。




























が一人で行ったことに落胆した俺を見て、シャーリィはしてやったりという表情をした。
でも俺は、それにも気付かなかった。




























がワルターのところに一人で向かったから、もうこの恋が終わったことを告げられた気がしたんだ。




























「お兄ちゃん…」

「ん?」

さんとワルターさん、大丈夫かな?」

「……ああ」




























大丈夫であってほしいと願いながら、心の中では一緒に帰ってきてほしくないという気持ちでいっぱいだった。
自分の恋の終結を認めたくなかったんだ。



だから、が一人で陸に戻って来た時は胸が弾んでしまった。




























ちゃん!ワルちんは!?」

「……」




























は顔を俯けて無言だった。
そこへ、ぱたぱたと倒れた水の民を海から陸へ引っ張る作業をしていた他の仲間達が走ってくる。




























!ワの字はどうしたんじゃ!?迎えに行ったんじゃろ」




























モーゼスが力任せにの肩を前後に振ると、彼女は膝の力がなくなったのがへたりと座り込んでしまった。




























「大丈夫か、!」




























クロエがモーゼスを突き飛ばしての肩を抱きしめる。
すると、もクロエの肩を抱きしめ返した。































俺は一体何をしてるんだ?
恋人があんな風になってるのに、どうしてここにいるんだろうか。

彼女を支えるのは、俺の役目じゃないのか?


























「クロエっ…」




























はせきをきったように涙を流しながら喋り始めた。






















彼女が言うには、ワルターは海の底に繋がれて気を失っていたそうだ。
は他の仲間達の時と同じ様に光の玉を取り除くと、ワルターの名を呼んだらしい。
すると、ワルターは目を開けて……




























「ワルターは弱ってたの。でも私、気付かなくて…」

「それで、どうしたんだ…?」




























は唇を噛み締めてクロエを見つめた。
そして、俺達を見回し最後にシャーリィを見る。




























「滄我が、波を起こしたの。私はワルターの手を掴めなくて…」

「っ…、ワイ潜って来るぞ」

「僕も行きます!」




























モーゼスとジェイが上着を脱ぎ捨てて海へと走る。
俺も追わなければ。




























「俺もい…」

「やだ…、行かないでお兄ちゃん」




























シャーリィが突然俺の腕に自分の腕を絡ませた。
そして首を左右に振り、いやいやと駄々をこねる。




























「シャーリィ、何を…」

「大丈夫よ、セネル。私がもう一回行くから」




























俺が何かを言おうとする度に遮られ、話は進んでいく。




























「だめだ。体が冷え切っている!」

「大丈夫よクロエ。私は海の中でも水の民と同じように生きれるのだから」

「そういうことを言ってるんじゃない!」




























はクロエから離れると、「ごめんなさい」と謝って海に走って行った。




























!」




























クロエは彼女をお追うとしたが、ふと俺を見た。
そして睨みつけてくる。
でも何も言い返すことは出来なかった。




























結局、俺はシャーリィに止められてを行かせてしまったのだから。




























「お兄ちゃん」

「大丈夫だ、シャーリィ。俺はここにいるから」

「うん」




























シャーリィの肩をぽんと叩いて抱きしめる。




























はこれを望んでたんだろう。
シャーリィが望むことを俺がしてやるってことを。




























なんて残酷なんだよ。
シャーリィが俺を好きで、がそれを応援してるって?
は、俺のことが好きだって言ったのに。




























ギリと唇を噛み締めると、口の中に血の味が広がった。
悔しくてしょうがない。
俺の恋は、本当に終わってしまったのだろうか…。




ほどなくして、モーゼスとジェイがを連れて陸に上がってきた。
の体はもう、フラフラだった。




























!」




























いてもたってもいられなくなって、俺はシャーリィを置いて走る。
モーゼスとジェイは俺が来ると同時に彼女から離れてその体を俺に凭れさせた。




























「セネ…ル、ワルターがいないの」

「…ああ」

「私の……せいだわ」

のせいじゃない」

「私が悪いのよ」




























ぼろぼろと涙を溢れさせるを抱きしめてやることしか出来なくて、俺は無力だと思った。



ワルターを助けてやることも出来ない。
の涙を止める術を持たない。
彼女の気持ちを留めることも出来ない。




でも、この恋は終わらせたくない。
やっと手に入れたんだ。
幼い頃に出会った高嶺の花。



大好きな




彼女を抱きしめる手に力が入りそうになった時、肩に温かい大きな手が置かれた。
俺の頑なな心を溶かすぬくもり。ウィルだ。




























「一度、街に戻ろう」




























悲しそうな表情に変わるを見ないように、仲間達は頷いた。























































街に向かう道程、俺はから離れなかった。
シャーリィの視線に気付きながら、を失いたくない一心で彼女のそばにいたんだ。

は自分の足で歩くこともままならない状態だったので、おぶってやる。
すると彼女は冷たくなった頬を俺の頬につけた。
冷っこく感じたけれど、直ぐに熱くなる。
こんな自然な仕草が嬉しい。




























「セネル、ごめんなさい」

「何がだよ」

「ごめんなさい…」




























何について謝られているのかわからない。
いや、色々と思い当たり過ぎてわからないんだ。

はそのまま眠ってしまい、寝ぼけて言っただけだということにした。
そうしないと、色々考えてしまう。




























「着いた〜!」




























ノーマが叫ぶ。
しかし他の皆はその声に乗ることはなかった。
ワルターが見つからないんだ。致し方ない。




























「今日はもう休もう」




























ウィルの提案をみんなで受け入れる。
ワルターは水の民なのだから、海で死ぬことはないだろうことを前提にしてだ。

本当のことはわからないけどな。




























「セネル、を頼む」

「ああ、わかってる」




























ウィルに念を押され、ずり落ちそうな彼女の体を背負い直す。
シャーリィの視線を避ける様にして皆に背を向けた。



一歩一歩、その重みを踏み締める。が重いとかじゃない。
自分の思いの強さを再び踏み締めてるんだ。




視線を感じなくなって振り向いてみると、クロエがシャーリィを連れて輪から離れるところだった。
他の仲間達はきっと、もう一度戻って倒れてる水の民達をどうにかしに行くんだろう。
仲間達は俺達とシャーリィが休むために街に戻ってくれたんだろうからな。




























「帰ろう、




























の返事はない。
代わりに静かな寝息が聞こえる。




今、この時だけでも休息をとれてよかった。
はいつも一人で頑張り過ぎだから。






























…だから、俺が一緒に背負いたいんだ。























































だけれど…、
次の朝に起きたら、横に寝てるはずのの姿はなかった。
夜は遅く帰って来て、次の朝は早い。



何日も会うことがなかった。
そしてそれが続いたある日、ワルターは見つかったんだ。





























**************

グリューネ編の一話目がセネル視点って(苦笑)
ワルター編からの続きなので…(汗)
ごめんなさ〜い!

次はワルターさんが戻ってきます♪
セネルの恋はどうなるのでしょう…。
なんかシャーリィが悪女になってる^^;


2009/01/06











164話へ