「無事に決まっているだろう」

「そうだよな、お前が簡単に死ぬわけないもんな」

「それにしても来るのが遅んじゃないか?」

「ああ、チャバが俺に伝え忘れたって慌てて来てくれたんだ」













セネルはベッドの袖に座ると、を見ながら答えた。
ワルターはセネルの言葉でドア付近に立っているチャバを見る。すると彼は苦笑しながら口パクで「すいません」と言った。
セネルを呼びに行ったのはチャバ一人の判断だったのだろう。
モーゼスに非難されないように彼はドアに半分身を隠している。

ワルターは思った。
この男、あの山賊の部下にしておくのは惜しい。
一つの軍があるならば、優秀な作戦参謀になれるかもしれない。













は一体どうしたんだ?これじゃあワルターの時と同じじゃないか」













セネルが言った。するとノーマとクロエが困った表情でウィルを見ている。
ウィル自身もどう説明しようかと悩んでいるようだった。

俺とセネルのこと、の精神的ショック…あの男が説明するまでもない。













「俺が説明しよう」













ワルターはそう言った。

























           *

























「お前、ちゃんと告ったのか」













セネルは辛そうな表情で見返してくる。ワルターは頷くとを見た。













は混乱している。それはお前を好きだからだ」

「!」

「信じてないのか?」

「でも、あれは…」

「お前たちは好きあっていたんだろう?そこに偽りはないんじゃないか?」

「ワルター…」













セネルに奪われたくない、そんな気持ちがある中でもそれは認めざるを得ないことだった。
自分がいなくなった時はセネルを選んだ。彼女はセネルに恋をしたのだ。
そしてそれは今も続いている。はセネルが好きだ。













「お前を好きな気持ち、それと共に俺の気持ちを知って嬉しく思っている自分の気持ち、それに挟まれては混乱している」

はどちらか一人を選べるほど強くない。一人を選びもう一人を傷つけるくらいならどちらも選ばない」

「ああ」

「じゃあまさか、自分だけで解決するためにまず大きな問題から取り掛かってこうなった?」

「そうだ」













セネルは答えに辿り着くとを見下ろした。
自分とワルターの気持ちに挟まれてと彼は説明したが、本当は自分のせいだったのかもしれない。

俺はの気持ちを疑った。
二人で過ごしてきた時間を考えればわかることなのに、知るのが怖くて自分の殻に閉じこもったんだ。
思えばもう一ヶ月もと会っていない。
目の前にするとこんなに愛情が溢れるにも関わらず、自分が傷つかないように彼女を避けていた。

が俺との関係に悩んでいたのは明らかだ。
ちゃんと向き合っていたら誰かに助けを求めたかもしれない、一人でこんな危険な真似はしなかったかもしれない。













「どうやったら、救えるんだ?」













セネルは苦しそうな表情で言った。
が起きてくれるのならば自分はどんなことでもやる、そう思った。













「こうなった直接の原因がわからないからなんとも言えんが……、が生きたいと思えば気付くと思う」

「それまで待ってるっての!?」













二人の会話を遮るようにノーマが言った。
すると他の仲間たちも入ってくる。













「そんな!黒い霧が蔓延ってるっていうのに、さんが気付くまでなんて呑気に待てませんよ!」

「じゃが、どうすればいいんじゃ!?」

「どうすればいいのかしらね〜?」

に直接問いかけることが出来れば、あるいは…」













ウィルの言葉にシャーリィがハッとした。
それにクロエが気付き、肩を掴む。













「シャーリィ、何か思いついたのか!?」

「えっ……あ、うん…」













シャーリィは不安そうに頷いた。
他の仲間たちは彼女を取り囲むと方法を聞こうと静まった。
そこにセネルが加わり、彼女の手を強く握る。













「シャーリィお願いだ、何か方法があるなら言ってくれ」

「お兄ちゃん……

私とさんは頭の中で会話が出来るの。だから話しかけてみたんだけど…」

「「「けど!?」」」

「遮断されてて返ってこなかった」













シャーリィの言葉に全員が肩を落とす。
しかしシャーリィは兄の手を握り希望に満ちた瞳で見返す。













「でも滄我の力を使ってリンクすればさんの中に入れるかもしれないよ!」

「「「リンク!?」」」

「うん。私と滄我の力でさんにリンクして誰か一人を送るの」

「一人か……」













セネルが呟く。
自分が行きたい、彼はそう思ったがとの関係は壊れたままだ。
が受け入れてくれる自信がない。













「私の力じゃ一人が限度だよ。その一人が失敗したら後がない」

「じゃあ、ここはワルターが…」













セネルはワルターに全てを託そうと思った。
の一番近くにいるのはワルターだ、彼ならの心も受け入れるだろう。
悔しいが自分が失敗するよりも彼が成功してが帰ってくるのが一番だ。
他の仲間たちも同じことを考えたようでワルターを見ていた。

しかしワルターの考えは違っていた。













「セネル、貴様が行くべきだ」













彼の言葉に、誰もが耳を疑った。














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ワルターは他人を認められるくらいに成長しました!!!
セネルも時間が経って色々受け入れられる感じに回復…
良かったぁ。


2010/02/21





171話