ダクトを降りて街に入る手前、セネルとワルターが私達から離れて二人で何かを話していた。
二人に言いたいこともあったし、私は仲間たちの輪から外れて二人に近づく。

















「どうしたんだ?」















二人がこちらを向いてふと笑った。
良かった、特に言い争いとかしていたわけじゃないのね。















「二人に言いたいことがあって」

「俺たちに言いたいこと?」















セネルが不思議そうに顔を傾げ、ワルターがじっと私を見つめる。
その視線にドキドキしながら深々と頭を下げた。















「二人ともありがとう」

「「?」」

「兄様には恨みとかたくさんあったでしょうに、何も言わずに私との時間を持たせてくれたでしょう?」

「ああ、それか」















顔を上げてみると二人は笑っていた。何で笑っているのかわからずぽかんとすると、セネルが優しい微笑みを向けてくれる。















「俺は……いや、俺達は好きな子の幸せなら何でも我慢できるんだ」

「え?」

「ヴァーツラフの事ではたくさん辛い思いをしただろ?それを全部拭い去ってほしかったんだ」

「あの時間では足りなかっただろうが、お前が少しでも元気になるのならば俺たちの恨みどころではない」

「そうそう。もう過去は変えられないからな」















セネルは悲しそうに微笑むと遠くを見つめた。
その視線の先にはステラのお墓がある。















「セネル…」

「え?ああ、ごめん。ステラは生まれ変わってまた会える。だから大丈夫だ」















セネルもワルターも大事な人たちを失って辛いはずなのに、それを押し殺して私のために時間をくれた。
私は本当に愛されてる…心からそう思える。
だから……















「二人とも本当にありがとう」















今出来ること、それはお礼を言うこと。
心からのお礼を伝えて、そして…世界を救うの。















私は間違った選択はしないわ。















誰一人としていなくならないように…そうするわ。



























































「グリューネさんもシュヴァルツの気配を感じることも出来ないようだ。今日は早いが解散にしよう」















ウィルの言葉に全員が頷く。
するとジェイが髪の毛をさっと払って言う。















「そうですね、固い床で寝たので少し疲れましたし」

「ジェー坊はいつからお坊ちゃんになったんじゃ?」

「あなたの野蛮さと違って、僕は繊細なんですよ」















ジェイの言葉にモーゼスが突っかかりそれをまた言い返す。お決まりのパターンが始まってしまい他がうんざりしながら見つめている。
いつもは楽しそうに見つめているグリューネも何か考え事があるのか明後日の方向を向いていた。















「はいはい、言い合いは解散してからにして下さいね」















終わらない言い合いを見かねてシャーリィがぴしゃりと言った。すると驚いた表情でジェイとモーゼスは彼女を見る。
シャーリィの笑顔は笑っているようで笑っていなかった。















「さ〜帰ろ〜、ちゃん、ワルちん」

「ええ」















私達はノーマと一緒に他の仲間を置いて宿屋に入った。
階段を上がりかけたとき、先に上がっていたノーマが私の前にいるワルターに耳打ちをしたの。



一体何かしら?



ワルターが赤くなってノーマがニヤニヤしているのを不思議に思いながら彼女に別れを告げ二人で部屋に入ると、何故か久々に帰ってきたおうちのような気がした。



そうか……心の中でクルザンドの私の部屋にいたから…



実際は一日も経っていないのに、ずっとあそこにいたような気がするからそう思っちゃうのよね。
私は一人で頷きながらドアを閉め顔を上げる。その時、目の前で立ち止まっていたワルターの背中に思い切りぶつかった。















「きゃ…ワルターったら、なんで立ち止まって…」















ぶつかったところを抑えながらそう言い掛けた時、ふわりと体が浮いたの。
体が浮くなんて考えられないじゃない?普通ならね。
でも、次に起こったことで何が起きているかやっとわかったの。















「あっ…ふ…」















固いドアが背中に当たり強く押し付けられる。少し痛いと感じながら目を開けると、ワルターの金色の髪が揺れているのが見えた。
そして唇に当たる柔らかい感触。気持ちいい、と蕩けそうになる頭をはっきりさせように瞬くと、彼の瞼が視界に入った。



ワルターは私の体をドアに押し付け、キスをしていたの。



そのキスは今までしてきたキスと違って体が火照るような激しいもので、何度も顔の角度を変えては口づけてくる。
私は両手を彼の顔と頭へと回し、同じように激しくキスを繰り返した。















!」

「ワルターっ…」

「愛している」

「私もっ…愛してる」















言いようもない気持ちが体の中から込み上げてきた。
これはきっと私だけのものじゃない、四千年前のあの子の気持ちも入ってる…そう感じたの。
好きを通り越して『愛してる』そう簡単に言える言葉じゃないわ。

私達はゆっくり体を離し、そして再び噛み締めるように強くお互いを抱きしめた。















「もう一人でどこにも行くな」

「ええ、約束するわ」















一番守りたい約束。でも守れるか分からない約束でもある。
そう思ってるのは私だけじゃない、ワルターもきっとそう。















「俺はお前と共に生きる」

「ええ」

「一緒に生きていこう」

「ええ、ワルター…誓うわ」















私達はその晩、たくさんの事を語り合った。
クルザンドにいた時、セネルと会った時、兄様と対立した時…今までの私の話、それと今までのワルターの話。
無口なワルターにはたくさんの問いかけをして話してもらったのだけど、少し妬けちゃった。
だってシャーリィを守るためにこうした、ああしたという話ばかりなんですもの。

寝る時もお互いのベッドをくっつけて近くで向かい合って話したの。
全く話は尽きなかったからいつ寝てしまったのか覚えてないけれど、もったいないとは思わなかったわ。
だって、これからずっとこうやって一緒にいられるのだもの。




朝起きた時、ワルターの顔が横にあってすごく幸せになれたの。
間もなく彼も起きて、横にいる私を見つけて笑ってくれたのが嬉しかった。















「おはよう、ワルター」

「ああ」















幸せを確かめるように抱き合い、軽くキスをする。
毎日が幸せすぎて顔がほころんでしまうわ!!!















でもそんな時間はずっと続かない。特にシュヴァルツがいる今はしょうがないわ。
だって、グリューネがいなくなってしまったのだもの。シュヴァルツを追って……

何か起こってしまうまえにグリューネを見つけなければ!!!















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ラブラブになりました〜^^
おめでとうございます☆


2010/04/15