「ワルター、ご飯よ。」
私はお盆に乗せた食事を机に置いた。
彼はむくりと起き上がると前髪を掻き上げる。
まだ傷が良くなっていないからか、動きがゆっくりしてる。
今思うと、あの時は相当無理してたんだろう。
「あーんする?」
「……いらん。」
ワルターは私の好意を断ると、ゆっくりスプーンを動かして食べ始めた。
「食事終わったら、包帯変えましょう?」
「……ああ。」
「……ねぇ、ワルター。」
「なんだ?」
「…なんだかこうしていると、夫婦みたいね。」
私の言葉のあと一瞬、気のせいかもしれないけどワルターの顔がほんのり赤くなった気がした
「さ、脱ぐわよ!」
食事が終わったので、私は彼をベッドに追い立てて、服を脱がせようと掴んだ。
「何をする!!自分で脱げる!!!」
「だめよ!自分で脱ぐと遅いんだもの!」
無理矢理服を引っぺがす。
ワルターは最初、抵抗していたけど、途中で無駄に思ったのか簡単に脱がされてくれた。
「なかなか治らないわ…」
「ああ」
「もう少し効力が強い薬草を使った方がいいかしら」
「…好きにしてくれ」
「そうねぇ…」
彼の傷に薬を塗りながら、頭の中に色々な薬草を浮かばせる。
あれも駄目、これも駄目…
その時、
バーン!!
勢いよくドアが開いてノーマが入って来た。
私達にはあまりにも突然な出来事過ぎて手が止まる。
「朝からお熱いですなー、二人共〜」
「何故貴様が勝手に入ってくる?」
「いいじゃーん。隣人とは仲良くしなきゃだめだよ、ワルちん」
「フン…」
「いっやー、邪魔者が来てワルちんが怒っちゃったー。でもさ、あたし頼まれてんだよね!」
ノーマは椅子に座ると、足を組んだ。
「頼まれてるの?」
「そー!ちゃんを守るよーに!!」
?
何で守るのかしら?
ここにはワルターもいて、私も戦えるのに…。
「、手が止まっている」
「あら、ごめんなさい」
包帯を薬袋から取り出して、彼の体にくるくる巻き付ける。
しなやかな白い体にたくさんの傷。
彼の体はきっと、たくさんの戦いに耐えてきたんだろう。
「…、貴様は一つのことに集中しすぎて周りが見えなくなってしまう、そこを直せ。」
「え?…ごめんなさい。」
「なんだか二人の世界だねー」
私はハッと気付く。
「あ、ノーマがいたんだわ」
「うわ、本当に二人の世界だよ」
ノーマはそう言うと、パッと立ち上がってドアに向かう。
「偵察終わりー。また来るね!」
「…来ないでいい」
ワルターの批判を背に受けながら、ノーマは嵐のように去って行った。
…何の用だったのかしら?
くすくす…
急に笑いが込み上げて来て、笑ってしまう。
ワルターはそんな私を睨むと、小さく溜息をつく。
そして脱がされた服を掴んで、肩に掛けた。
「ワルター、変わったわね。」
「は?」
「前のあなたなら、出ていくノーマに声なんかかけなかったわよ」
「…うるさい」
彼はそっぽを向くと、そう呟いた。
それが何だか微笑ましくて、再びくすくすと笑ってしまう。
あまりに笑い過ぎて彼がいたたまれなくなると、私は笑うのをやめて彼の肩に手を掛けた。
擦れた服をかけ直してあげて、顔を覗く。
「ねぇ、ワルター。あなたにお願いがあるの」
「…なんだ?」
「あら、素直に聞いてくれるの?」
「…内容によっては考えてもいい」
彼はそう言って、服をちゃんと着出す。
私はにっこり笑うと、お願いするために彼を上目遣いで見た。
これも、兄様におねだりする時の戦法よ(笑)
「あなたの傷が治ったら……」
*
「ノーマ、どうだった?」
あたしが宿屋の階段を下りていくと、男共三人が下のフロアで待っていた。
…偵察、ねぇ。
ま、楽しいからいいんだけどさっ。
心配なら自分達で見に行けばいいのに。
「ラブラブだったよ〜」
「なんじゃと!!!」
部屋に突撃しに行く勢いなモーすけを、セネセネが止めている。
ジェージェーは一人で考え込んじゃってるし、こんなバラバラな三人があのちゃんをねー(笑)
かなり笑える。
ちゃんはちゃんで鈍いし。
でも、今んとこはワルちんかな〜。一番近くにいるし。
「ノーマさん、どんな風にラブラブだったんですか?」
「んー、包帯を巻いてあげたり?」
「それは怪我人なんですから当たり前でしょう?」
「あー、そっかぁ。」
「他には何かないのか?」
「なんかドタバタやってんのが聞こえたくらいかなー」
『何!?』
男共は驚くと、急にそわそわし始めた。
ふーん、やらしい想像してるなコリャ。
「セの字、ワイが一番最初に踏み込んで…」
「いや、俺が行く!」
「僕は窓から行かせてもらいますよ。」
あーあ、突撃の話まで発展してるよ(笑)
その時、ちゃんの姿が見えた。
なんだか面白いことになりそ〜♪
「モーゼス、切込役はお前には無理だ!お前は間接攻撃が得意だろ!」
「何を言うか!ワイはのためなら…」
「まあ、二人で頑張って下さいよ」
「…私がどうかしたの?」
『!!』
奴らは驚いて一斉にちゃんを見た。
驚いた顔が皆おんなじー
「賑やかだと思ったら、三人がここにいたのね。朝から元気だこと…
あふ…」
ちゃんは欠伸をするとあたしを見た。
「あ、ノーマ。ちょっと付き合ってくださいな」
「あ、うん。いいけどー」
あたしをそんな恨めしい目で見たって、なんにもなんないんだからね!
男共ににや〜っと笑って見せると、あたしはちゃんに着いていく。
宿屋を出るさなか、彼女はまた欠伸をした。
「寝不足?
「あ、ええ。ワルターが…」
『ワルターが!?』
後ろにいる外野がうるさい。
寝不足でワルちんが原因だなんて、何だろ?
気になるっ
「みんなどうしたの?ワルターなら部屋にいるけど…」
「いっいや!」
「それより、何でワルターさんが原因で寝不足なんですか?」
「教えるんじゃ!!」
うわ〜、必死!
顔が怖くなってる。
しょうがない。楽しいし、ちゃんを助けるか。
「いこー、ちゃん。」
「あ、うん。」
あたしはグイグイ引っ張ると、宿屋から出た。
「んで、なんでワルちんで寝不足になんの?」
「ああ、それ。
内緒よ…?」
「うん…!」
唾をごくりと飲み込む。内緒の話なんだ!
「夜、ワルターが…」
「ワルちんが…?」
「唸るの」
ドギャアッ!!
あたしは勢いよくズッコケた。
何、唸るって…
「ノーマ、大丈夫?」
「だいじょぶじゃないっ!!
だ〜も〜!唸るって何!?」
ちゃんはきょとんとした顔であたしを見た。
「え、傷が痛いみたいで…。
だから寝返りとか打てないみたいで…ちょっと動くとミシッてなるみたい」
「ほぇ〜」
ワルちん、そんな大変なんだ。
「だから夜、摩ってあげたりして寝れないの」
ほー、摩る…
「摩る!?」
「ええ、何か変かしら?」
「う、ううん別に。」
なんだか心の芯まで医者っぽくなってる。
…これじゃワルちんもセネセネ達と変わんないな〜。
リッちゃん助けた戦いで、いい感じかと思ったのに。
ま、相手が誰でもあたしは楽しいからいいや〜
「ところで、どこ行くの?」
「あ、うん、買い物かな」
「わかった〜。」
ちゃんは逸れないようにか、あたしと手を繋いだ。
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戦う男達。
それを見て楽しむノーマ。
鈍いヒロイン。
そんな展開が繰り広げられるこの頃、遺跡船はまだ平和です。
2006/09/11
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