そうだ、君も待っていてくれる。


花を守れるなら、俺など…































「ウィル、聞こえますか!?」


先生、聞こえますか?













…?
































「ウィル、あなたはハリエットを一人にするつもりなのですか?」

先生、ハリエットを忘れてしまったのですか?





なんだ…これは……

……か?































「ハリエットは、あなたの大切な娘なのですよ。」

ハリエットは、私と先生の大切な娘でしょう?






違う…だけじゃない。

この声、聞こえるこの声は…!!


































真理を惑わす音色に耳を傾けるな。

子は我とあればよい。
































「このまま私達の元に戻らなかったら、私はあなたを許しません!!」

ハリエットを独りにしたら、私、先生を許しませんからね!


































頭の中に声がたくさん響く。
















目の前にいる不思議な女性の声。


俺を必死に呼び止めるの声。













そしてもう一つは……!!





































「この花を守ってください―…」









































―――アメリア!!










































そうか、ハリエットが待っているのだ。

俺は大切な約束を見失うところだった!!!



















































































ウィルは自分を覆っていく黒い闇を取払った。















私の声が聞こえた?






…ううん、違う。
アメリアさんの声だわ。





だって、彼への想いが格段に違う。



































「アメリアさん…。」












さん、ありがとう。
先生は助かったわ。













「ウィルにお会いにならないのですか?」










…ふふ、それは死者には許されていない事なの。
だから、先生にもハリエットにも会えない。



でも大丈夫。



私の想いを共有してくれたさんがるから。













「アメリアさん……」




































アメリアさんの意識が私の中から出て行く。

目の前に姿を現す彼女を見て、自分の心に少し隙間が出来たような気がした。
もし隙間が出来たとしたらそれは、彼女が私に入っていた部分なのでしょう。


































さん、あとは頼みます。








私の先生を…ううん、

私とハリエットの大切な人を、助けてあげて。








お願いします、世界を見守る方……




































アメリアさんはそう言って私の前から姿を消した。












なんて悲しい事なの?
生きて一目あえないなら、魂だけでも会えればいいのに…!!









































我の解放を望まぬのか?なき世界に戻れば、苦しみも無に還る。

なくしてしまえば人の子の苦しみも無に消えるのだ。






































今も続く女性の言葉に、ウィルは必死に抵抗しているところだった。
私の姿はウィルには見えていないようだったけれど、近くに居たくて、傍に寄りたくて、思い切って彼の背中に抱きついた。













広くて暖かい背中。

父の背中。












私は彼の背中を痛いくらい抱きしめると、一心に祈った。









皆のことを、アメリアさんのことを、ハリエットのことを!!


































「あの花だけは守ると約束した。

愛する者と約束したのだ。」
































彼はその言葉を強く言うと、彼の背を掴んでいた私の手に暖かな手を乗せた。































「ウィル……?」



























それに気付いて顔を上げると、ウィルは優しい微笑みを私に向けて一言、






「ありがとう、。」





と言った。




私は嬉しくて、嬉しすぎて、子供の様に泣きじゃくって彼の背中を掻き抱いた。



































愚かなる子よ…




「約束は守るために、守る努力をするために、互いを信じ交わすものなのだ!」



































ウィルの周りの闇が晴れ、彼の胸からは煌々たる光が漏れ始めていた。

私は彼のその光の場所に手を置き、何かを呟く。
自分で呟いたのに何を呟いたのかは分からなかった。

でもその呟きによって、彼の胸からは光の珠のようなものが現れる。

































…それは!!































女性はその珠を見ると一瞬怯んだ。
そして慄くと唇を噛み締める。

彼女がそんな感情表現を露にしたのは初めてのような気がした。










この光の珠は一体…?









そんな考えも最中、光の珠は闇を払い私の目の前で消える。
すると、先程アメリアさんがいなくなって出来た隙間が、気持ちよい光に満たされた感じがした。







































……何故、苦痛に身を委ね救い無き道を歩む。





































彼女はウィルを見据えて言った。
ウィルは光に励まされたかのように明るい顔で女性を見つめる。
































「そんなこと決まっている。

こんな俺を、信じてくれる人がいるからだ!!!」

































女性は悔しそうに身を下げると、持っている斧の様な武器を彼に向けた。






































忌々しき輝ける魂を持つ者よ、この闇に食われて滅びるがよい!!





































そして背後から無限なる闇を出し、私達に迫らせる。
でもウィルは怯むことなく爪を光らせると、上を向いて笑った。





































「アメリア、今こそ約束を果たそう。

ハリエット、お前にも見せよう。

俺とアメリアの愛したものを…!!!」





































そして輝く爪を女性に向けた。










































その後は一瞬で事が片付いた。





光る爪の輝きに闇は負け、女性は唸りながら消えていく闇に身を隠した。



























そして周囲が見えてくると、心配そうな仲間達の顔が私達を囲んでいた。
























ウィルと私は皆に謝ると、街に帰ろうと促す。
笑いながらその場を後にする仲間達の後ろで、呆然としたグリューネが、また種を拾って話していたのが印象に残った。














街に帰ると、ウィルの家の前でマダムミュゼットが心配そうにおろおろしていた。




聞くとハリエットが家にも戻らず、街中を捜しても見当たらないとの事だ。
心配そうに周囲を見渡す仲間達を余所に、ウィルは一人ハリエットの居場所に心当たりがある様だった。





































「ウィル、心当たりがあるのですか?」

「ああ。」































先程までと違って穏やかな顔になったウィルは、私達に微笑むと街の出口へと歩を進める。
私達は不思議そうに顔を見合わせながら、彼の後を着いて行った。






















******************

シュバルツ敗北〜♪



2006/11/10






30話へ