あいつがあんな願いを言うとは珍しい。
それを俺が聞いてやるのもだ。
だがしかし、一つ条件を出した。
条件?いや、こんな軽いものは条件などではないな。
俺にとっては条件だが、にとっては戒めかも知れん。
しかし、俺がこの戒めを解くことはない。
俺の怪我も、献身的に看病してくれるの御蔭で治りそうだった。
あの時、俺はきっと気力だけで動いていたのだろう。
そのまま水の里に帰ったら、体が使い物にならないか、死んでいたかのどちらかだ。
そこにが救いの手を差し延べてくれた。
…いや、はいつだって俺に救いの手を差し延べてくれる。
俺が苦しむと、自分を顧みずに他人に手を差し延べる。
それがだ。
俺は、何回救われたかわからない。
…だからこそ俺は、俺の出来る限りの事であいつを救ってやりたい。
今回だってそうだ。
「あなたの傷が治ったら、私は少し旅に出るわ。」
「旅だと!?貴様は狙われているかもしれないのだろう!?
…うっ…」
「ワルター!ごめんなさい、まだ傷が治っていないのだから無理しないで!」
「しかし…!」
「大丈夫。そんな遠くには行かないから。」
「……」
「私ね、グリューネと一緒に過ごそうと思ってるの。あの人は普通の人ではないわ。
だって、滄我がグリューネに敬語を使ったのよ?
それに、輝ける青の意味を知っていた。」
「滄我が敬語を使ったのは気になるが、輝ける青など何かを研究すれば知っているかもしれんだろう?」
「違うわ、ワルター。彼女はさも自分がその言葉を聞いたかの様に言ったのよ。
グリューネは絶対に私達とは違う。
だから…
だから私は、自分の正体を知るために彼女と二人で過ごしたいの。彼女から何か聞けるかもしれないから…。」
「…」
はいつも、一人でなんとかしようとする。
今回だって一人で立ち向かおうとしている。
俺が役に立ってやれないのが……悔しい。
「、いいかげん誰かを頼ったらどうだ?」
「え?
私は、ワルターに頼ってるつもりなのだけど…」
「!!」
……俺に頼っていると?
「どうしても、他の皆に知られたくないの。
だからワルター、お願い。」
そういうことか。
俺にがどこにいるかあいつらに隠せと。
「俺を利用するためにこの部屋に移ったのか?」
「!そんなわけないでしょう?
あなたの傷を、治したいからよ。
……あなたと共に、生きたいから。」
「……そうか。
なら、一つ条件をだす。
テルクェスを送る、絶対連絡を絶やすな。貴様が死んでないかを知るためだ。
それと、全快したら俺も着いていく。」
「それって二つじゃないの。
それに、ワルターは私が弱くはないって知ってるでしょう?」
「つべこべ言うな。」
「…わかったわ。
夜は出来るだけ帰ってくるわね。
包帯、一人で巻けないでしょう?」
「そうだな…」
は、自分が世界にとってどのような存在なのか知りたいと思っている。
あのような戦いに巻き込まれては思わずにいられないだろうが…。
メルネス以外にこの世界で滄我の声が聞ける存在。
メルネスが言っていた、が持っている力…。
わからないことだらけだな…。
俺の傷も治りかけ、はここから自分を見つける旅に出た。
「帰ってくる」
その言葉を信じて、俺はここで待とう。
傷が治るまでだがな。
治ったら必ず着いていく。
覚悟していろ…
*
その事件?は、突然降って湧いたかのように発覚した。
セネルさんとモーゼスさんは錯乱し、ウィルさんは苛々してうろうろ歩き回り、ノーマさんとシャーリィさんはオロオロする。
僕はどんな態度をとればいいって言うんですか?
さん。
「がいなくなった!?」
「うん。最近ドアをバンバン叩いても返事ないし、無理矢理開けようとしても開かないし。」
「ノーマ、何やってんだよ。」
「テーサツよ!
んでさー、ワルちんがトイレに出て来た時に部屋に入り込んだんだ。
でもちゃんいなくて、ワルちんを待って問い詰めたわけ。」
ノーマさんは一気にまくし立てた。
一体どんな方法を使ってあのワルターさんを問い詰めたのだろうか。
「ワの字がよく話したもんじゃ。」
「あははー脅したんだよねー。」
「何て脅したんじゃ?」
「…襲うぞって(笑)」
その話を聞いていた皆さんの目が飛び出しそうだったのが印象的でしたね。
「何て脅しをかけてるんだ!」
ウィルさんの愛の鉄槌。
「ぼげっ…何すんのよ、ウィルっち!」
「年頃の娘らしい脅しをかけろ!」
…なんですかね、年頃の娘らしい脅しって。
「とにかく、ワルちんは数日前からちゃんが帰って来ないって言ってるんだ。
何かあったのかもよ!!」
「さん、大丈夫でしょうか。」
シャーリィさんが心配そうにセネルさんを見る。
「大丈夫だよ、シャーリィ。に限ってそんなこと」
「は強いしのぅ!」
…何か、違和感を感じる。何でだろう?
「ワルターはを探しに出てるのか?」
「ううん、ワルちんはまだ傷が治ってないから探しに行ってないみたい。」
「そうか。…怪我の治っていないワルターを置いてが消えるとはありえん。
…何か事件に巻き込まれたのかもしれんな…。」
『事件!?』
「例えばの話だ。」
…おかしい。やっぱり違和感を感じる。
ワルターさんは怪我をして探しに行けない…
…!!
もしかして、ワルターさんはさんの居場所を知ってるんじゃ…!!
あの人の性格を考えるとさんを探しに行かないわけがない。
どんなに怪我がひどくても探しに行くだろう。
「ね〜ジェージェー、どっから捜す?」
…気に入らない。
何で仲間の僕たちには内緒で、あの人だけに言うんだ。
過去に関係があったかどうかなんて知りませんけど、あの人が知っていて僕が知らないなんて許せません。
「ジェージェー!」
「…僕は、捜しに行きません。」
『ええっ!?』
皆で驚く。
そしてセネルさんとモーゼスさんが嬉しそうに僕を見る中、他の人達は憐れみの視線を向けた。
「ジェージェー、もしかしてちゃんのことをもう…
「ご想像にお任せしますよ」
ノーマさんをキッと睨むと、踵を返してドアに向かう。
「僕抜きで捜して下さい。」
そう言うと、家を出る。
僕は絶対に彼女を見つけてみせる。
情報屋という仕事に賭けて。
***************
やっぱりジェイは鋭い♪
そしてワルターが熱い青年に(笑)
ヒロインはグリューネを追って度に出ました。
自分の正体を知るために…。
2006/09/12
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