緩やかな波が砂浜に押し寄せる。
ザザンと静かな音が耳に心地良く入り、私の胸を落ち着かせてくれる。
ここに来れば、滄我が何か教えてくれると思ったのに…
淡い期待を打ち砕かれ、溜め息をつく。
滄我は何も教えてくれない。
道を示す事さえもしてくれない。
私は一体どうすればいいのか…わからなくなってしまう。
穏やかな波は滄我の鎮まりを表す。
もう、私達に干渉することはないのですか?
やはり何も答えてくれない。
私は再び溜め息をつくとその場を後にした。
静かの大地。
そこはその名の通り、静寂を保っていた。
「さん、どこにいたんですか。」
「ジェイ…」
「灯台の方から来たということは、一人で静かの大地に行ってたんですね。」
「ええ。」
「滄我に何か聞けましたか?」
「いいえ。何も聞けなかったわ…。」
私がそう言うと、ジェイは自分のことのように溜め息をついてくれた。
しばらく二人で歩くと、今日からのセネルの新居が見えてくる。
「あそこですよ。」
「まあ、大きなお家ね。本当にセネル一人で住むの?」
「そうみたいですよ。」
ジェイは軽い足どりで家に入って行った。
私も後に続くと、中を覗く。
「まあ、広いお部屋!キッチンも広いし、皆で住めそう…!」
私が感激すると、ニヤニヤしたセネルが顔を出した。
「だけならいいぞ?」
「私だけ?ワルターは?」
「ワルターは駄目に決まってるだろ!」
「俺はもちろん住まない。が、も住まん。」
「なんだと!?」
あら、ワルターもセネルの引越しの手伝いしてたのね。
珍しい。
どうりで朝から部屋にいないと思ったわ。
「娘っ子らは料理しとるんじゃないんか?はこげなとこで何しとるんじゃ。」
「えーと、追い出されちゃって。」
「追い出されだじゃと!?」
「ええ。」
そうなの。皆の料理の手伝いをしようとしたら、私が居たら意味がないとかで追い出されてしまったのよね。
「なんじゃと!!以外の娘っ子が作る飯を食わなきゃいけんのか!」
モーゼスはガクリとうなだれると、トボトボ仕事に戻って行った。
「さんがいると、全部作られてしまいそうですからね。あの人達の選択は正しいですよ。」
「まあ!」
ジェイはそう言って買い出して来たものを漁る。
「これはあそこに使って…これはそこだな…。」
そしてブツブツ呟き出した。
「はそこら辺に座ってろよ。」
「ありがと、セネル。でも私も…」
「座ってろって。」
セネルに強く言われ、私は渋々腰を下ろした。
皆は忙しく働いているのに、私だけ座ってるなんて。
「、これはどこがいいと思う?」
「あそこかしら…」
「これは?」
「そこ…かしら。」
自分の家の事だというのに、セネルは家具の配置を聞いてくる。
そんなことをしている間に、彼の部屋は瞬く間に私好みのシンプルな部屋に出来上がった。
「、一緒に住むか?」
「えーと…」
「住まん!!」
私の代わりにワルターが答えた。
片付けが終わってしばらくしても、女の子達は来なかった。
料理がうまくいかなかったのではないか、何か起こったのではないかと心配になる。
「まだかしら…」
「変なものが出来上がってなければいいですね。」
「そんな!失礼よ、ジェイ。」
「そんなこと言ってられるのは今のうちですよ。」
「もう!」
その時、いつの間にかいなくなったモーゼスが帰って来た。
両手にはたくさんの食材がある。
「モーゼス?」
「になんか作ってもらおうと思っての、チャバから貰って来たんじゃ。」
彼はニコニコと食材を持ち上げると、ニカーッと白い歯を見せた。
「モーゼスさんも、やるときはやるんですね。」
すかさずジェイの鋭いツッコミ。
もう、しょうがないわね。
私はモーゼスから食材を受け取ると、キッチンへと向かった。
*
「はい、お兄ちゃん。」
「うまい。」
「…」
「クロエったら…
このサンドイッチおいしいですね、グリューネ。」
「ええ、本当ねぇ。」
皆が集まると、セネルの新しい家でパーティーが始まった。
サンドイッチパーティーかしらね。
そこかしこに色々な形のサンドイッチが置かれている。
今食べたのはクロエのサンドイッチね。
うんうん、彼女のきまじめな性格が出ているわ。
「はい、パパ。」
「うむ」
キッチンの手前ではハリエットがウィルにお手製のサンドイッチを渡している。
ウィルは嬉しそうにそれを受け取ると、モグと口に入れた。
一瞬間があった後、彼の口からもっちゃもっちゃ、ゴクンという音がして眉間に皺が寄った。
「どう、おいしい?」
「…味に始まり、食感から舌触りまで、この世のものとは思えないまずさだ。」
ウィルはそう言うと、手に持っているサンドイッチを見つめた。
それは、それ相応の形をしているというのにも関わらず、味は違うみたいだ。
「せっかく頑張って作ったのに!いいわよ、それ返して!」
「俺には全部食う責任がある。途中で投げ出すわけにはいかん。」
「なによ、それ…///////」
ウィルはサンドイッチをバクリと口に入れ、また不思議な音をさせて飲み込んだ。
「安心して!皆の分もあるから!
…って、何で顔をそむけるのよ!
…いいわよ。はい、ギート君。」
「くうん…」
ハリエットはサンドイッチをギートの鼻の前に出した。
けれどもギートは尻っぺたを床につけると、口を閉じて困ったように彼女を見る。
「動物の反応は正直ですね。」
ジェイがボソリと呟くと、ハリエットの釣り上がった目はモーゼスに向けられる。
「モーゼス君、飼い主なんだから責任取りなさい。」
「ワイ、いつもこんなんばっかりじゃ。こんなことのために、生まれてきたんと違うんじゃがのう…
あぐ…」
ハリエットの有無を言わさない目がモーゼスを駆り立てたのか、彼はサンドイッチを受け取り、口に入れた。
そして…
「ヒョオオオオオッ!」
いつもの叫びを出すと、部屋をグルグル回って家を飛び出して行った。
皆がモーゼスの行動とサンドイッチの強烈さに息をのむ時、グリューネはほんわかしながらハリエットからサンドイッチを受け取った。
「いくらでも食べられちゃうわねぇ。」
彼女はもぐもぐとそれを食べ切ると、にっこり笑った。
「……、例のやつを出してくれんかのぅ。」
しばらく経ってからモーゼスが青い顔をして帰って来た。
そして私に懇願すると、頭を下げる。
「男っちゅうもんは、けじめも必要じゃ!
…ほげっ…」
彼は後ろからウィルに思いきり殴られると、ぱたりとそこに倒れた。
本当に、しょうがないわね。
私はくすくす笑いながらキッチンへ行き、作っておいたおかず達を出した。
「わ〜い、ちゃんの料理だ〜。こんな個性ありすぎなサンドイッチよりやっぱこっちだよね〜。」
「ノーマ!」
「ノーマったら!」
「ノーマさん!!」
クロエ・私・シャーリィは彼女を咎める。
皆、それぞれの思いを持ってね。
トントン…
その時、ドアを叩く音がした。
「ごめんくださ〜い。」
ドアを開けて入って来たのはエルザだった。彼女はクロエににっこり微笑む。
「おじゃまします。」
「外出しても、平気なのか?」
「はい。今日はとても体調が良いんです。
それより、街の入口の方が騒がしかったんですけど、皆さんご存知ですか?人だかりが出来てましたよ。それに誰かの叫ぶ声が…。」
エルザが不思議そうに言うのを聞いて、ウィルとジェイは顔を見合わせた。
「様子を見に行きますか。」
「ああ、放っておくわけにはいかない。」
そして私達は、パーティーを途中で切り上げ、街の入口へ向かう事となった。
**************
ノーマ編の始まり始まり〜☆
の割にはノーマが一言しか喋ってないなぁ。
2006/12/16
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