「エバーライトは、ひとつの国を救うようなちっぽけなものじゃない…そんなんじゃなくてな…」

「何ですの?」

「そんなんじゃんくてな〜!」

「スヴェン!!もったいぶらないで下さいまし。」

「下さいまし〜!」

「スヴェン!」

「だははははは!!

はは…王女も元気になって良かったな。」

「……まぁ、スヴェンったら。

…ありがとうございます。」

「どういたしましてだ!

……うちの弟子にも王女の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいな。」

「そうなのですか?」

「ああ。聞かせてやろうか、バカ弟子の話。」

「ふふ…お願いします!!」




























ノーマを見ていると、昔クルザンドにスヴェンが来た時の事を思い出すわ。
彼は、姿を消したヴァーツラフ兄様を探して街中を彷徨う私を見つけて声を掛けてきたんだったわ。





あの時の私はサジェの死から立ち直ったばかりで、心が崩れやすくなっていた。

兄様が私の目の前から姿を消してしまったと分かった時、心がまた深い闇の底に戻っていくのを感じたの。
クルザンドの街をいくら探してもヴァーツラフ兄様はいなくて、兄様の軍の者誰一人いなくて、行き先はわかっているのに追ってもいけなくて……
結局何も出来ない自分に絶望していたのね。
































「に……さま…」

「?」

「どこに……」

「おい。」

「…私を置いて……どこに…」

「おい、あんた!!」

















彼はふらふらと彷徨う私の異変に気付いたのか、急に腕を掴んできた。
その時の私はおかしかったから腕を掴まれたことも気にせず、ただ兄様の姿を探して目を走らせていた。


















「ちょっと、あんたどうしたんだよ?」

「にいさま…」















掴まれている腕を無造作に振り彼の手を解こうとする私の顎を、もう一方の手で掴み自分の方に寄せる。
私の瞳にはスヴェンの満面の笑みが溢れ、張り詰めた心を溶かす。

















「助けて……兄様がいないの。」

「へ…?」

「お願い、助けて。」

「…わかったから。

あんた休んだほうがいいよ。」

「……」

「あ、おい!!」



















私はそのまま彼の腕の中で気を失った。
無理も無いわ。何日も寝ないで兄様を探していたのだもの。

城中の人が私を探し回るくらい。

連れ戻されても私は城を抜け出した。
何度も何度も抜け出して、一心不乱にヴァーツラフ兄様を探したの。




















「ん………?」

「お、気付いたか。」

「あれ…私、どうしたのでしょうか。あなたは?」

「俺はスヴェン。夢を追い求めるトレジャーハンターさ!」

「トレジャーハンター?」

「おう!あんたは?」

「私…?あ、私は、クルザンド王統国第一王女・ボラドと申します。」

「うえぇ!?この国の王女だって!?

……よく見れば、確かに見えなくもないかもしれないな。」


















彼は私が王女だという事にさほど驚く様子も無く、私を助けた経緯や何日も眠っていた様子など話してくれた。
彼曰く、三日も眠っていた私をずっと看病していてくれたみたい。

喋り方はおどけているのに、根はしっかりとした紳士なのだわ…というのが最初の感想だったわね。


















「そうだったのですか…、ご迷惑をお掛け致しました。」

「いんや、迷惑だなんて全然ないない。

そう言えば、城に連絡しなくていいのか?最近いやに役人が出回ってると思ったけど、あんたのせいだったみたいだな。」

「ふふ、そうですわね。皆、心配していることでしょう。

……?」

「どうした?」

「しっ…静かに……

…あっ…」

「?」

















その時、廊下から微かな音が聞こえたのよね。それは金属が擦れる音。

大変!と思った時にはもう遅かったの。





























まさか、あんなことになるとは思わなかったけれども……。



































「…ふふ。」

ちゃん、何笑ってんの?」

「え?…ふふ。」

「気持ち悪いですね。」



























思い出し笑いをする私を見て、横を歩いていたノーマとジェイが訝しむ。
彼等はじっと私の顔を見ると、この笑いを止める術がないと見限ったのか、二人で顔を見合わせて溜め息をついた。

























「ふふ、どうしたの二人とも?」

「こっちが聞きたいですよ。」

「っんと!ジェージェーが言ったみたいに気持ち悪いよ、ちゃん。」

「まあ、失礼ね。ふふ…」

「…駄目ですね。」

「そだね〜。」
























二人は呆れ顔で私を眺める。でもそんなことでは私の笑いは止まらなかったの。

そのくらい、ノーマのお師匠様…スヴェンは可笑しくて楽しい方だったの。

思い出し笑いをしてしまうくらいね。






































「おーいノーマ!着いたぞー」























奥からセネルの声が聞こえる。彼はこっちに手を振ると、遺跡最奥の広場を指差した。ノーマはそれに手を振り返すと、足早に向かっていく。私とジェイもノーマの後に着いてその場へと歩いた。






















「グリューネがいた場所ね。」

「すやすやと寝とったの。」

「あらぁ、そうだったかしらぁ。ちゃんとモーゼスちゃん、よく覚えてるわねぇ。」

「姉さん、もう忘れたんか。」

「そうみたいねぇ。」

「難儀な頭じゃのう。」

「僕から見れば、モーゼスさんの頭も難儀ですけどね。」

「なんじゃと!?ジェー坊、もう一度言うてみ!」






















横での小さな喧嘩を聞きながら、私はノーマの真剣な顔を見つめた。
彼女は広場のあちこちを探りながらトプがないか慎重に動いている。
























「真剣だな。」

「クロエ…。」























そんなノーマを見ながら、クロエが話し掛けて来た。彼女は微笑ましいという顔付きで、ノーマの後ろ姿を見つめていた。






















「あんなに真剣にされると、こっちも最後まで付き合ってやりたくなるな。」

「本当、クロエの言う通りだわ。」

もか。」

「俺もだ。」

「ウィル…」
「レイナード…」
























今度はウィルが声を掛けて来た。
彼もまた、ノーマを微笑ましく見守っている。






















「ノーマがあんなに真剣ならば、俺達も真剣に手伝ってやらないとな。」

「ええ。」
「そうだな。」





















私達はお互い目を細めると、再びノーマを見た。




















「おーい、見つかりそうか?」

「うーん…。」

「ノーマさん、何か手伝うことはないですか?」

「う〜。」






















セネルとシャーリィが代わる代わる声を掛けると、ノーマの声が重くなっていく。
そのうち彼女はこちらに向かって来ると皆の前でピタと足を止め



















「ごめ〜ん、ここじゃないや〜。」

















と、ぺろと舌を出したおどけ顔で言った。



















「ふざけるな!」

















セネルがノーマに食って掛かる。それをシャーリィが止めると、彼女はノーマに向き直った。



















「本当にないんですか?」

「うん!……」

「ノーマさん、どうかしたんですか?」

「…よーし、次は頑張るぞ!」

「…次があるのか?」

「当たり前でしょ!」

「はぁ……。」














セネルの溜め息を聞いてクロエとウィルは笑った。
でもね、私はセネルの溜め息より何よりも、ノーマの辺りで蠢く黒い霧のようなものが気になってしょうがないの。




















これってもしかして……

ううん、ノーマに限ってそんなこと…。

でも……





















スヴェン、あなたの大切な弟子は大丈夫…よね…?



















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魔物はしょりました(笑)
必要ないしね^^

ヒロインとスヴェンの出会いが明らかに…!!!


2007/01/06













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