「う〜ん。この部屋、妖しいわね。」




















ある程度進んだ所で、立ち止まったノーマが呟く。
私達はノーマの言葉に慎重になると、辺りを見回した。


















「特に、変わったところは見当たりませんけど?」
















ジェイの言葉に皆が頷く。
彼が言った通りこの部屋には何もない…様な気がするの。
でもノーマが何かあるって言っているし、本当は何かあるのかもしれない。


















「こ〜れだから素人はだめなのよ。」

















ノーマはそう言ってそこら中の壁を叩き出した。
何かあるかもしれない壁を、そんなにドンドン叩いて大丈夫なのかしら。

私が心配になって見つめていると、ジェイが流し目で「大丈夫ですよ」と言ってくれた。




















「ふむふむ、なるほどね〜。ふんっ!」

















ノーマはある一点の場所の壁を蹴る。
すると、

























カチ






















人食い遺跡の時と同じように何かの音が鳴る。
皆で一斉にモーゼスを見た途端……





















「うぎゃ〜っ!!」




















モーゼスの下から氷の刃が出てきた。
その刃はそのまま、逃げようとしたモーゼスのお尻を捕らえる。




















「ケツに刺さった……ド畜生……。」

「アレ?おっかしいな。隠し部屋への通路が、出てくるはずなのに。」



















ノーマは不思議そうにモーゼスを見ている。そして彼女が私達の方に来ようとして足を踏み出したその時、

































カチ





























またスイッチが入った音がした。





















「ウヒョォォォッ」



















そしてまたモーゼスが犠牲になる。
何だか、モーゼスって不幸な星の下に生まれたのではないかと思うほど…








可哀相。






















「この部屋全体がトプの起動スイッチになったようですね。」




















ジェイが爽やかな笑顔を皆に向けた。
もしかしたらジェイは最初からわかってたのでは…。

私が疑いの目を向けると、ジェイは私にウィンクをした。
白い肌に目立つ睫毛が上下に揺れた。口元は微かに緩んでいる。














もう、またモーゼスで遊んでいるのかしら。
























「モーゼスさん、起きてください。囮がいないと実験が出来ません」

「ワレのう!」

「僕達が駆け抜けますから、あなたは囮に…」

「嫌じゃ!!!」





















モーゼスはそう言うと、この部屋のドアまで一気に駆けた。
でも、トプは発動しない。





















「どうやら、品切れみたいですね。良かったですね、さん」

「まぁ、ジェイったら。」



















彼はニヤリと笑うと、モーゼスの後について歩いていった。














































最奥に到着すると、待っていましたかのように黒い霧の魔物が構えていた。























「ここにも黒い霧の魔物が!?」

「何だってこんなとこにいんのよ!あたしの邪魔をするな〜〜〜!!」




















クロエとノーマはそれぞれ剣とストローを構える。
私も背から弓を外すと、矢を番えて構えた。



















「あの霧……わたくし、知っているような。」





















その時、後ろからグリューネの声が聞こえた。
何か思い出せそうなのかもしれない。





















「何か思い出したんですか?」

「う〜ん、なんだったかしら?前にも見たような気がするのよねぇ。」


















あの霧を知っているということは、やっぱりグリューネはあの女性と関係がある…深い関係が。

私は彼女の呟きに耳を傾けた。


















、気を抜くんじゃない。」

「……あっ、ごめんなさいウィル。」

「いくぞ!」

「はい」
















私は駆り出されると、魔物に向かって矢を放った。






















































「片付いたか。」
















何とか魔物を倒したけれど、私達はかなりてこずってしまった。


セネルのおでこには擦り傷が出来、シャーリィが必死にキュアで治している。そしてクロエの剣が少し刃毀れを起して一部使い物にならなくなってしまった。グリューネは何かを思い出そうと必死だし…。


もう…本当に大変だった。



















「さ〜て、エバーライトはどっこかなぁ。」


















一人傷を負う事も無く、後ろでリザレクションを唱えていたノーマは、周りの状況を気にせずにエバーライトを探し始めた。




















「むむっ、ここ、何かある……。」


















しばらく経つと、ノーマはある場所で腰を下ろした。
真剣な手つきで何かを探っている。



















「下手に手を出すな。」

















ウィルの注意に耳を貸さず、ノーマは床を探っている。



















「素人じゃないんだから、安心しなさいってば。ウィルっちってば、しんぱいしょ〜。」

「心配にもなりますよね?」

「今度しくじったら容赦せんぞ!ワイのケツも、ええ加減限界じゃ。」


















皆の心配を余所に、ノーマは奥へ奥へと進んでいく。














…何か、見落としている気がする。












私の胸にチクリと刺さるものがあった。
それは心臓の鼓動を早め、何かの危険を察知した感覚。













…私にはトプなんてもの分からないけれど…



















「なるほどね〜。

これがこっちで、それが、こう。

ってことは、ここに……あった!」


















私が考え込んでいるうちにノーマは何かを見つけたようだった。
それをしきりに触ると、危険が無いか確かめている。












……それは、ダメだわ。











私の中の何かが危険信号を出す。
何かわからないけれど、ノーマの触っているものは絶対危険なもの。


















「ここを押せば……。」

「ノーマ、慎重にな。」

「あたしが失敗するわけないじゃん!

みんな、用意はいい?いっくよ〜!」
















あっ…
押してしまう!!!















「駄目!!ノーマ、押しては…」
「えいっ!」


















私の叫びと同時に、ノーマの指はそれを勢い良く押してしまった。




















シュウウンン…


















機械音が響く。
何かとてつもなく嫌な予感が過ぎった後、セネルが伏せろと叫んだ。





そこからは時間があまりにもゆっくり流れた気がする。
全てがスローモーションの様に見え、私は息を飲んだ。

































ノーマが……


ノーマが、


氷の刃に……

































「シャボン娘!くっ、なんちゅう傷じゃ……。」

「早く回復を!」

















慌てて駆け寄り、回復爪術をかけるシャーリィとウィル。
外見の傷は素早く治ったけれど、ノーマの顔色は悪いまま…















これは…


「毒に侵されているわ。」















皆が一斉に私の顔を見る。
期待を込めた表情。でも、私は今この毒の解毒剤を持っていない。



















「はぁはぁ……うっ…」

「これは、かなり毒性が強いの。ここでは治せないし、ウィルやシャーリィの爪術でも治せないわ。」

「急いで街に戻ろう。」

「ええ!」
















私達は魔物の襲撃を避けながら、ノーマを守るようにウェルテスの街へと戻った。








街の中に入ると、もう既に日は落ちて暗く、夜の闇に包まれていた。
灯台元の電灯が明るく私達を照らしてくれている。


ノーマは苦しそうにギートの上ではぁはぁ言っていて、私達は慌てながらノーマをどこに寝かせるか考えていた。




















「ノーマは宿屋の彼女のベッドに運んで。私は病院で解毒剤を調合してくるから!」

「俺も行く!」


















セネルが私に着いて来ると言った。私は無言で頷くと、その場を後にしようとした。
その時、前方からスティングル…いえ、オルコットが歩いてくるのが見える。



















「オルコット殿!」


















私達を見送ろうとしていたクロエが、彼の元に走っていった。


















と一緒にノーマを助けてくれ!」

「どうしたんだ、そんなに慌てて…。

…!!…これは酷い。」
















オルコット殿はノーマの具合を見ると、私を見つめた。




















「さぁ、行こう。」

「ええ。」
















私とオルコット殿とセネルは、足早に病院へ向かった。















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ノーマが危篤状態に!!!
元気なノーマがいなくなると、とっても淋しい気持ちになります。


2007/04/08









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