「スヴェンはエバーライトについて、ある一つの答えを出しておった……
水晶の森にあるだろうと、あやつは踏んでいたのじゃ。
ノーマはおそらくそこじゃろう。
頼んだぞ……」
きっと……いえ、
絶対、
一番ノーマを手伝いに行きたかったのはザマランさんだと思うの。
歯痒い顔をして、私達に言った「頼む」という言葉。
その言葉にどれ程重い思いが含まれているか、誰もがひしひしと感じていると思う。
私達は必ずノーマを助けてエバーライトを見つけなければ…、ザマランさんに見せる顔がない。
そして、ノーマの願いを……
*
「よく、わからないわ。」
「何がじゃ?」
私の独り言にモーゼスが問い返してきた。
私達は戦闘中だというのにも関わらず、お互い魔物に攻撃しながら喋り始めた。
「ノーマが私にああ言ったこと」
「ああ言ったってなんじゃ?」
モーゼスは私の言っていることがわからないのか、聞き返してきた。
でも…
「!モーゼス!戦闘時は集中しろ!!!」
ウィルに怒鳴られてしまう。
結構遠方に居たのによく見ているわね。
私達は無言になると、集中して戦った。
「で、さっきのは何だったんじゃ?」
戦闘が終わると、モーゼスは再び聞いて来た。
私は頷くと、さっきの意味を話す。
「ノーマがスヴェンについて、私に話してほしくないってこと」
「ああ、シャボン娘の捨て台詞じゃな…」
モーゼスは腕を組んで、ふむふむと頷いた。
「ちょっと待って下さい。聞きたかったんですけど…」
その時、私とモーゼスの会話にジェイが入って来た。
周囲を見ると彼だけではなく、他の皆も私とモーゼスを見ている。
「何かしら…?」
「さんって、ノーマさんのお師匠さんと知り合いなんですか?」
そういえば、皆には言ってなかったわ。
クルザンドに彼が来て、私に夢と希望を教えてくれたなんて…。
私はクルザンドでの出来事を軽く皆に話した。
すると、皆が皆驚く。
「ノーマのお師匠さんは凄い人だったんだな。クルザンドまで行くとは」
「ええ…」
「お師匠さんを追い掛けたくなる気持ち、わかるな」
「そうでしょう!!」
思わず私は嬉しくなってしまって大声を出した。すると、皆がじろりと見る。
「なんでが喜ぶんだよ…」
「あら、だってスヴェンは素敵な方なのよ。
型破りのね。」
「ふーん…。」
じとりと感じられる視線が痛い。
そのうち、セネルが気付いたように言った。
「もしかして…ノーマがに言ってた意味ってこれか…?」
「そうかもしれませんね。」
「?」
「わかっていないのは当人だけですか。」
ジェイはくすりと笑うと、私に言う。
「あなたは隙の多い女性ですからね」
「もう…なんだって言うの?」
私はぷりぷりすると、皆を置いて歩を進めた。
キラキラ光る水晶がちりばめられたこの遺跡は、透き通った空気が漂う神聖な空間だった。
一歩踏み出す明日の靴底はガラスのような石に吸い付き、次を踏み出す度に離すのが勿体ないとさえ覚える。
天井から所々漏れる太陽の光が、そこら中の水晶を七色に様変わりさせ、この空間を現実的(リアル)から幻想的(ファンタジー)へと誘っていた。
こんなところならエバーライトがあってもおかしくない。
私もそう思うわ、スヴェン、ノーマ。
私は一つの水晶にさらりと触れた。
すると水晶は溶け去り、新たな水晶が現れる。
「まあ、…すごい」
感嘆していると、ウィルが後ろから歩み寄って来て私の行動を見つめた。
「ここの水晶が盗られずに素晴らしい空間を作り出している答えだ」
「…ああ、それでなのね」
ウィルが説明するには、ここの水晶は触ると溶けて跡形もなくなるそう。
そうしてすぐに次が生えてくるから水晶はなくなることはなく、この美しさは保たれるわけ。
ここの水晶は宝石ではなく、生き物なのね。
本当の、水晶の森なのだわ。
「どうじゃ?シャボン娘はここを通ったか?」
「クウン…」
「まだ、先のようじゃのう。」
モーゼスがギートに匂いを確かめさせている。
ノーマがここを通ったのはたぶんそう。
彼女はきっと、ここにいる。
殆ど時間に差がないというのにも関わらず、ノーマはあんな毒を持っていながらよくこんなに進めたこと。
…もう、薬も切れている頃でしょうし、早く見つけなければ。
「毒の特性を教えておくべきでしたね。」
「あらぁ、教えたとしても、結果は同じだったのではないかしらぁ…」
「グリューネさんの言うとおりですね。」
「……シャーリィ…」
私達は頷き合うと、全速力で森の奥に向かっていった。
「おかしい、ここまで来たのにノーマの姿が見えない。」
結構奥まで来たというのに、一向にノーマの姿は見えなかった。
ギートにすれば、匂いを辿ってきているので絶対通ったのだろうけれど、ここまで来ていないのはどうもおかしかった。
その時、道の外れたところでギートが吼えた。
水晶に木霊するその声は、勇ましくそして優しい。
ギートもノーマを心配しているのが手に取るようにわかった。
私達がそこに近寄ると、水晶の割れ目にノーマの黄色い服が破れて引っかかっているのを見つける。
それを手に取ると、まだほんの少し温かい気がした。
「今さっき通ったみたい。」
「そうか。……みんな、行くぞ。」
セネルは私の言葉に頷くと、一番最初に割れ目に入っていった。
ジェイに支えてもらいながら入り込んだその先は、明るい道が続いていた。
今まで通ってきた水晶たちとは違う緑色の水晶に囲まれて、一層幻想的に見えた。
誰が通るかわからないようなこの道を照らす光が煌々としている。
それは電灯や炎とは違った灯りで、見たことのない永遠の光に感じられた。
細く続いた道の先の円形の部屋に、見慣れた黄色い服が見える。
早まる心を抑えながら慎重に歩いていくと、そこにはノーマが倒れていた。
「ノーマ!!!」
ギートが心配そうに顔を覗く。
すると目を丸くして困ったようにこちらを見た。
「?」
近寄ってみると、何とノーマは寝ているじゃない。
ウィルが怒ったように額を叩く。
「いだいいだい、おでこ叩かないで叩かないで。
すか〜」
「……」
『起きろ!』
寝ぼけた事を言っているノーマの耳に、ウィルとセネルとクロエが近づいて、大声で怒鳴る。
するとノーマは目を擦りながらむくりと起き上がった。
「あ、みんなおはよ。
ってか、体だる!だるすぎる!」
クロエは青い顔をしたノーマのために薬を出すと、顎を掴んで一気に飲ませた。
「ニガっ…苦っ!まずっ!!」
文句を言いながら飲み干すと、ノーマはぐいっと背伸びをした。
頬に赤みも差してきたし、もう大丈夫そうね。
「良かった……」
小さく呟くと、ノーマは私を見た。
そして
「あ〜ちゃんがいる〜〜…」
と言うと、少し嫌そうな顔をした。
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もうそろそろ終わりだ…。
2007/04/30
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