私はノーマの元に戻ると、彼女と一緒に黒い霧のノーマを見つめた。
二人目のノーマは、悲しそうな顔でノーマを見つめている。






























「な、何見てんのよ!」



























黒い霧を噴出させているノーマは言った。
でももう一人のノーマは何を言うことなくただ見つめているだけ。






























「うっ……。何だろ、コレ。すごくイヤな気分になってきた……。何かな、これ……。」


























ノーマは口を押さえると、吐き気をもよおしたのかうえぇ、と苦しそうな声を漏らす。
私はゆっくりと彼女の背中を撫で、どうにか苦しさを抑えようともがいた。






























「……これは………不安?」





























ノーマから多くの黒い霧が噴出される。
手で払っても払っても黒い霧は濃くなっていくばかりで、私達はもう既に体の半分ほど飲み込まれていた。






























ちゃんも、逃げていいよ…」


























ノーマが力なく呟いた。
本当はそんなこと思ってもいないくせに、強がりを言ってしまって…






























「私は絶対に離れません。」





























私がそう言うと嬉しそうに頷いて……
この子はどこまで自分一人で頑張るつもりなのだろう。













このままでは、あの闇の女性の思うがままになってしまう。


ノーマが、一番最初の犠牲者になってしまう…!!!

































「ノーマちゃん、自分を強く持ってね。

何のためにここに来たのか、忘れてしまわないでね。」


































その時、グリューネの滑らかな声が水晶の中で響く。
彼女の声は優しく、私たちの体中を響かせるには充分のビブラートだった。































「霧が出てんのって、あたしのせい…?」

「ノーマちゃん、自分の気持ちをきちんと抱きしめてあげて。

大切な自分の気持ちを、ノーマちゃんが理解してあげなくちゃ。」


































「あたしの気持ち……。あたしが理解してあげなくちゃ、か……。」
































グリューネの言葉に反応するように、黒い霧はどんどんと薄くなっていった。私達の体が元に戻ってくると、目の前で強張っていたセネルの顔が和らいだ。

































「そうだ。」






























彼は言った。
隣でシャーリィが自らの手を握り締めてノーマに問いかける。






























「見つけるんですよね?エバーライトを、ノーマさんの夢を。」

「重ねてきた努力は、お前を裏切ったりはしない。」





























ウィルも、父親らしい優しさで言う。






























「ザマランさんが言ってた。

危険を恐れていては、真実に近づくことは出来ないって。」































セネルが言った言葉にノーマはハッとすると、小さく溜め息を漏らした。


































「それ、ししょーにもよく聞かされた。元々、ジジイの言葉だったんだ。」






























少し笑い顔になると、頷く。































「自分が信じたままにやればいい。」

「何かあれば、私達がノーマをフォローする。」

「ほうじゃ、な〜んもびびるこたあない。だめじゃったら、また探しゃええ。」

「私もお手伝いしますから。」

「とか言いつつ、あたしから距離を取ってるのが、すんご〜く、気になるんだけど……。

やっぱちゃんだけだよ、あたしに本当に優しいのは。」

「さっきまで嫌っちょったのに、虫のええやつじゃのう。」

「うるさい!!」

































ノーマはとびっきりの笑顔を向ける。
それに嬉しくなると、私も笑顔を向けた。
































「ま、気持ちだけは受け取るよ。

だめでもまたやればいいんだよね。…うん、そうだよね!」































ノーマは私を離すと、そのまま手を握る。
そして祈る様に自分の姿をした黒い霧と向き直った。

















辺りが暗くなる。




これはノーマと黒い霧……ううん、ノーマの心と心の対話だ。


風も無く、何も無く。


彼女の夢との対話なのだわ。
































「誰のためでもない、あたしが探したいから、エバーライトを探してるんだ。

いつのまにか、夢を追いかける楽しみをを忘れてた。」


































ノーマは私の手をぎゅっと握ると、過去の声を、スヴェンの声を思い出す。
































「……ししょー、力をかしてね!」


































彼女は私の見せた力を求めているのだわ。

私はその思いを汲み取ると、彼女にスヴェンの姿を映し出す。


































『答えは簡単だ。


















実に簡単な答えだ。

















エバーライトがあると信じているから。















誰に何を言われても、俺はエバーライトを探し続ける。















それが俺の夢だからな!』








































ノーマの見せるスヴェンの姿は、私の記憶の彼よりも鮮明で、きらきら輝いている。
羨ましいくらいに明るくて、素晴らしいお師匠様。


































「あたしも夢、見つけたんだよ!

だからあたし、もう迷わない!










ししょー、あたし、もう迷わないよ。知ることを恐れたりはしない!

自分を信じて生きていく!」



































その決意に黒い霧は消え、ノーマの体に融合されていく。
ノーマの体は輝き、その私だけに見えるだろう彼女の持つ玉は破裂しそうなくらい光を吸い込んだ。







































ノーマはそのまま古刻語の炎に飛び込んだ。
彼女が飛び込んだと同時に私達のいる部屋が変わる。



殆ど変わらない水晶の部屋には、再び古刻語の浮かんだ炎があった。




































「消滅、罠、冥界……誕生、殺戮……か。」



































答えは明らか。
私にだって分かる。

































「このぐらい、わかって当然だよね、ししょー?」

































ノーマは呟くと、『誕生』の炎に向かっていった。












































私も、その夢に置いていかれないように、彼女を追っていく。



エバーライトを、



ノーマとスヴェンの夢を求めて。




































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ノーマと、スヴェンと同じ夢を求めて、

高まる気持ち、

くすぐられる探究心。


2007/05/04














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