「これが、エバーライト……

……ほんとに、ほんとにあったんだ。」
































私達が進んだ先にあったものは、水晶に囲まれた部屋に大きな塊が浮かんでいるようなところ。
その先っぽには小さな雫が溜まり、微量の光を発していた。







恐る恐る近寄ってみると、その雫は静かに震えた。
私達の足音だけで、床に落ちてしまいそう。








でも、一番不思議に思ったのはこの部屋に溢れている力。




これは、まさか……。


































「…とても強い力を感じる。

確か、前にもどこかで……。」


































クロエの呟きに確信を持つ。
やっぱり、そうなのだわ。




































「これは、滄我と同じものです。」



































シャーリィが呟く。



ああ、やっぱりそうなのね。


































「エバーライトの正体は、滄我だったんですか?」






























珍しくジェイの声が裏返る。
相当驚いたみたいね。



…ふふ、確かに。ジェイみたいな現実主義者さんには、エバーライトが存在していただけでも驚きなのに、それが滄我だったなんてね。



































「長い時間をかけて、結晶化したのかもしれんな。」

「とぉ〜っても素敵ねぇ。」



































私達はしばらくエバーライトに見入ってしまった。






その何年も…何十年、何百年もの時間をかけて結晶化した神秘的な祈りの石。
このようなものを見る機会はもう一生ないかもしれない。





その時、セネルがエバーライトの向こうのあるものに気付いた。





































「ノーマ、正面の壁を見てみろ!」

「どったの?興奮して。」

































ノーマは言われるがままに壁を見た。
そして驚愕を浮かべる。



私もそれが気になり、何か見ようと顔を動かす。

































「あっ……」































それは…、それはスヴェンの文字。
くにゃりと曲がった特徴のある文字で、一度見たら忘れられない。
































「うそ……これ、これって……。」



































ノーマは丁寧にその文字を指先でなぞる。
その指が震えていて、ノーマの信じられない、という気持ちが伝わってきた。




それと同時に、この部屋に広がる熱き思いが私の体の中に入ってくる。









これも…忘れはしないスヴェンの心。









スヴェンの夢を目指す熱き心。






































『や〜っぱ、王女も来ちゃったかぁ。

ノーマだけだと思ってたんだけどなぁ…』





































紛れも無くスヴェンの声で、それは私の頭に響いている。



































王女には敵わないってな。

あ、ノーマだけだぞ?王女より俺のがすごい。』




































スヴェンは楽しそうにそう言うと、私の頭をぽんぽんと叩いた。




































 …わかっていますわ、そんなことくらい。

  貴方は素晴らしき方ですとも。




『おっ、俺に惚れたか〜?』




 …まあ!そんなことになったら、ノーマに怒られてしまいますわ。




『ノーマがか?だはははははははっ!!!』





 …もう、スヴェンたら…

  ノーマには、話し掛けられないんですの?





『…わかってるくせにさ。俺は、王女に話しにきたわけ。

ノーマにはな〜んも話はない。』





 …嘘つきですね。




『ほんとだっつ〜の。ほら、今から俺の超感動的シーンが見られるからさ。

王女も泣いてくれって。』





 …ふふ、わかりましたわ。






































スヴェンの気配が消えると、私はノーマを見つめた。
ノーマは壁の文字を見た後、床の文字を覗き込んでいる。




































「ししょー、あたし、ちゃんと読めるよ?

いっぱい勉強したから、ししょーの気持ち、読めるよ……。

ししょーに追いつきたくて、いっぱい勉強したから……。ぜんぶ…ちゃんと、自分で読めるよ…。

ぐすっ…。」




































ノーマはほろりと涙を流したかと思うと、両手で顔を覆って泣き出した。
ぽたぽた落ちる涙は止まることなく、床の古刻語を満たす。




シャーリィがゆっくりと近寄って、ノーマの背中を支えながら文字を見つめた。
彼女の青い瞳にも、涙が溜まりだす。




































「あたし、ちゃんとここまで来たよ。ししょーと同じとこまで来たよ。」

































ノーマは目でスヴェンの古刻語を追った。
真剣に、一文字も漏らすことなくことなく見つめている。



































「なんて書いてあるんだ?」



































セネルの問いに、シャーリィがノーマに了解を取る。
ノーマは何度も頷くと、そのまま床に泣き崩れた。











































「…私の愛する教え子よ。

いつの日か、この地にて、再会することを約束しよう。

私は、この地にて、約束が果たされるときを永遠に待ち望む。」





































シャーリィの言葉が皆の胸に響く。
その後に、スヴェンの独り言が、私の頭に響いた。




































『あ〜、やめやめ!自分で書いてて気持ち悪い!

やっぱり、自分らしくいかないとな!』







































「ノーマが俺を信じてくれたから、俺はエバーライトを見つけられた。」





































『今までだまってたけど、お前にはずっと励まされていたんだ。おかしなやつと言われ、まわりの連中からバカにされても、ノーマだけは俺の話を聞いてくれた。

一緒になって騒いで、ときにはバカをやって、悩む暇もないほど笑ったろ?

そんな時間が俺にとって、どれだけ救いになっていたか。

面と向かって言うのは、ち〜とばかし恥ずかしいからさ。

こんな形で許してくれな。』












































「そう遠くない未来に、お前がこの地を訪れる事を、心の底から祈ってる。信じてる。

だからお前に、この言葉を残そう。








































ありがとう、ノーマ。



本当に、ありがとう。




























それから……






























よく頑張ったな。



本当に、よく頑張ったな。







































ノーマは最高だよ!




最高の教え子だよ!




































顔を上げろ!ノーマ!

































胸をはれ!ノーマ!





































明日を見ろ!ノーマ!



































その先に、無限の未来が待っている!




















































……
















ノーマ・ビアッティへ、

スヴェンより、夢とロマンを込めて。」







































シャーリィの言葉が終わると、皆がはっと息を飲んだ。
そして穏やかな顔でノーマを見つめる。

きっと、なんだか羨ましいような気持ちに包まれているのではないかと思う。

師匠なんて存在、滅多にないでしょう?
それも、スヴェンとノーマみたいな関係なんて……

































「ししょー見つけてたんだ。

…エバーライト、見つけてたんだ。」

「目標を成し遂げてこの世を去ったわけか。

ならば、思い残すことはなかっただろう。」

「エバーライトを見つけられなくても、ししょーは悔いを残して死ぬようなそんなやわな生き方はしてなかった。

今を全力で生きてる人だった。」

「男の中の男じゃのう。」


































モーゼスの関心を背に、ノーマはエバーライトの前に立って鼻を啜った。
そしてニヤリと笑うと、今まで泣いていたのが嘘のように元気になる。


































「あ〜、すっきりした!」

「も、もう大丈夫なのか?」

「まだ、やることがあるからね

ししょーがやろうとしたこと、あたしが叶えてあげるんだ。

それが、あたしの夢だから。

みんな、あと少しだけ付き合ってくれる?」





































皆が力強く頷く。
ノーマは私の腕を取ると、






ちゃんも、宜しくねっ!」





と言う。

私も頷くと、ノーマは照れ笑いをした。































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このスヴェンの感動話だけはどうしても変えられなかったです^^

スヴェンっていいこと言うなぁ…。
こんなお師匠さん欲しいなぁ、と思いながら書いちゃいました☆
次で最後です^^


2007/05/05