「どこまで連れて行くつもりじゃ?」

「黙ってついてくる!」

































私達は一度ウェルテスに戻ると、訝しむザマランさんを何とか説得して水晶の森に戻ってきた。
ノーマはグイグイとザマランさんを引っ張り、奥へと進んでいく。



もう待ちきれないという様子のノーマと、ゆるゆると歩いていくザマランさん。
その二人が噛み合っていなくて笑ってしまう。




































「あなたは変なところで笑う人ですね。」

「あら、そうかしら…ふふ。」

「ほら、今だって。」

「ジェイがおかしなことを言うからです。」

「……はぁ。」


































いつも通りにやってられないという表情のジェイは、肩をあげて溜め息をついた。
























段々と水晶の色も変わってきて、エバーライトの部屋に辿りついた。
やっぱりここは、スヴェンの熱き思いと…それに絡み合ったノーマの思いが犇いている。
そこにちょこんと、ザマランさんの隠された思いが乗っかった。












彼の、臆病な心。
そして、本当はあの二人に負けないくらい持っている探究心。










ザマランさんも、紛れも無くトレジャーハンターなんだわ。






































「あたしは気に入らないけど、これがししょーの望みだからね。」

「そろそろ説明してくれんか?」

「今にわかるわよ。」



































ノーマは優しく言うと、エバーライトに向き直った。
そして右手を突き出すと、祈るように目を瞑る。


































「お願い、あたしの願いをかなえて……。」



































その言葉に反応するようにエバーライトが光りだす。
淡い光がどんどんと強くなり、私たちを包み込む。



































「何じゃ……?

あたたかい光を感じる。」
































ノーマは光り輝くエバーライトを見逃さないように、ばっと目を開けた。
眩しいはずなのに、彼女の瞳はそれを映してやまない。

































「お願い、エバーライト!

あたしとししょーの願いを、かなえて!!!」

































ノーマは左手も突き出した。
そして再び祈るように目を瞑る。















エバーライトの伝説が本当でありますように、願いをかなえてくれますようにと信じながら。













エバーライトからあたたかな光が漏れ出してきた。


それは無数の光の玉となり、ノーマとザマランさんだけではなく私達へもポツポツと当たっていく。
当たった部分から体に溶け込み、偉大なるあたたかさを感じた。


















……ええ、これは滄我のあたたかさ。


…なんだか、幸せ。








































「こ…これは……」

































ザマランさんはゆっくりと瞳を開いていく。
その深い緑色の瞳には光が宿り、壁の文字を映している。





































『エバーライトはここにあり!!ザマミロ!師匠!!!』



































ザマランさんの口元に笑みが浮かぶ。
そして、


































「どーだ!!ザマミロ!」


































ピースしたノーマが、その瞳に映った。






































「どうよ?まいった?」

「……。」

「ししょーにしては、ちょっとかっこつけすぎだけどね。」

「あの……バカ弟子が……。」

































笑って話すノーマの前で、ザマランさんが顔を俯けた。
気持ちの高ぶりを抑えようと必死みたい。




































「バカすぎて、泣けてきちゃうでしょ?

けど、これがししょーの夢。ジジイの目を治したかったんだよ。」

「最後まで、バカをしおって……。」

「しょ〜がないよ。だって、ししょーだもん。

ししょーからバカを取ったら、な〜んにも残らないじゃん。」

「それもそうじゃな。」


































ザマランさんは顔を上げて、くっくっと笑った。
そして最初にノーマがそうしたように、愛おしそうにスヴェンの文字を撫でた。



































「どう?あたしの姿は?立派なもんでしょ?」

「ふんっ、予想通り、生意気そうじゃ。」


































胸を張るノーマに、ザマランさんはつんとして言った。
その顔が子供の意地悪みたいでとても可愛い。
ノーマもそれがわかっているのか、


































「ったく、かわいくないんだから。」


































と言って笑った。

























その時、部屋に地震が起こった。

軽い地震であったけれども、エバーライトの結晶を破壊させるには充分だったみたい。










……ううん、もしかしたらエバーライト自身が起したものなのかも。






































「力を失って、崩れたのか。」

「……い〜んじゃない?探し出す事が目的なんだからさ。

また新しい夢を探せって、エバーライトが言ってるのかもね。」

「半人前のくせに、口だけは達者じゃな。」

「今日のあたしは気分がいいから、何言っても許したげる。」

「サルの分際で、偉そうに。」

「むき〜!なんだと〜!!」

































ノーマは今さっき言った言葉を無視して、ザマランさんに食って掛かる。

それを見て笑う仲間達の中に、別の声も混じっているのに気付く。





































 …ふふ、相変わらず豪快な笑い方ですこと。





『なんだと〜!』





 …ノーマも貴方も、変わらないですのね。





『こんなことで変わってたら、夢なんて追ってけないって!』





 …本当に、そうですわね。





『おっと、ノーマが話したいみたいだ。ひっこむわ。』




 …えっ?




































帰り道、ノーマはそろそろと私に近寄ってきて袖を掴んだ。
そして顔をじっと見つめたかと思うと、小声で




「ありがと。」



と言った。































「?何がですか?」

「全部!

ちゃんがあたしを見捨てなかったこととか!」

「……でも、結局はグリューネが…」

「違うの!あたしはちゃんが見捨てなかったことが嬉しかったんだよ。」



































ノーマは俯くと、ダンマリしてしまう。
私達はしばらく肩がぶつかり合うまで無言で歩いた。































「……ほんとはさ、エバーライトが少し残ったら、ちゃんのお願いを叶えてあげようと思ってたんだ。」

「えっ?」

「…色々と、酷い事言っちゃったし。

でも残んなかった。残ったのは色あせた欠片だけ…」

































そう言うと、ノーマは鞄から小さな石を出した。
それは灰色になってしまっていたけれど、エバーライトだったことはわかる。





































「あら、持って帰ってきたの?」

「うん。まぁね。」





































ノーマはニヤリと笑うと、グイと背伸びをした。



爽やかな風は、私達に出来てしまった確執を拭い去るように吹いている。
ノーマと私の間の絆が、深まった気がした。









































『俺のお蔭だって。』









































胸をドンと打って言うスヴェンの声が聞こえる。
スヴェンらしい言葉ね。




私は良いことを思いつくと、ノーマの手を握った。






































「ノーマ、良いこと教えてあげる。」

「え〜なになに!?」

「うふふ……」




































不適に笑う私の頭の中で、スヴェンがはっと気付いたように喚く。






































『ちょっ……まさか、王女!?

やめ…あれだけは、やめ……』









































スヴェンの抗議を余所に、私は昔の記憶をノーマに映した。

























































「そうだったのですか…、ご迷惑をお掛け致しました。」


















これは、私とスヴェンが出会った時の記憶。

















「いんや、迷惑だなんて全然ないない。

そう言えば、城に連絡しなくていいのか?最近いやに役人が出回ってると思ったけど、あんたのせいだったみたいだな。」

「ふふ、そうですわね。皆、心配していることでしょう。

……?」

「どうした?」

「しっ…静かに……

…あっ…」

「?」





























バタアアアアァァァン!!!!
























凄い音を立てて入ってきた兵士達。
彼らは私を見つけると、保護するように周りを囲んだ。
そして、























「ん?王女を助けたお礼をくれんのか?」























同じようにスヴェンの周りも囲んだ。




スヴェンは余裕をかましているけれど、兵士達にそんな気配はない。
私が何か言う前に、彼らはスヴェンに飛び掛った。


























「ぎょえええぇぇぇぇ!なんでだぁ〜〜〜〜!?」

























スヴェンはそのまま、牢屋に入れられてしまった。














私が何度言い訳しても誰も聞いてくれなくて。
(きっと、頭が朦朧としていると思われていたのだわ。)


スヴェンもエバーライトの話しかしないからどんどん疑われていって、



彼についた罪状は



『王女誘拐未遂』



私が必死に抗議して、もうお城を抜け出さないと誓って、やっと出してもらったの。
























「まさか、助けたのに捕まるとはねぇ。」

「…も、申し訳ありません。」

























私は言う言葉がなかった。
本当に、そうなのだもの。





それから何週間か彼はエバーライトの研究のために滞在していたわ。

私のお客様として、充分にもてなして…

























王女には感謝してるよ。

いつもなら、変な奴、気持ち悪い、とか言われて、蔑まれて…」

「……ここではもっと酷かったのでは…?」

「あっ…あぁ、最初はね。

でも、たくさん研究出来たし、ここにエバーライトがないってこともわかった。

いつもそこまで行かずに追い出される(笑)

でもさ、いっちばんここに来て良かったのは、俺の弟子と同じように俺の夢を信じてくれる人に出会えたことだ!」

「スヴェン……」

「それに、その娘を助けて夢と希望を与えたわけじゃん?俺って凄いな!」

「もう、スヴェンたら…」

「だはははははははははは!!

じゃあな、ありがとう。王女。」



























スヴェンはそう言うと、振り返ることなくクルザンドを去っていった。


















































「……。」

「…。」

「……ぷっ…」

「ノーマ?」































ノーマはいきなりお腹を抱えて笑い出した。
それを見て私だけではなく、何が起こったか分からない他の皆も目を白黒させている。

































「おっかし!でも、ししょーならありえる。

ありえすぎ!!

『王女誘拐未遂』!?

笑える!かなり笑える!!!」





『……ノーマには知られたくなかったのにな…』



































彼女が大笑いする中、スヴェンは細々と呟いた。


































 …ノーマには知る権利がありますもの。





『俺は、こんな娘をつくっちゃったのか……

哀れ。

俺って哀れ。』






 …スヴェンたら。





































「教えてくれてありがと、ちゃん。

あたしの知らないとこのししょーも、あたしの知ってるししょーと同じだ。」



































ノーマは泣き笑いしながら言った。
私はくすりと笑うと、





































『そんなことで変わるんじゃ、夢なんて追ってけないって』
































と言った。
スヴェンの声色を真似して。






































「…そおだね。

うん。そだね!!

…自分らしくいつも夢に向かってけばいいんだよね!!

ありがと、ちゃん。

ありがと!!」

「ええ、ノーマ!」








































頭の中のスヴェンの気配が薄くなっていく。










































『楽しかったし、助かった。

ノーマを助けてくれてありがとう、王女。

そして、これからもノーマを宜しく!!』






 …ええ、スヴェン…。




































ふわりと去っていく彼の面影に寂しさを覚えながら、泣き笑いしているノーマを思い切り抱きしめた。
ざわわと舞う葉が空に上っていく。








そこから、


















『頑張れよ、世界を見守る者!』

















と聞こえた気がした。


































*******************

ノーマ編終了!
これもまたまた良い話を残しつつ、オリジナル溢れてしまいましたが、
いかがでしたでしょうか?

ヒロインとスヴェンの出会いに少し無理を感じつつ、
楽しくてついつい話を進めてしまう。
でも、ここまで書きおわって二人が会っててよかったなって思いました。

この後も頑張って書くぞー!!!

2007/05/05