チュンチュン…



































小鳥の声が聞こえる。
そして、窓から差し込む陽射しがとても暖かい。








布団をゆっくりと押し上げて背伸びをする。
布団の中で背伸びするなんて、なんて目覚めの良いことでしょう!








スリッパに足を乗せて窓に目を移す。
すると窓は全開しており、爽やかな風を部屋いっぱいに取り込んでいた。








































「ワルターだわね…」






































もう一つのベッドに寝ているはずの人は、この部屋のどこにも影形なく消えてしまっていた。





きっと、窓から出て行ったのだろう。
全開の窓がそれを物語っている。





私はちょうど良いところまで窓を閉めると、差し込む陽射しと風を大いに楽しんだ。
































今日はウィルに呼ばれているので、軽い支度をして家に向かう。
何が起こるかわからないから弓矢も持ってね。

























天気がいいので、街の人々はぼんやりと歩いていた。
私もぼんやり歩いていると、パン屋さんの前で人にぶつかってしまう。





































「あっ、ごめんなさい!」

「いえいえ、私こそ……

…あなたは…」

「!!」




































そのぶつかった人は…クロエを港まで迎えに行った時に会った男の人。

















あの…強引な…。



































私は後退ると弓を握りしめる。
そしていつでも矢を掛けられるように右手を後ろに置いた。









































「いやはや、血気盛んなお嬢さんだ。こんな街中で私が何をすると言うのか。」

「……」

「今日は助けてくれる騎士がいない代わりに、武器がある…。とても残念だ。

私はあなたに興味がある。あなたが欲しいのに。」

「……や…」





































言葉を聞いただけなのに気持ち悪いくなる。
どうしてか、体が動かない。


























誰か……










































「……。

今日は何もしませんよ。

また今度、お会いする日まで…」









































男は、具合の悪さだけ残して消え去った。

私は彼の気配を追うことも出来ないまま、ガクリと膝をついた。












































ちゃん!大丈夫!?」






































ガタガタと震える肩を落ち着かせようと両手で体を抱きしめていると、後ろから私を呼ぶ声がした。心配そうな声に誘われるように顔を上げる。










































「チャバ…」

「どうしたの?何かあった…?」






































チャバは腰をかがめると、私の顔を覗いて言った。
とても心配そうで、心配されてる私がどうしてそんな顔をしているのか聞きたくなってしまうくらいなの。









































「うん…大丈夫。少し立ちくらみしただけ。」

「そう?ならいいけど…立てる?」

「ええ…」









































チャバの手を借りて立ち上がると、体が少しフとした。








































「送っていこうか?」

「大丈夫よ、ウィルの家に行くだけだもの。」





































チャバは「そっか」と呟いてにっこり笑った。
でも、私はその顔に少し疲労が浮かんでいるのを見つけてしまう。

心配になると、思わず聞いてしまった。









































「チャバこそ、何かあったの?大丈夫?」

「えっ…」










































彼は驚くと、私の目をじっと見つめた。
信じられないような顔をして、微かに口を開く。




































「……あ………

…ううん、何でもない。

じゃ、おいらは行くね。ちゃんも気をつけて!」

「ええ、ありがとう。」








































明らかに何かあるみたいだけれど、チャバが隠したいことなのだから余程のことなのでしょう。
気付かないフリをして手を振ると、私はウィルの家に向かって歩き出した。









































ちゃん!」





































またもや後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。
警戒することもなく、安心して振り向ける仲間の声。






































「ノーマ!」





































走ってくるノーマを抱き留めると、後ろにいる皆を見た。








































「聞いてよちゃ〜ん、ジジイがさー!」







































ノーマはザマランさんの宿代を払わなければいけなくなった事を嬉しそうに話している。ついでに昔、スヴェンが5ガルドで宿屋を買い取ろうとしたことも。






































「…ね、ししょーっぽいでしょ?」

「ふふ、本当…」






































二人で話していると、ジェイがふと私を見た。









































さん、あなた…」






































訝し気な目をすると、私の額にひんやりした白い手を当てる。








































「熱でもあるんですか?暑くもないのに汗をかいてますよ。」

「あ…いえ、これはなんでも…」

「…そうですか。」








































彼はそう答えると、スタスタ前に歩いて行った。






































「…ジェイ…」









































彼は鋭いから、きっとわかってしまっただろう。
これが冷や汗だということを。


































            *












































「お前達を呼んだのは、水の民の里に一緒にいってもらうためだ。」

































ウィルは複雑な面持ちで私達を見回した。
きっと、私も含めて同じ表情をしているのだろう。









































「でも…あそこは…」

「…彼らは、人類に里を開放するとしたのだ。」








































皆は静かにウィルの話を聞くと、シャーリィを見た。




































「里にはテュっちんがいるし…」

「また酷いことを言われるかもしれない。」





































ノーマとクロエが心配そうに言った。しかしシャーリィは重く頷くと、







「私は大丈夫です。」





と力強く言う。



































「だから皆さん、私も外交官として一緒に水の民の里に行って欲しいんです。

お願いします!」





































彼女の必死な思いが響く。
ツンとくる胸の刺激を押さえ、私はシャーリィに称賛の眼差しを向けた。





シャーリィは、こんなにも自分の存在、役割を受け止めて頑張っている。
誰も手伝わないわけがない。






































「よぉし、頑張るぞぉ〜!」

「おぉ〜!」



































ノーマの掛け声にグリューネが続く。
他の皆は苦笑して、心の中で「おおー!」と言った。

































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ソロン様が!
大胆不敵な笑みが思い浮かばれます(笑)

2007/05/08