ザザン…







ザザン…














私がこんなに強くなったのは、一度に仲間達の御蔭だろう。

船も…なんとか大丈夫だしな。












「潮風が気持ち良い…」













両親の仇を探して、遺跡船まで来た。

そしてあの男と再び出会った。












……仇…か。












私はどこまでも続く海を見据え、溜息をつく。

こんな辛気臭い話はやめだ。











もっと、楽しいことを考えよう。

例えば、私に帰る場所があるということだ。





彼らは、無条件に私を迎えてくれる。













「遺跡船はまだか…。」











仲間達のことを思い出すと、遺跡船が恋しくてしょうがない。

私の帰る場所は、あそこなんだ。











…そしてあそこには、スティングルがいる。






…仇か。









同道巡りだな。


私は微かに笑うと、船の縁に肘をついた。












































「お美しい方、貴女も遺跡船にいかれるのですか?」

































その時、見知らぬ青年が話し掛けて来た。

歳は同じくらいだろうか。


青年は優雅な態度で私にお辞儀すると、にっこり笑った。
















その笑顔が、誰かに似ている。

しかし、誰だかは思い出せない。














「貴公も遺跡船にいかれるのだな。」

「ええ、そうです。とは言っても、この船に乗っている時点で遺跡船行きは確定でしたね。野暮な事をお聞きしてしまった。」












彼は笑うと、私の横に立つ。















「宜しければお名前を教えて頂けませんか?」

「私か?私はクロエ。クロエ・ヴァレンスだ。貴公は?」











目を細めて、彼はにっこり笑うと、















「俺は……」



















ザッパアアァァァァン
















彼が名乗ろうとした時、私達の後ろから突然クラーケンが現れた。

私は素早く彼の腕を掴み、縁から離れる。


















「クラーケンだ!!」

「位置につけーっ!乗客を避難させろーっ!!」

















船員達が武器を持って甲板に出て来た。
彼らはそれを構えて応戦する。

















「貴公も避難した方がいい。」

「しかし、クロエ殿は…」

「大丈夫だ。私も戦わなければ…」
















私が剣の柄に手を掛けてクラーケンに向かっていこうとすると、彼は私の手を掴んで笑う。

















「俺も手伝いましょう。」

「貴公がか!?」

「これでも、少しはお役に立てますよ。」
















彼はそう言って、ぶつぶつ詠唱し出す。



















「澄み渡る明光よ、罪深きものに壮麗たる裁きを降らせよ!!













レイ!!!!」

















ドゴオォンッ




















クラーケンの頭が黒焦げになる。























「貴公、爪術の使い手か!」

「ええ。うちの家系は皆そうなんですよ。さ、クロエ殿!」

「わかった!!」






















クラーケンは彼の尽力の御蔭で、被害も出ることなく倒された。










はっきり言って私はほとんど役に立たなかった。
やはり火が弱点な魔物だ、彼の爪術はとても効いた。















「貴公は剣を差しているからアーツ系かと思っていたが…、ブレス系だったんだな。」














彼は照れて頭を掻くと、















「そういうわけではないんですよ。」














と困った顔をした。

















「是非名前を伺いたい。」

「俺は…」

「君、素晴らしかったよ!!この船の救世主だ!」

「え?」

「ありがとう!!君のお蔭で助かった!」















その時、船員や客達が彼を取り囲んでクラーケンを倒した御礼などを言い出した。

彼は困り果てながらその御礼を丁寧に受け止めている。








これは名前を聞くのはまた後になってしまうな。

私はそんな姿を見ながら再び海を見た。

















「!」
















遠くに見えるあの島は遺跡船ではないか!!
私は思わず、
















「遺跡船だ!!!」















と叫んでしまう。
恥ずかしくなって周囲を見回すが、私の声よりも遺跡船が見えたことに乗客は感動していた。

あんな怖い思いをすれば当然か。














そういえば、乗客に囲まれていたあの青年はどこだ?

あの青年の姿が見えなくなり捜してみるが、甲板には見えなかった。



あんな背の高い青年が見えなくなるとは思えがたい。
船室に戻ってしまったのか。







名前だけは聞きたかったのだが…。















「私も、降りる準備をするとしようか…」













私はあの青年が気になりつつも、船室に戻って行った。



































                  *









































「おはよう、セネル。」














私はシャーリィと一緒にセネルを起こしに来たの。
セネルは寝起きがよくないから、起こすのには一苦労なのよね。















「お兄ちゃん!!」

「うーん、シャーリィもうちょっと〜。」

「もうちょっとじゃないよ!お兄ちゃんてばっ!」














シャーリィが揺さぶっても、セネルは起きる様子がなかった。














「起きないわね。」

「ごめんなさい。いつもこんな感じなんです。」

「別にいいわ。シャーリィ、一人で起こせる?」

「はい、頑張ります!!」














シャーリィは嬉しそうに言うと、セネルを起こす最終準備に取り掛かった。
私はゆっくり階段を下りて外に出ると、壁に寄りかかるワルターに話しかけた。














「起きないわ。」

「最悪な男だ。」

「そんなこと言わないの!いざと言うときはワルターにも手伝ってもらうから。」












ワルターはニヤリと笑うと、














「誤って殺しても文句言うなよ。」












と言った。














しばらくしてバンバンとすごい音が聞こえてきたと思うと、眠そうな顔のセネルが家から出て来た。















「おはよう……」

「おはよう!セネル!!」

「…ワルターもかよ…」

「フン」












仲悪いのも相変わらずねぇ。
そんなことを思いながら、私達はとりあえずウィルの家に向かった。















「何で起こしたの?シャーリィ。」

「フライパンを耳元で叩いたんです。」

「あらまあ!バンバンって聞こえたのはフライパンの音だったのね。」

「はい♪」













ウィルの家に着くと、彼は何がを考え込んでいるようだった。
彼はこの街の保安官だからきっと、考えることがたくさんあるのでしょうね。














「すまないがお前達、港までクロエを迎えに行ってくれないか?」

「クロエを迎えに?もうそんな時期なの?」













思わず声を上げてしまう。
だって、クロエは二ヶ月後に帰って来るって言っていたわ。
あの時からもう二ヶ月も経つというの?











は途中旅したりしていたから感覚が薄くなっているんだろう。」

「…そうかもしれないわね。どうりでワルターの傷が治ってくるわけだわ。」

「傷がよくなったならそろそろ水の里に帰ったらどうだ?」

「……」

「お兄ちゃんったら!」










…またセネルとワルターの睨み合いが始まってしまう。

この仲の悪さにも困ったものね。















「それじゃあ、クロエを迎えに行きましょう?」

「はい!」














返事をしてくれたのはシャーリィだけ。

もー。
















港に着くと既に船は到着した後で、船から降りてくる人とそれを迎える人で混み合っていた。













「もう着いちゃってる!」

「ああ、シャーリィ逸れるなよ。」

「う、うん。」

もだからな。手でも繋ぐか?」

「大丈夫よ。」

「……。」

「お兄ちゃん…」













セネルったら。
シャーリィの手前、気まずくなってしまうじゃない。

















「早くしないとクロエが街に向かってしまうわ。」

「そうだな。」















私達は人々を避けつつ、到着した船へと向かった。
色々な人にぶつかって足が遅くなると、私は皆と逸れてしまった。

















「あら?セネル、シャーリィ、ワルター?」

















周りには誰もいない。困ったわ…。

うろうろ皆を捜すけれどやっぱり見つからなくて立ちすくんでしまう。


















「困ったわ〜。」

「お嬢さん、どうなさいましたか?」





















あまりにもオロオロし過ぎていたのか、一人の男性に話し掛けられた。
不思議な雰囲気の男性で、…なんだか抜目ない鋭さを持っている。














「仲間と逸れてしまって…」












私は当たり障りの無いように答えた。
すると男性はにっこり微笑んで私の腕を掴む。












「!!」













力が強い…!!振りほどけない














「あのっ……」

「私も一緒に捜してあげますよ。」

「いえ、私一人で…」













私がもがくと、男性はさっきより強い力で腕を握った。













「私はあなたに興味があるんですよ…。」










私は目を見開いて男性を見た。何?なんなのこの人!














「!?…嫌っ…離して下さいっ!!」










私は暴れた。















でもやっぱり腕を離してくれない。

どうすればいいのっ…




















*******************

やっとクロエ登場!!
そして二人の見知らぬ人物!?

後者はあの彼だけど、前者は一体誰なのだろう??



2006/09/16










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