「嫌な予感がしたんだ。だから戻ってみた…。そしたら…」

































もう、エルザはいなかった。












クロエは仲間達から目を逸らした。
何故気付いてやれなかったのか悔やまれる。
自分を責めてもどうにもならないが、そうせずにはいられない。






































「やるね〜エルちゃん。」





































ノーマはうんうんと頷いた。それを無視する様にウィルがクロエに問い掛ける。





































「それで、オルコットさんはどこに行ったんだ?」

「ヴァーツラフ軍の砦だ。」

「…あそこか。」

「あそこにはたくさんの薬品がある様ですよ。そういう報告が入っています。」

「大方、ちゃんに案内して貰おうと連れてったんじゃないの。」

「そうじゃろうなぁ。」






































彼らはそう仮定すると、クロエを見た。
クロエは無言で頷くと剣の柄に手を置く。





































「あそこは今、魔物の巣と化しています。充分な装備をしないと、まず生きて帰れません。」

「エルザが危ない。急ごう。」








































彼らはそれぞれの武器を手に取ると、早々にウィルの家を出た。







































ダクトを降り、崖に隠された入口を見つける。
無造作に置かれた草を掻き分けると、赤い壁肌が見えた。


















































「あそこにいるのはエルザちゃんじゃないかしら?」








































グリューネが道先を指差した。
全員でそちらに顔を向けホッとする。
エルザは座り込んで休憩しているところだった。






































「エルザ!!」





































クロエは走った。
そしてエルザの前に立つと手を差し出す。






































「クロエさん!」





































エルザは嬉しそうにその手を掴むと、よいしょと立ち上がった。




































「エルザ!」





































その後にセネル達が続く。
エルザは自分を迎えに来てくれた彼らを見回すと、キョトンとした表情で言う。






































「皆さん…お揃いで…」

「お揃いで…じゃない!」




































クロエは両手を広げて叫んだ顔はまるで鬼の様で、エルザは震え上がる。





































「クロエさん…怖いです。」

「怒っているのだ。怖くて当たり前だろう!!」





































クロエの怒声にエルザは更に体を震わすと、そのまま縮こまった。





































「まあまあ、無事だったんだし良かったじゃん!」

「良くない!」








































クロエはその形相をノーマに向けると、更に大声を出した。






































「何であたしが怒られるかな〜。」

「余計なこと言うからじゃ。」

「もっと場の空気を読んで発言しろ。」

「うっ…また怒られたし。」






































モーゼスとウィルに非難され、ノーマは頭をポリポリと掻いた。











































「オルコット殿とは私達が探す。エルザは街に帰るんだ!」

「でも…」

「でもじゃない!」

「…だから…」

「だからじゃない!!」









































クロエは有無を言わせぬ態度でエルザの言葉をはねのけた。
エルザはもじもじとクロエを見上げると、「お願いします!」と頭を下げる。






































「ダメだ!」









































クロエは彼女の最後のお願いをもはねのける。
そのままプイとそっぽを向くと、もう意見は聞かないという態度を示した。








































「クロエ、一人で帰すよりは一緒に連れてった方がいいはずだ。」




































その時、セネルが横から意見する。
クロエはそれを聞き、冷静になって考えると彼の意見が正しいことに気付く。





































「そうだな…」





































そのまま誰も見ずに顔を赤くして頷くと、一人で歩き出した。



























































「そろそろ…ですかね。」

「そろそろ…じゃな。」


































先頭を進むジェイとモーゼスの二人は、後ろをちらちら見ながら言った。セネルはそれが気になり、ぐるりと後ろを向く。

すると、仲間達の列の一番後方に遅れをとったエルザが歩いていた。
先頭の二人はそれを気にして休憩をとるか悩んでいる。





































「ウィル…」

「…ああ。休憩にしよう。」





































ウィルがそう言うと、皆は輪になって集まった。
少し遅れてエルザが入る。









































「まだ大丈夫です!早く行きましょう!!」












































エルザは両拳を握って休憩に反対をかけた。
自分のせいで休憩になったのに気付いているようだ。










































「エルちゃん、足がくがくしてんじゃん。」

「こ…これは…」

「エルザ、そんなことを言っているとここからでも追い返すぞ?」

「!!」


















































クロエの声にびくっとすると、エルザはいきなり左右に手を振り出した。














































「私、休憩したいです。休憩したくてしょうがないです!」









































そしてこう言うとにっこり笑った。






































「いい性格しちょるのう。」

「エヘヘ…」

「…さて、僕は奥を見てきますよ。」

「ワイも行く。」

「二人が心配だからわたくしも行くわぁ〜。」








































エルザの苦笑いを背に、ジェイとモーゼス、グリューネが奥へと走って行く。
他の者達はそれを見送ると、その場にしゃがみ込んだ。


































「クロエさん…」

「ん、なんだ…?

…寝言か。」

「幸せそうな顔してんねー。」


































しばらく経つと、エルザはクロエのひざ枕で寝入ってしまう。クロエは母のような微笑みでそれを見下ろした。



































「それにしてもここは蒸してるな。それに…」

「ああ、血と薬品の臭い…。」

「……水の民は、ここで殺されたんですね。」

「シャーリィ…」






































この話を最後に、皆終始無言になってしまう。
そんな重たい空気を破るように、エルザの寝言が炸裂した。






































「あぁん、クロエさん…それ食べちゃだめですよぉ。」

「はは…私は何を食べさせられてるんだ?」

「なんか女同士っていいね〜。」

「…何がいいんだよ。」

「べっつに〜。」

「ああ、行かないで。クロエさん、行かないで…」

「……」

「私を、私を一人にしないで下さい…」

「エルザ…」




































エルザの寝言は、その言葉を最後にぷっつりと途切れたクロエ達はお互いに顔を見合わせると、深く溜め息をつく。




































「寝言を言うくらいなのだ。かなり疲労しているのだろう。」

「ああ、この先も気にしてやらなきゃな。」

「ああ…」





































クロエはさらりとエルザの髪を撫でた。




































「二人ともこの先にはいなかったですよ。きっともっと奥の方にいるんでしょうね。」

































偵察から戻って来たジェイは、壁に寄り掛かって言った。その横でモーゼスが座り込む。




































「あれ、グーねえさんは?」






































ノーマが聞くようにグリューネがいない。
すると、モーゼスが道の先を指差した。






































「姉さんなら少し先で寝とる。行くとき起こしてくれっていっとった。」

「…グリューネさんらしいというか…

お、起きたかエルザ。」






































クロエの膝でエルザが目を覚ました。そして自分を見下ろしているクロエに気付くと、がばと起き上がる。










































「きゃ〜!!わ、私…クロエさんのお膝で!!

大丈夫でしたかっ!?」

「何がだ?」

「ヨダレは?歯ぎしりは?寝言は?」

「寝言はかなり言ってたね〜。」

「クロエさんの前で恥ずかしい〜。」

「ラブラブだね、こりゃ〜。」

「馬鹿言ってないでいくぞ。

エルザ、疲れはとれたか?」

「あ、はい。大丈夫です。」

「よし、行こう。」



















彼らは重い腰を上げると、奥へ向かって歩き出した。


















































蒸し暑さは変わらず、奥へ進む度に気持ち悪い程の様々な臭いが漂ってくる。

ここにシャーリィがいたなんて考えられない。

ましてや、は一年も居たなど…。



クロエは胸に手を当てると、奥にいるだろう彼女を思った。

そんな仕打ちを受けたとしても、彼女の愛国精神も、兄への愛情も変わらなかった。


















こそ、尊敬すべき人物だと思う。

















エルザは歩きながらクロエのようになりたいと発言していた。
それに対して、ノーマはニヤニヤ笑い、ウィルはほほうと頷き、セネルは複雑な顔をしている。




クーリッジが正しい。




クロエは思った。
私は、誰かに尊敬される程出来た人間じゃない。





































「私の愛国精神とはなんだ…?」

「クロエさん、何か言いましたか?」

「いや…」




































私の愛国精神は…なんだ?

そもそも、国のために仲間を殺すなんて、馬鹿げている。
















私は、私らしく……








































「スティングル!!」


「!?」











































今、の声が聞こえた。それも、私の復讐の相手の名を呼んだ。


































「今、さんの声らしきものが聞こえました!」

「オウ!行くぞジェー坊。」

「わかってますよ!」


































先頭の二人が全速力で走って行く。クロエも、勝手に体が動いている。





























…!」

































隣のセネルが呟いた。
しかしその声はクロエに聞こえていない。








何故…、何故あいつの名を?



ここにスティングルがいるというのか?



あの男が…!!





























クロエの頭はいつの間にか沸騰した状態になっていた。恨みの炎が渦を巻いて脳みそをぐつぐつとさせているのだ。














































もう、忘れてたいく一方だと思っていたのに、
恨みは、こんなにも体中にしこりを残しているのか…











































それと共に、冷静な自分がいることにも気付く。














































彼女は仲間を助けに走る中、少しずつ苦しみに埋もれていく。






































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オリジナリティを入れて書き出すと、レジェ中の会話を書き出すのがつまらなく感じます。
それと同士に、オリジナルって楽しいんだなぁとも感じますね。


2007/06/01








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