地のモニュメントに向かう中、とクロエは最後尾に並んで歩いていた。
彼女らは一言も発さず、ただ黙々と歩いているだけ。
そんな二人の姿を、セネルははらはらと見守っていた。
しかし彼が実際にはらはらしていたのはクロエに対してで、にはしていなかった。
彼女は冷静に考えているので、そこまで心配する必要がない。
打って変わりクロエは、両親の敵のこととなると感情が最優先するようなので心配ままならなかった。しかし感情が最優先するにも関わらず、最後の一線を越えないのが尊敬出来る一つだ。
俺なら出来ない。
セネルは思うのだった。
はこの状況をどう打破しようか思案にくれていた。
どうも考え過ぎてしまうたちなので、うまくいかないと思う。
話し掛けるなんて簡単な行為であるはずなのに、こんなにも難しいなんて。
灯台に着くと、昇降装置に乗って静の大地に降りる。そこは装置の機械音以外、まったく無音だった。
この不自然窮まりない場所が、自分にとって心地良い場所だなんて思ってもみない。
外に出るとそこは魔物も徘徊する危険な場所ではあるけれど、遠くに見える海の波音がざざんざざんと一定のリズムで彼女の心を誘うのだ。
それが心地よくてしょうがない。
そして、ここの滄我も彼女とって温かいのだ。
「」
歩いている途中、突然クロエが話し掛けて来た。
がびくりとして振り向くと、クロエは強い意志を持った…けれども戸惑った表情で言った。
「話があるんだ」
「……ええ」
は立ち止まった。
仲間達は彼女らが立ち止まったのも気付かず、そのまま歩を進めている。
仲間達からある一定の距離を離れると、とクロエは再び歩き出した。
空に映る空は偽りで、青く雲を漂わせているが本物ではない。ラ
フィはそれを仰ぐと、クロエの話を真剣に聞ける様に一息吐いた。
「私は、を斬らなければならない」
クロエの凛とした声が告げる。
は微かな笑みを浮かべて彼女を見返した。
「そうなの」
そしてこう答える。
国同士が敵対しているので、起こり得ない事ではなかった。いや、今まで起こらなかったのが不思議なくらいだ。
クロエはその話が出た時、きっと悩んだはずだ。
しかし斬らなければならないと宣言させる状況に追い込んだのは、スティングルと私…。
は思うのだった。
「覚悟している、という様子だな」
「ええ。
私も、スティングルも、クルザンドの軍人ですからね。」
睨む彼女に朗らかに話す。
きっとにしか出来ない芸当だろう。
「そうか、ならいい。」
クロエはそう言って立ち止まった。
は数歩進んで立ち止まると、振り向く。
クロエは悲しんでいた。
自分を睨んでいた瞳は伏せられ、唇を噛み締めて震えている。
「ク…」
「私は迷っているんだ!スティングルも、あなたのことも!
忘れてたと思ったのに、憎しみはこんなにも体に染み付いている。」
クロエは涙を流している。
はそれに驚きを隠せなかった。
クロエも、とうに覚悟を決めていると思っていたのに。
は自分が誤った返事をしてしまったことに気付いた。
あそこでもっと違う返事をしていれば、クロエもスティングルも救えたのかもしれない。
「もう、引き返すことはない。
私は、全ての仇をとる。」
クロエはそう宣言すると、を置いて先に走っていってしまった。
「……
ああ、やってしまったわ。」
はその場にうずくまると、溜め息をついた。
私、クロエのこと何も見てなかった。
彼女が悩んでいるのも気付かなかった。
まったく、だめね…。
は再び溜め息をつく。
「でもクロエに斬られるわけにもいかないし、スティングルを斬らせるわけにもいかないわ。」
「、大丈夫か?」
「どうすれば…」
「!!」
名前を呼ばれてびくと肩を上げると、恐る恐る上を見る。
そこには心配そうなセネルが自分を見下ろしていた。
「大丈夫か?クロエと何か…」
「大丈夫。」
「!」
「大丈夫なの。
助けて欲しい時はちゃんと言うから、今は何も聞かないで」
「…」
は笑顔を作ると、セネルに向けた。
そしてすぐに逸らすと歩き出す。
「大丈夫なんて嘘、つくなよ。
どうしようって顔してるぞ…?」
残されたセネルは消える様に呟いた後、を追うように走っていった。
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クロエの気持ちを汲めなかったヒロイン、自分の過ちに苛まれてこれからどうするのか。
2007/09/21
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