「相変わらず温いね〜ここは」













地のモニュメントに着くと、気持ち良さそうに背伸びをしながらノーマが呟いた。













「ここの草達は、伸び伸びとしてて鮮やかねぇ」

「本当ですよね、踏むのが申し訳ないくらい」











シャーリィの言葉に、グリューネは優しく笑った。














「そんなのんびりしている場合じゃありませんよ」

「今はエルザのことだけを考えるんだ」













ウィルの言葉に全員が頷き、彼らは中に入って行った。
例外もなく、もクロエも入って行く。













「うわ〜、これかぁ」












ノーマがやる気ない声でだれる。表情はやってられないと言いたそうだ。
目の前には振り出しに戻るトプが、ウイイィンと光りながら移動している。















「エルザのためだ」

「そうそう、エルちゃんのためだもんねっ」














ウィルが殴る勢いで言うと、ノーマはの後ろに隠れた。
















「またモーすけが振り出しに戻るかもね〜」

「戻らんわ!」

「ありえるな」

「戻らんって!」

「そうかもしれないわね」

「戻らんちゅうに!

セの字もも…なんじゃ、ワイだけのけ者か、いじめか…」















モジモジとのの字を書き出したモーゼスを、ジェイが蹴飛ばした。














「何するんじゃジェーぼ…

のわあぁぁっ!」












モーゼスが蹴り飛ばされて手を着いた所はなんと、振り出しに戻るトップだった。
彼はそのまま消えると、入口の方に現れる。
















「何だ、近いとつまらないですね」

「ジェー坊…!!」














モーゼスが勢いよく戻って来る間に、ジェイや彼に荷担したセネルと、ノーマがウィルに拳骨を喰らった。もちろん、戻ってきたモーゼスもだが。

緑色のタイルをトプを避けながら歩く。団体で歩くということと、神経を使う歩き方だということで皆の頭に汗が滲む。
彼らはそれを拭き拭き奥へと進んだ。















「ウィル、蜘蛛は絶対いるんだよな。」

「俺に聞くな。しかし、ここにいる事は確かだ。」

「その言葉、どのくらい信じられるんじゃ?」

「100パーセントじゃないのかしら。」

さんはウィルさんを100パーセント信じてる、と。」

「あら、ジェイは信じてないの?」

「それは五分五分ですね」

「……何が五分五分だ。

数が少ないと言っただろう、すぐ見つからなくて当たり前だ。」















このような、誰かが誰かをいじるような会話にもクロエは入ることはなかった。
彼女は一人で考え込み、時に厳しい表情をしたり手を握り締めたりするのだ。

はそれを見て胸が締め付けられた。彼女は引き返すことはないと言っていたけれど、まだ迷っている。


こんな状況を救えるのは、私でも誰でもなく…
















「どうした、。大丈夫か?」

「セネル、ありがとう」















セネルなのだろう。















私に掛けてくれる優しい言葉、クロエにも掛けてあげて欲しい。
クロエはきっとその優しさに苦しむだろうけれど、それが彼女を救える一つの道だ。
はセネルに笑い掛けると、「大丈夫」と言って歩き出した。












今あなたが必要なのは、私じゃない。クロエなのよ。

わかって、セネル。










しかし、セネルはクロエに声を掛けることはなかった。















「もうそろそろ着いちゃうわねぇ。」

「ああ。ウィル…」

「正確な場所はわからんが、絶対ここにいるのだ。」

「お兄ちゃん、もっとウィルさんを信じなきゃ。」

「そうじゃな。」

「あなたも信じてなかったじゃないですか。」













そろそろこの建物の最奥に着いてしまうというところ、彼らは蜘蛛を見つけられずに焦っていた。
虫一匹逃さないように目を皿にして探し回る。















「収穫なかった、なんて言えないもんね。」

「当たり前です!エルザの命がかかっているのですから。」














挫けそうに振舞うノーマにが叱咤した。
はそんなノーマに溜息を着く。














「ほら、あの蜘蛛のような蜘蛛をさがすのよ、ノーマ」

「は?蜘蛛のような蜘蛛?

……って、あれじゃん!」














が指差した蜘蛛は、こちらをじーっと見つめていた。
あまりにも堂々と見ているため、は何かの蜘蛛の銅像かと思ったらしい。

蜘蛛はじーっとこちらを見ていたかと思うと、突然向かって来た。













「こんなとこに蜘蛛の銅像があるわけないっしょ!!

ほらも〜!行くよ!」

「え、ええ。」

「クーも行くよ!!」

「……」

「置いてくよ!!!!クー!」

「へっ……あ、すまない」













ノーマと、クロエは並んで蜘蛛に向かって行った。


























           *



























戦いが終わり、思い出すかのようにジェイが呟く。















「あれ、温厚な性格だって言ってませんでしたか、ウィルさん」

「ああ。しかし何で襲ってきたのか…」

「あれ、見てください!!」














シャーリィが叫ぶ方を見ると、倒された蜘蛛の死骸から黒い霧が現れた。
蜘蛛をまとっていたかと思うと、しゅうぅとその場に消える。

















「また黒い霧ですか…」

「どんどん多くなってるな、この霧は。」

「ええ……」

「さあ、マユも手に入れたし街に戻ろう。」
















彼らはそれ以上黒い霧の件には触れず、街に戻る事にした。

















「オルコットさんは戻ってきているだろうか。」
















灯台を出ると、外はもう日が落ちていた。
人気のない街を見て、私達は思ったよりも時間がかかってしまったのに気付く。
















「急いで病院へ行きましょう。」














病院に着くと、ハリエットがそわそわしながら走ってきた。
彼女は動揺した表情で両腕を振り回す。
















「皆、遅いわよ!」

「オルコットさんは戻っているか?」

「ううん、そうだ、手紙を預かってるの。」














ハリエットはポケットをごそごそ探すと、三つの手紙を出した。
それをクロエ、ウィル、に渡す。














「これは、エルザの薬の調合方法…?」

「どうしてそんなものを…?」














ウィルは何故自分にこの手紙が渡されたのか理解できなかった。


オルコットさんが自分でやれるのに何故?


彼は静かに手紙を折り畳むと、考え込む。














「あ〜!クーってば、ど〜して手紙、握りつぶすの!?」












くしゃくしゃという音がしたかと思うと、ノーマが非難の声を上げる。
皆はそちらを見ると、不思議そうにクロエを見つめた。














……そう。












は一人、スティングルからの手紙を見下ろしていた。















『私と彼女の覚悟に決着を』













そう一言書かれていただけだった。
しかしそれだけでクロエへの手紙には何が書かれていたか容易に見当がつく。














「…」













クロエはノーマの問いには答えなかった。
















「今は、エルザさんのことだけを考えましょう。」

「体力だけでも、ブレスで回復できんかの?」















モーゼスのさり気ない言葉に、ジェイが顔を輝かせて振り向く。















「その手がありましたね!」

「モーゼスちゃん、冴えてるわねぇ。お姉さん、感心しちゃったわぁ。」













ジェイの隣に立っていたグリューネが、突然そう言ったかと思うと、モーゼスをその柔らかな体で抱きしめた。
途端、モーゼスの顔は真っ赤になり、頭のてっぺんから蒸気が出ている。















「ヒョオオオオッ!!」













そしてそのまま、どこかへ走り去ってしまった。














「よっぽど嬉しかったんだねぇ。」












ほほう、と呟くノーマの後ろでは、クロエを見守る、その二人を心配そうに見つめているセネルがいた。














*****************


三角関係?(笑)


2007/09/24




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