夜が明けて陽が射して来た頃、とチャバはガルフ達に気付かれない様に一定の距離を保ちながら歩いていた。
これはかなり神経を使う作業で、ジェイはいつもこんな事をやってるのかと思うと、ほとほと関心する。















「ジェイ達、ウェルテスに着いたかしら。」

「そろそろ着いたんじゃないかな。」













明け方だからか魔物の襲撃も少なく、二人は難無く尾行を続ける。
チャバはいつものほんわかした態度を一変させ、今は緊張にまみれて違う人物になっていた。
その雰囲気を少しながら口調が和らげている程度だ。













「止まった…」













ガルフ達はある場所で止まり、何かを待つ様にしりっぺたを地面に下ろす。
しばらく経つと体全体をリクスさせて休みを取り出した。













「しばらくは動かないだろうな。おいら達も休憩しよう。」

「そうね。」












彼らも座ると、一息つく。






きっといつもなら話も弾むかもしれないけれど、今日は…。





はチャバに聞こえない様に溜め息を吐くと、彼を見つめた。
見た目は変わらないのに、人って何かに真剣になると変わってしまう。








チャバは、モーゼスとギートのために必死なの。






『家族のため』






ね。















「チャバも…」

「うん?」

「モーゼスと一緒だわ。」

「?」














は艶っぽい笑みでチャバを見た。
彼はその魅力に取り込まれると、固まってしまう。














「でも、モーゼスもチャバももっとリクスした方がいいわ。私、心配よ。」

ちゃん…」

「…答えはきっとそこにあるでしょうけれど、目の前のことだけが事実ではないわ。」

「うん。」












チャバは頷くと思い切り息を吸いふにゃりと笑う。
は目を点にしてぽかんと彼を見た。













「リクス〜」












彼はそう言って笑い出した。
もなんだか可笑しくなって一緒に笑う。














「そこまで考えなきゃいけないってわかってるんだ。オイラは纏め役だからアニキみたいに猪突猛進じゃいけないって。

でも、皆に迷惑掛ける前になんとかしたい。」

「ふふ、きっとそれは纏め役の性ね。」

「纏め役の性?」

「そう。」













はおもむろにチャバの頬に自分の手を当てる。
そして撫で撫でと優しく触った。














「…///////」

「どうにか自分で丸く治めたいって気持ちのこと。でも、一人では出来ないわ。」

「うん、わかってる。」













チャバは自分の頬を触る彼女の手を取った。














「力を貸して、ちゃん。」

「ええ、もちろんよ。」













チャバはの手を握る。
その力は強く、優しく、温かかった。













「ありがとう、ちゃん。」












チャバは零れるくらいの笑みを浮かべた。











































「あっ…動いた。」

「え、本当に?」















チャバの言葉にはガルフ達を見る。
ガルフ達は起き上がって前方を見据えている。














「さっきのはただの休憩じゃないみたいだ。中に入って行くし、ここが本拠地だと思う。」

「ええ。」

ちゃんは一度、アニキ達に報せに行ってくれる?」













チャバはの肩を掴むと、真剣な表情で言う。
しかしはジェイの言葉を思い出すと戸惑いを見せる。













「でも、チャバ…」

「大丈夫。一人で早まったりしないから。」

「…わかったわ。」












はチャバを信じる事にして立ち上がると、ガルフ達の様子を窺った。
こちらには気付いていない。













「あそこの崖を抜けるとダクトがある。

オイラは見張ってるから、アニキ達を連れて来て。」

「ええ。チャバ、気をつけてね。」

「うん、ありがとうちゃん。」











はにっこり微笑むと、ダクトがある方に走り出した。
見つからない様に隠れながら。


チャバは彼女が見えなくなるまでその背を見守ると、ガルフを追って歩き出した。

唇を噛み締め、険しい顔をしながら。
















































トントンというドアを叩く微かな音を聞き分け、ウィルは目を開けた。
考えても解決するわけでもないギートとモーゼスの事を、帰って来てからずっと考えていたのだ。













「眠ってしまったのか…」












ぼやけた視界をどうにかしようと瞬く。
すると、再びドアを叩く音が聞こえた。












「そうか、俺はあれに起こされて…」












彼はソファーからゆっくり起き上がると、玄関に向かった。













「ウィルさん!」












どうやらドアを叩いているのはジェイのようだ。












「ジェイ…?

…っ!」











何故ジェイが…
と寝ぼけが入ったが、すぐに事態を思い出すと素早くドアを開ける。













「何かわかったか!?」

「はい!……って、寝てましたねウィルさん。」

「!!……何故わかったんだ、ジェイ。」

「…いえ別に。

今とっておきの情報を手に入れましたよ。」













ジェイは家に入るとニヤリとする。













「悪い報せですけどね。皆さんを集めましょう。」

「わかった。」












ジェイとウィルは二手に別れて仲間達を呼びに走る。
そして全員が集まるとテーブルを囲んでソファーに座った。














「ジェイ、頼む。」

「はい。

…今朝方ウェルテスに向かう途中、さんとチャバさんと会いました。彼等はたくさんのガルフと戦った様で、そこら中にガルフの死体がありました。」

「ガルフ…」

「もしかしてその死体の中にギーとんがいたとか!?」













ジェイが一息ついた時にすかさずノーマが聞く。
ジェイが答える前にセネルがそんなことないだろ、とツッこんだ。














「ウェルテスの人達がガルフに襲われて、二人が救ったようです。

僕はその人達を街まで送る役を引き受け、二人はそのままガルフを追いました。

それで…」












ジェイはちらりとモーゼスを見た。
するとモーゼスはギロと彼を睨み、











「もったえつけるのう、ジェー坊。」










と皮肉を言う。
ジェイはモーゼスの気持ちを気遣ったつもりだったのだが、今のモーゼスに何を言ってもしょうがないと思ったのか無視をする。












「そのガルフ達を統制していたのが、オレンジ色のガルフだったと襲われた街の人が僕に言ったんです。」

「「「!?」」」











仲間達は皆息を飲んでジェイを見た。
一人モーゼスだけが動かない。













「ちょっとモーすけ!オレンジ色のガルフなんてどこにでもいるよね?いるよね?」

「……」

「モーすけ!」

「!……オ・・・オウ…どこにでもおる。」

「だよね〜よかった。

……って、ウィルっちとジェージェーったらそんな険しい顔してどうしちゃったの?」

「いえ…」
「いや……」













ウィルとジェイは顔を見合わせると、気まずく否定した。












「とにかく、街の人に被害が出てしまったのだ。なんとても早急に解決しないとならんな。」

「ああ。ジェイ、チャバとがどこにいるかは特定できないのか?」

「はい。二人からの連絡を待つしか……。

ところでウィルさん、そろそろ眼鏡をどうにかした方がいいんじゃないですか?」

「ん?」












くすくすと笑うジェイに言われ、ウィルは目の辺りを触った。
しかしいつもかけているはずの眼鏡がない。













「……。」

「頭の上にあるぞ、レイナード。」












クロエに言われて頭の上を触ると確かに眼鏡は頭の上にあった。
ウィルがちらりとジェイを見ると、彼はにっこり笑っていた。













「てっきり新しいスタイルかと思ってました、私。」

「…コホン、その通りだ。」

「そうだったんですか、ウィルさん?」

「……」











にこにこ笑うジェイを見れず、ウィルは再びコホンと咳をした。



















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まだまだ続きます、チャバ編(たぶん)
実は贔屓でジェイも活躍中♪


2007/12/01







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