「ジェイ」

「何ですか?」

















ウィルの横に座っているジェイにセネルは小声で話し掛けた。
ジェイはセネルの顔を見ると、彼が言いたい事がわかったようだ。

















「そうですよ。」

「……まだ何にも言ってないぞ?」

「セネルさんの言いたい事くらいわかります。」

「オレンジ色のガルフは、グランドガルフしかいない。」















セネルとジェイの会話に入るようにウィルが言った。
二人はウィルを見ると、続いてモーゼスを見た。

モーゼスは両手を組んで顎を乗せ、一心不乱に何かを考えている。
セネルは肩を落とすとウィルの方を向いた。















「やっぱりな。」

「その事を、モーゼスさんも知っているようですね。知らないのは女性達だけです。」
















ジェイは部屋を見回してシャーリィとクロエ、ノーマを見る。
三人は沈んだ気持ちを上げようと、明るく話を弾ませている。
















「あら、お姉さんも知ってるわよぉ。だって、私がつ……

あら?なんだったかしらぁ…」
















ソファーの後ろからにゅっと出てきたグリューネは、自分がその事を知っていると強調したかった様だが、途中で忘れてしまった。
彼女は首を傾げて考えたが、すぐにぺロリと舌を出す。


















「本当に、なんだったのかしらねぇ…」

















そして何事もなかったように官能的なお尻を振り振り、女の子の方へ歩いていってしまう。三人は顔を見合わせると、お互い赤い顔をしているのを見咎めるように見つめあった。

















「私がつ…って、かなり気になるな。」

「私が作ったとでも言いたかったのか?まさかな。」

「まぁ、グリューネさんですししょうがないですよ。」

















三人は再び女性達を見た。
今度は四人が楽しそうに話をしているが、見ているこちらからすると何だか物足りない。
何が足りないのか考えていると、急に思いつく。
















が足りない気がする…。」
さんが足りないですね。」
がたりないな。」















そして同時に口にした言葉は一緒だった。
















「ウィルとジェイもか。俺もそう思った。

がいないと、なんだか物足りないな。」

「そうだな。それだけの存在が俺達にとって重要だということだ。」

















それぞれにを思い描くが、やはり本人が居ないとどうにもならないと思ってしまう。


















さんもそうですけど、いつものモーゼスさんがいないのも……」















ジェイがボソと呟いた言葉に、セネルとウィルは温かい笑みを浮かべた。



















































「ウィル!!皆を…」















外から慌てた様な足音が聞こえたかと思うと、突然ドアが開いて飛び込んで来た。















「「「!」」」














彼女は膝に手をついて肩で息をすると呼吸を整える。















「皆…はぁ…いたのね。」

「大丈夫か?。」














セネルが心配そうに駆け寄ると、彼女の手を持ってソファーに誘導した。














「モーゼス、チャバが…」













彼女が座った隣には、今だ考え込んでいるモーゼスがいる。
は彼の顔を覗くと、状況を訴えようした。
しかし、














「モーゼス?」












彼は顔を俯かせたまま、の言葉を聞こうとしない。
不審に思った彼女は、モーゼスの肩を掴んで揺らす。















「モーゼス!」

「……ぬ…ぬぉ、?いつ戻ったんじゃ?」

「たった今よ。

大丈夫?何かあったの?」















モーゼスの様子で心配になったは仲間達に聞く。
しかし彼等は顔を見合わせるだけでモーゼスを気遣って何も言わない。

















「……ジェイ、街の人達は無事?」

「それは抜かりありません。」

「そう、よかった。

では皆行きましょう。」
















は手でモーゼスを促しながら立ち上がる。
モーゼスは暗い顔でふらりと立ち上がった。















「ガルフ達が結集している場所があるの。」

「どこなんだ、そこは?」














ウィルがハンマーを持ち上げながら聞く。
それぞれの仲間達も皆戦う用意をする。















「列岩地帯よ。」

「列岩地帯…、魔物が結集しても、俺達は気付きにくい場所だな。さすが頭の切れるガルフだ。」

「ええ。

今、チャバが見張ってるわ。」














ジェイはガタという音を立てて苦無を落とした。















「ジェイさんが苦無を落とすなんて珍しいね。」

「そうだな。」













シャーリィとクロエが朗らかに笑う中、ジェイはキッとを睨む。














「っ…さん!あれ程チャバさんを一人にしてはいけないって念を押したのに!」













は少し怯んだが、チャバの言葉を思い出す。














「彼は大丈夫。私に無茶をしないと言ったもの。」

「…これだからおめでたい人は!」













ジェイは舌打ちすると、いち早く家を出る。













「でも、どちらかが報告に…。」

「場所が特定出来たんですから、二人で戻ってくればいいでしょう!」












街の出口に早足で向かうジェイに追い付こうと必死になって言う。
しかし彼の返答があまりにも正しかったので、彼女は何も言えなくなった。














「…ジェイの言う通りだわ。ごめんなさい。」












少しは考えればわかるのに、とは思った。
しかし過ぎてしまった事はどうにも出来ない。

彼女は謝る事しか出来なかった。














「モーゼスさん、チャバさんが一人で追ってるんですよ!!しゃんとしてくださいよ!」













ジェイはモーゼスの士気を上げようと耳元で大声を出す。
モーゼスはハッと気付き彼の顔を見る。














「チャバが…?

早く行かんと殺される!」













モーゼスは今までの態度をどこへやってしまったのか、キビキビと走り出す。
ジェイは家族思いな彼の気持ちを突いて上手く奮い立たせられたのに満足した。













































「少し、寒いな…」














チャバはガルフに遅れて列岩地帯に入り込んだ。
そして忍び足で進む。深緑色の髪が揺れると、腕が震えた。


列岩地帯は海風が吹き、肌寒かった。
しかしこれは震えなのか、奮えなのかわからない。










きっと、震えだろうなぁ。









彼は苦笑すると、自分の両二の腕を掴む。


列岩地帯入口で、見慣れたオレンジ色の毛を見つけた。
それをつまんで触ると、懐かしいあの感触。














「ギートだ…。」













懐かしいと思ってしまうのは、毎日いたギートに一日でも触っていない証拠。
今までそんなことはなかった。














「やっぱり、ギートは野性化を…。」












1番最悪な結果が頭を過ぎる。









死ぬのはギート?
それともアニキ?








ぶるぶるぶる…

チャバは思い切り頭を左右に振る。

考えるべきではない事を考えてしまったと最悪な結果を振り払う。






チャバは震えを抑えて心を奮い立たせた。













「行かなきゃ…。」













彼は一歩、また一歩と踏み出す。















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ギートが関わってる様なので、皆でハラハラ。
きっとチャバが1番ハラハラです(笑)
そしてジェイはイライラ(苦笑)

2007/12/02







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