「じゃあ、俺は聖王陛下のところに行ってくる。」
「ええ、いってらっしゃい。失礼のないようにね。」
「わかってるよ。」
ヴァイシスはブンブン手を振って、私達と別れた。
ブンブン振るところがヴァル兄様にそっくりね。ふふ。
「、嬉しそうだな。」
「え?…ええ。」
セネルの問い掛けに私は笑う。
だって、きっとクルザンドは…私の家族は、兄様の命を奪った私を見捨てたりはしなかったのだもの。
私はもう、ひとりぼっちじゃないわ。
「はもう、ひとりじゃないな。」
「え…?」
思った言葉そのまま、セネルは優しい微笑みで私にくれる。
初めてマシュマロを口に入れた時の不思議な、でも甘くて幸せな気持ちになる。
「には、俺達もいるしクルザンドもついてるしな。」
「ええ。セネル…」
彼につられて私も思わず微笑んでしまう。
セネルと話していると、優しかった兄様達を思い出す。
心の奥から暖かいものが込み上げて来る。
「!、何で泣いてるんだ?俺、嫌なこと言ったか?」
「あっ…ううん、ごめんなさい。セネルを見てたら、兄様達を思い出してしまって。」
「そ…うか。」
「セネル、何だかお兄さんみたいだわ。」
私が泣き笑いすると、セネルは困ったように瞳を上にむけて頭を掻く。
「…呼びたかったら、の兄になってもいいぞ?」
「ふふ、ありがとう。」
彼の行為に感謝すると、私は涙を拭いた。
「さん…」
「…」
ハッ…
やだ、ここにはクロエもシャーリィもいるのに!!
私ってば、なんて気が利かないのかしら!!
「あの…クロエ、シャーリィ…」
「さん!」
「!何?シャーリィ。」
シャーリィは両拳を握ると、私をじっと見つめる。
ど…どどどうしましょう!?
「!」
「!クロエまでっ…」
あららら…
二人は私を穴が空きそうな程見つめると、同時に
「私は妹って呼んでください!」
「私を姉って呼ぶんだ!」
と言ってくれた。
二人の瞳があまりにも真剣で、心が篭っていて…嬉しすぎてまた泣いてしまいました。
私、泣き虫になりましたよね、兄様…。
ウィルの家の前に着くと、一人の老人とぶつかってしまう。
平謝りすると、老人はむっつり顔で許してくれた。
その老人は目が見えないみたいなのだけどウェルテスに来たばかりらしくて、私達はお詫びに老人の案内をかってでた。
「ここは階段です。大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃ。お前さんは礼儀正しい娘じゃな。…どっかのサルとは違う…」
「え?」
「いや、こっちの話じゃ。」
階段を上り終わるとそこは墓地。
ステラもここに眠っている。
私は二、三日に一回ここに来てステラのお墓の前であったことを色々話すの。
私の独り言みたいになってるけれど、私には聞こえるのよ。
ステラの笑い声とか怒った声が。
「あれ…あそこにいるの…」
感慨に耽っている私の頭に、クロエの声が入る。
彼女が言った方を見ると、ノーマがお墓の前に立っていた。
「ノーマか?」
「誰か知り合いの墓があるのか…?」
私達は疑問に思いながら静かに近づいた。
彼女は私たちに気付くと、にへらと笑う。
「おんや〜、クー!久しぶりだったり〜。それにセネセネにちゃんにリッちゃん。」
ノーマはいつもの明るい顔で声を掛けてくれた。
「こんなとこでどったの?」
「俺達はこの人を案内してきただけだ。」
セネルが答えると、ノーマはじーっと老人を見つめた。
「そんなにジロジロ見るのは失礼だぞ。」
クロエに注意されながらも、ノーマは気にせず老人を見続ける。
「う〜ん、そこはかとなく見覚えが……
……
…
あ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
『きゃあっ…』
ノーマの突然の叫びに、クロエとシャーリィが悲鳴を上げた。
それもクロエは珍しく女の子らしい声。
彼女は顔を赤くするとむっつり顔でノーマを睨む。
「きゅっ…急に大きな声を出すな!」
クロエの小言が始まろうとした時、老人が彼女とノーマの間に入った。
「相変わらず騒々しい娘じゃの。」
老人はノーマにそう言った。
ノーマは歯を食いしばって老人を睨んでいる。
「なんだってザマランのジジイがあたしの目の前にいるのよ!セネセネ!」
ノーマはセネルの前に立つと、彼をギロリと睨み上げた。
「お、おい。」
「ばっちりさっくりきっちり説明してもらおうか!ええ!!返答によっちゃ〜容赦しないぞー!」
ノーマはぐんぐんとセネルに詰め寄る。
老人はそんなノーマを見てため息を漏らすと、
「品性のかけらもないやつじゃ。」
と言った。
ノーマはみるみる顔を赤くして頬を膨らませると、
「なんだとこら!」
と言い返す。
「ノーマ、知り合いなのかもしれないけれど怒らなくても。」
「いいんじゃ、礼儀の正しい娘さん。こいつはサルじゃ。サルそのものじゃ。」
あらららら。
もう止めようがないかしら…。
「むきー!誰がサルだー!」
でも、…これはまさしく
「サルだわね。」
「おさるさんみたいです。」
私とシャーリィの声が被る。
私達は顔を見合わせると笑った。
「、シャーリィ、それは思うだけにしとけ。」
「あ、うん、そうだね。今のなかった事にしてください。」
「あらいいじゃない。本当にサルみたいだったもの。」
「はい。さんの言う通りですよね。」
「…、シャーリィ…。」
「あたしをサル呼ばわりするな〜っ!!!」
ノーマは大声で批判すると、手足をばたばたさせた。
「墓の前で騒ぐやつがあるか!」
「!!
…な〜によ〜!偉そうに〜!!ほら皆帰るよ!」
ノーマは老人の事を無視するように私達の袖を引っ張った。
「むき〜!シカトか〜!」
でも、誰も相手をせずにただノーマと老人を交互に見ているだけ。
「ほらリッちゃん、行くよ!」
「ちょ・・・ノーマさん…」
痺れを切らしたノーマは、シャーリィの腕を掴むと連れていってしまう。
「行ってしまったわ。」
「ああ。」
「案内助かった。あとは一人で大丈夫じゃ。ほれ、早くせんと行ってしまうぞ。」
老人はそう言うと、さっきまでノーマが向かい合っていた墓に向かい合った。
セネルはその横顔を見ると何か問おうとしたけれど、やめたみたい。
「行こう、。」
「ええ。」
私達がその場を去ろうとすると、老人は私の腕を掴んだ。
「どうなさいましたか?」
「礼儀正しいお嬢さん……あの騒々しいサルを頼んだぞ。」
「……はい!!任せてください。」
老人のノーマへの愛が伝わってきて、思わず涙が出そうになった。
でもここで私が泣いてもどうにもならないので、ぐっと涙を堪えるとその場を離れる。
みんな出会う前は、色々な事があったんだろうなぁ。
今は当たり前のように一緒にいるけど、昔は違う。
あのご老人もノーマの過去の一人なのかも知れない。
興味をそそられるようなお話だったので、私は頭の中に考えを廻らせる。
すると、階段から足を踏み外して転げ落ちそうになった。
その時、少し前を降りていたセネルが振り返って私を支えてくれる。
「、気になるのはわかるけど、考えながら歩くと落ちるぞ。」
「う…うん…」
まともに答えないでいると、セネルは溜息をついて私の手を取った。
「繋いだら落ちないだろ?」
私は優しいセネルに甘えると、出された手に自分の手を乗せた。
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ザマラン登場☆
ノーマが大切でしょうがないんだなぁって思いますね^^
そして、ヒロインを信じてノーマを託してくれたようです。
その想いに応えられるでしょうかっ!?
2006/09/22
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