「初めましてぇ〜」
薄い緑の服を着こなして、頭には透明なヴェールをつけ、優しい雰囲気で微笑む美しい女性。
「名前…?グリューネ、だったと思うけどお…。」
彼女は記憶喪失のようで、自分の名前もあやふやだった。
こんな危ない遺跡の奥深くで眠っていた不思議な女性。
しかし、ここに置き去りにするわけにはいかないので、一緒にマウリッツの庵に戻ることにした。
「さっきのベッドはやばかったね〜。でも、無事にささやきの水晶が手に入ってよかった!なんか変な人形がくっついてきちゃったけどさ。」
ノーマがに話しかけた。
「ええ。ノーマが本当にあのベッドで寝ていたらどうなっていたかと思うと…」
はにこりと微笑む。
「いやいや〜それよりも、グー姉さんがあそこで寝てなくて良かったよ〜。」
ノーマはのちょっとした皮肉にも気付かず、グリューネの方を見た。
「ノーマちゃんだったかしら?」
「そうそう!!んでこっちがだよ、グー姉さん!!」
グリューネはを見ると手を出してぎゅ、と体を抱きしめた。
「ちゃん♪」
「!!」
はグリューネに抱きしめられてそのふかふかさに驚く。
そして、自分の手をグリューネの腰に回す。
「ふかふかですね〜。」
そのふかふかさを噛み締める。
きゅ、と抱きしめると香ってくる甘い匂い。
ふわっとした感触。力を込めると弾力があって、包み込んでくれる。
なんだか、幸せな気分になる。
「グリューネ…」
「なぁに?ちゃん。」
「また抱きしめてもいいですか?」
「いいわよぉ。いつでもどうぞぉ。」
は、グリューネにいつでも抱きしめ権を取り付けると、そっと離れた。
後ろでは羨ましそうな男性陣の姿。
「いいなぁ。ねぇねぇグー姉さん、私も私も!!」
ノーマもに続いて抱きしめ権を希望する。グリューネは「いいわよぉ。」というと、歩き出した。
「やった〜!!」
ノーマは嬉しそうにジャンプした。
それを見る男性陣の顔は、なんだか物欲しそうな顔をしていた。
マウリッツの庵に戻ると、夕方になっていた。
空は夕焼けで綺麗に赤く染まり、庵を照らす。
庵の影は裏山にかかり、周囲を流れる川は静けさを増す。
達は思ったより早く到着したので、一度灯台の街ウェルテスに戻って装備を再確認することにした。
グリューネは、散々寝たはずであるのに、まだ眠いと言って皆と別れて部屋に入っていく。
「お前ら、遅くならないうちに済ませて帰るぞ。」
ウィルが念を押す。
達はそれぞれ返事をすると歩き出した。
「あら、ウィルさん。お帰りなさい。」
街に入ろうと入り口まで来ると、穏やかそうな初老の女性に出くわした。
その女性はウィルを呼び止めると、二人でなにやら話し出した。
「先いこっか?」
ノーマがウィルの方をちらりと見て言う。
ウィルの話は長くなりそうだった。
「そうだな。」
クロエはそう答えると一歩踏み出した。
その時、
「。」
ウィルがを呼び止める。
「はい?」
はウィルを見ると、近寄っていった。
「最近仲間になったんです。」
ウィルはを初老の女性に紹介した。
「そう、私はミュゼットといいます。宜しくお願いしますね。」
ミュゼットという女性は優しくに微笑んだ。
「と申します。宜しくお願いいたします。」
はペコリとお辞儀をすると、ミュゼットを見つめた。
― !?
が微かに驚いたと同時に、ミュゼットも何かに気がついたようだ。
「あ、私、行きますね。」
はそそくさと言うと、セネル達のところに戻った。
「こら、!」
ウィルが呼び止めたが、はそれを聞かなかったことにして振り返らなかった。
「申し訳ありません。何分若いため無礼で。」
ウィルはミュゼットに謝る。
「いいえ。…でも、あの子…」
ミュゼットはさほど気にしておらず、の後ろ姿を見つめる。
「?知っておられるのですか?」
ウィルは不自然な発言をしたミュゼットに問う。
ミュゼットは気付いたようにウィルを見ると、
「…あの子はこの戦いで大きな苦しみを味わうかもしれませんね。」
と言った。
「あの子を守ってあげるのですよ、ウィルさん。」
「はぁ。」
ウィルは首を傾げると、「失礼します。」と言ってたちを追っていった。
街の入り口に一人たたずむミュゼット、彼女の目はたちが消えていった街の方を見つめている。
「そう、あの子。クルザンド王統国の王女、・ボラドが彼らと一緒にいるとは…
この戦いは、辛く、苦しい戦いになるでしょうね…」
ミュゼットはため息をつくと、自分も街中に向かって歩き出した。
― あの方は!あの方には…きっと私の正体が分かってしまった。
何故、何故こんなところにあの方が…源聖レクサリア皇国の聖皇陛下…
ウィルにばれてしまったら、私…
ここにいられない…
「どうした、?」
考え込んでいるに気付き、クロエが心配そうに声をかける。
「え、あ…大丈夫です。ごめんなさい。」
「そうか。それならいいが。」
はクロエの顔が見れなかった。
― 私が、クルザンド王統国の王女だって知ったら、クロエはどう思うかしら。
ヴァレンス家といえば、ガドリア王国の有名な騎士の家系。
お取り潰しになったとは聞いたけれど、きっと……
「!本当に大丈夫なのか!?」
クロエは強引にの肩を掴むと、自分の方に向かせた。
セネルとモーゼス、ノーマはびっくりしてクロエを見る。
「私だって心配なんだぞ!そんな顔をするくらいなら何で悩んでいるか話せ。なんのための仲間なんだ!」
クロエはの目を真剣に見つめた。
セネル達は何も言わずにそれを見つめる。は、皆を見回すと、皆もクロエと同じ顔をしていた。
「どうしたんだ?」
ウィルが追いついて来た。
は恐る恐るウィルの顔をみる
ウィルは怯えるを見ると、優しく言った。
「お前を守れと言われた。」
は苦しそうに頷く。
「はい…。」
「…どうした?言われたのはそれだけだが。」
ウィルは何気なくそう言うと、パン屋に入っていった。
― それ…だけ?あの方は、私の正体をウィルに言わないで下さったの!?
あの方は叡智ある聖皇と呼ばれている。きっと、何か考えがあるに違いない…。
クロエは、ウィルが入って行ったパン屋のドアとの顔を交互に見ながら、心配そうにしていた。
一難去ったは、胸を撫で下ろすとまっすぐクロエを見た。
― クロエは、私のことを何も知らないのに、仲間って言ってくれる。皆もそうだわ…。
こんな私を、皆は仲間だって思ってくれている!!私は、私は今自分ができる限りに彼らを裏切ってはいけない。
「…?」
クロエはの顔を心配そうに見つめる。
は、クロエににこりと微笑むと、
「ありがとう、クロエ!!」
といつも皆に抱き付くようにクロエに抱き付いた。
「!…あ、あぁ。」
その言葉にクロエは嬉しそうに微笑むと、を抱き締めた。
その力は強く、そして優しく。クロエの暖かさが身に沁みるようだった。
は少し泣きそうになると、クロエを抱き締める力を強くして我慢した。
「?」
抱き締められた力が強くなる事にクロエは気を掛ける。
女性の些細な行動は、女性にこそ伝わる。
クロエはが泣きそうになっているのに気がつくと、心配そうに声をかけたのだ。
「…クロエ、大好きです。」
はそう呟くと、一層強く抱き締める。
クロエは、の言葉を聞いて静かに微笑むと、
「ありがとう。」
と言った。
セネル達が見守る中、少しの間だけ二人はそのままでいた。
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お疲れ様でした☆
今回のテーマはクロエとの友情。
せっかくこの世界に入り込むなら、クロエと友達になりたい!
私はそう思います。
とクロエは結果的には敵同士だけど、仲間だし、友達でもある。
色々あっても、いつまでもそんな関係でいられるような感じにしたい。
ちょっとした私の願い。
男性と絡むのはたやすいけれど、女性と絡むのも必要な事なんじゃないかな、と。
次回はジェイが登場予定☆
2006/2/5