力強く掴まれ、身動きがとれずに何の抵抗もできないまま、は仲間達の視界の外へと連れ込まれる。

セネル達はの状況に気付くことなく、魔物にとどめを刺すために一気に爪術を使って戦っていた。




物陰に連れ込まれたは、自分に襲いかかって来た人物を見て驚く。


「!!」


「やっと、見つけたぞ。」



その人物はそう言うとの顎をクイとあげ、猿轡を噛ませる。

が恐怖の色を顔に浮かべると、その人物は嬉しそうにニヤついた。





「お前を探していたんだ。」




その人物はの耳にこっそりと囁いた。



バシッ



突然、の顔に衝撃が走る。



「んぅっ…」



は体ごと吹っ飛んだ。




「この前はよくもやってくれたな、このアマ…」



そう言うと、倒れているを足蹴にする。



「うっ…」



は深く唸ると、その人物を睨んだ。




その人物とは、隠し砦で牢番をしていた男だった。



ガッ



牢番は容赦なくを蹴る。




「うぅっ…あぁっ…」




蹴られた所を手で抱えると、今度は手を思いきり蹴られる。



ガッ



バシッ



は痣だらけになり、痛みが酷く次第に動けなくなる。



「この背中の傷、どうしてくれるんだっ!!」


牢番はこう言うと蹴り、



「牢に閉じ込められた屈辱、許さねぇ!!!」

そう言うと髪を引っ張って、頬を殴った。



「うぐっ…」


の意識が遠のき目が虚ろになると、牢番は胸ぐらを掴み、ビリと服を破り始める。

そして、牢番の手は破れた服を縫っての肌を弄った。



「…や…」



意識が遠のきながらも、は抵抗しようとするが、力が入らず抵抗さえも出来ない。



「観念しな。」



牢番はこう言うと、の下腹部に手を入れた。



「んんっー!…」


は大きく目を開く。


目からは大粒の涙が溢れ、自分の情けなさに腹が立つ。


涙は絶え間なく溢れ頬を伝う。その滴は熱く、苦しい。






意識が遠のく。


自分が知らないうちにこんな男に汚されるかと思うと悔しい。



― でも、もうどうにもならない…



自分の状況に諦めかける。




その時、



「ぐぁっ…」


牢番がそう叫ぶと、体を弓なりになった。



苦痛に悶えている牢番の後ろには、ジェイが苦無を構えて立っていた。

牢番の背中には、それと同じ苦無が刺さっている。



さん!!」



ジェイはの名前を呼ぶと、じりじり牢番に近付いた。



「ぐ…くそっ…」

牢番は自分の背中から苦無を引き抜くとジェイに投げつける。

ジェイは素早く避けると、牢番を見た。

しかし、牢番は苦無を投げたと同時に逃げ出し、苦無の届かない所まで歩を進めていた。



「チッ…」



ジェイは舌打ちすると、牢番を追わずにに駆け寄り抱き上げた。



さん!大丈夫ですか!?」



必死に名前を呼ぶ。


しかしの意識は遠のき、目は遠くを見て反応する気配は無い。



さん!」



悔しそうに名前を呼ぶが、反応はない。しばらくすると、静かにの目が閉じていく。



さん!!」




必死に名前を呼んでも、は答える事はなかった。









― ジェイ…








は心の中でジェイを呼ぶと、ふっと意識を絶った。
















































― ねぇ、



ステラ?



― ふふ、そうよ。



ごめんなさいね、助けに行くのが遅くなってしまって。



― いいのよ。私は大丈夫。



でも…。



― 気にしないで。
  そういえば、この前より私の声聞こえるみたいね。



…そういえば…。なんでかしら?



― それは…




































「セネルさん…。」



ジェイが低い声でセネルを呼んでいる。



「わかってる。がこんな事になったのは、俺達のせいだ。」



セネルは下を向きながら言った。



「しかし、私達は戦っていたのだぞ!」



クロエがジェイに言う。


「違う、クロエ。俺達はの事を聞いていたのに守らなかった。

 守らなければいけなかったのに……戦わせたんだ。」


「クーリッジ…」



ジェイは舌打ちすると、キッと皆を睨んだ。



「なぜ、気付かなかったんですか!

 もう少し、もう少し早ければ、さんはあんなに傷つかなかった。」


悔しそうに言うと、彼らから顔を逸らす。



「ジェイ、すまない。私が後ろに下がれと言わなければ…」


ウィルが謝罪しようとすると、モーゼスが止める。


「ウィの字、もう何を言っても同じじゃ。が傷付いたことに取り返しはつかん…」


モーゼスはそう言うと、自分の太腿を拳で殴る。


「…そうだな。

 俺達に出来るのは、の意識が戻ったら、詫びをいれる事だ。」


ウィルも辛そうにを見ている。


この雰囲気に焦ったノーマは、あわあわと皆の顔を見た。


「そ、そうだね〜。よし、もう少し回復爪術かけよっか。」


ノーマはそう言うと、眠っているに爪術をかけた。



「…」


「…」


「…」


「…」


ジェイ、セネル、モーゼス、ウィルは一言も口をきかずに黙って立ち尽くす。



ガチャ



そこへ、フェニモールが入ってきた。


「皆さん、何をしてるんですか?こんな暗い空気で…、

 さんが起きた時にこんな空気では、元気になれませんよ!」


フェニモールは入って来て早々にこう言うと、「はい、頭を冷やしてきてください!!」と

暗い雰囲気を醸し出している男四人をテントから追い出した。



「フェモちゃん強いね〜。」



ノーマが楽しそうに言うのを聞くと、フェニモールは笑った。



「ああいう暗い雰囲気を出している人達は、頭を冷やすべきなんですよ。

 男の人達って、すぐ自分の責任にしようとしてしまうんですから!」



フェニモールの意見にクロエが頷く。


「…確かにそうだな。」






「…さん、大丈夫ですか?」


「んー、傷は治ったと思うんだけどー。あとは意識が戻れば…」


ノーマはそう言うと、心配そうにの顔を見た。



「ここは私が見ていますから、お二人は少し休んでください。」


フェニモールはクロエとノーマに言うと、のベッドの横に腰を降ろした。

「…じゃあ、頼んじゃおっかな。」

「おい!ノーマ!」

「クー、ここで私達が休んでおかないと、新たな犠牲が出た時に対処できないかもしれないよ?」


クロエの反応にノーマはこう言った。

クロエはしばらく考え、
しぶしぶ「わかった。」と言うと、静かにテントを出て行った。



「じゃあ、フェモちゃん!宜しくね!」

ノーマも同じ様に出て行く。








さん、目を開けてください。皆さん、待っていますよ。」

フェニモールはそう言うと、手を合わせて祈った。











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殴られたり蹴られたり、ごめんなさい〜。

牢番はかなりのオリキャラですね。

まあ、また出てきますけど(笑)

私もジェイにあんなふうに助けられたいわ♪

次回はフェモちゃんとお喋りします☆ 

2006/02/08