あれ、ここはどこ?


…」

「ヴァーツラフ兄様!!お帰りなさいませ。」


あれは、私と兄様?


「この度の遠征、どうでしたか?」

「まあまあだった。

 それより、この傷はどうしたんだ?」


あれは…


「こ、これは、裏庭で転んだのです!!」



そうだ。これは、私の小さい頃の…



「あの教育係にやられたんだろう!!

 の肌に傷が残ったらどうしてくれるんだ!!」


兄様は私の腕の傷を見て、すぐ教育係にやられたってわかったんだわ。

その後すぐに教育係は外されて、行方不明に…




、お前は俺が守る。だからずっと傍にいろ。」




兄様はこう言ったわ。




…兄様のことは大好きよ。祖国のクルザンドも大事。…でも、


 罪のない人々が殺されていくのは耐えられない。


 皆が平和に手を取り合って創っていく世界。 


 これが、私の望むもの…





「そんなものはまやかしに過ぎん!


 人は憎む。恨み、妬みが人を支配する。


 平和などはありはしない。


 あるのは、戦いの跡に残る世界のみだ。」




「そんなことはありません!


 人は不完全だからこそ、可能性を秘めている。


 平和は、人々の手で創っていけるのです!」






 クルザンドの王女がそんな事では務まらんぞ!!」




「私はクルザンドの王女でも、そうでなくても、


 この世界を愛しているのです。


 私のこの想いは変えられません!」




!!」




兄様に殴られる!!


そう思ったけれど、兄様は殴らなかったんだ。




「お前の想いは果たされん。」




冷たい声で言われる。


本当は、私の想いなんて幻想に過ぎないかもしれない、ふと思ってしまう。


想いが揺らぐと、兄様に圧倒されてしまう…







フワ…




何…?暖かい。誰かが私の手を握っている。


誰かが私を支えてくれる。


誰かが私を支えてくれる限り、


私の想いは、まだ希望を持てる…!





「人は、人は皆平等です。皆が手を取り合う可能性が少しでもある限り、

 私の想いは消えることはありません!!!」




「くうっ…」




…私は、兄様の行為を許すわけにはいかないのです!













ごめんなさい、兄様。




こんな妹で、




ごめんなさい…



















「ん…」


はゆっくりと目をあける。視界にはフェニモールの顔が写る。


「フェニモール…」
「あ、さん!よかった、心配したんですよ!」


フェニモールは嬉しそうに笑うと、椅子から立ち上がった。



「フェニモール。」

「なんですか?」




「手を握ってくれたでしょう?」



「…え?」



「あの暖かさに助けられたわ。ありがとう。」



「………あ、はい。」


「?」


フェニモールは戸惑った様に返事をすると、椅子にまた座り直した。




「では、当分は休んでくださいね。」


そう言うと、の布団を掛け直す。


「当分?だめよ。私は行かなければならないもの。」


はフェニモールを見上げた。


「な、何を言っているんですか!こんなに傷ついて…
それでもなお、戦いに行くと言うんですか!」



フェニモールはキッとを見た。



「傷つくのを恐れていたら、どこにも進めないわ。」



はテントの天井を見上げながら言う。

「進むのは、何も今じゃなくたっていいじゃないですか!戦いが終わってからだって、十分進めますよ!」



フェニモールはそう言うと、一息ついた。



そして、心を落ち着けて言う。




「私は、さんが心配なんです…」




フェニモールはそう言うと、トンッっと寝ているの肩に、おでこを当てる。



「行かないでください、さん。」



「フェニモール…」



はフェニモールの方を見ると



「人それぞれには役目があるの。


私は戦いが終わるまで待つという役目じゃないのよ。


…私は、行かないといけないの。」



そう言い布団から手を出すと、フェニモールの頭を撫でた。



「ありがとう、フェニモール。



心配してくれて…ありがとう。」



はそう言うと、フェニモールの髪を梳く。




























「…私、私だけが皆さんの役に立てないんだわ…」



フェニモールは顔を伏せながら呟いた。


声はくぐもって震え、手はの肩をぎゅ、と握っている。


握られた肩は、フェニモールの爪が食い込んで少し痛い。


しかし、フェニモールから自分の心を打ち明けようとしてるのに気付くと、何も言わずに聞こうとする。






「私、いつも待っているだけなんて嫌。皆さんのお役に立てないなんて嫌なんです!」



フェニモールはベッドを拳で叩く。

その揺れを体で感じながら、はフェニモールの髪を優しく梳く。



「私、さんみたいに強くない。


自分で何が出来るかもわからない。


どうすればいいか…わからないんです。」



フェニモールはそう言うと、ゆっくりと顔を上げた。


顔は赤く、目からは宝石のような涙がぽろぽろと流れる。
口は悔しさを噛み締め、目は真っ直ぐとを見ていた。




「フェニモール。」



「…なんですか?」



「私達は、色々な役目を持って生まれて来るわ。


それには、些細なものや、世界を揺るがす程の大事もある。


どんな役目を持って生まれて来るかはわからないけれど、私達はそれをするために生きて行くのよ。


役目は一つなんかじゃないし、いつ起こるかもわからない。


フェニモールにはフェニモールの、大切な役目があるのよ。


今はその時じゃなくても、きっとその時は来るわ。


ね?フェニモール。」




はそう言うと、優しく微笑んだ。





「…さんは、陸の民だからそう言えるのよ。

 私達は、やっぱり違います。水の民である私には…

 そんな考え方はできません。」



フェニモールはの視線を避けるように横を向く。



「そうやって、逃げては駄目よ。


 お互いを知らないと、


 お互いの想いを知らないと。


私達は同じ『人』なのだから。


同じ世界に住む『人』なのだから。


陸とか水とかの言葉の壁に惑わされずに、


手を取り合って生きていけるのよ。」





「………」




「私達は世界の転機に生きているのよ。フェニモール。


今まで別れていた陸と水の民が手を取り合える世界。




この世界は『人』が一つになろうとしているの。


私とフェニモールのようにね。


私とフェニモールは、そんな世界の、担い手となっているのよ。」



ほうら、重要な役割でしょう?と、は言った。


フェニモールはくしゃくしゃな顔で、深く頷く。



「認めてしまえば、こんな簡単で、嬉しいことはないでしょう?」


フェニモールは、深く何度も頷く。



は優しくフェニモールの頭を撫でる。

フェニモールは穏やかな顔で笑うと、




「私にも、役目があるんですね。」




と言った。























そう、人にはそれぞれ役割がある。



それがどんな役割かは分からないけれど、



それがその人の運命ならば、



どんなに良い事でも悪い事でも、受け入れて全うしなければ…



ならないの。













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お疲れ様でした。

男の子だけではなく、女の子と絡ませるの楽しいですね。

私はフェモちゃんがすごく好き。

短い間だけど、彼女は一生懸命生きてる。

きっと色んな悩みを持っているだろうに、一生懸命生きている姿が

儚くて、興味をそそりますね。

次はどうしようかなぁ。


2006/02/09