清々しい朝。
今日も晴れてる。







私は窓を開けると、そこに座って外を見た。







雲一つない空に感嘆する。







― 絶好の歌日和だわ!!



  ふふ。今日はチャバがここに来てくれると言っていたし、仕度して外で待ってようっと!







私は急いで着替えると、部屋を出た。




























「ららら〜♪」






歌いながら階段を降りて行くと、ドアの前にすっごく不機嫌そうなハリエットが仁王立ちしていた。








!!」




「な、何?」




「今日こそハティと一緒に出かけましょ!!」







ハリエットは私に有無を言わせずスカートを掴むと、引っ張って行こうとした。







「だ…だだだめよ!今日は友達が来るの!!」




「…友達?」




「そう!」




「…ほんとに?ハティに嘘ついてない?」




「ついてないわ。だからごめんね、行けないのよ。」






私が申し訳なく言うと、ハリエットは地団駄踏んで悔しがった。
そして、












「なんでハティがあいつんちに一人で行かなきゃいけないのよっ!!!」










と大声で叫びながら出て行った。
















「…………。」














私はしばらくその様子に圧倒されてたけど、ハッとチャバの事を思い出して外に出た。



























































ワルターは今日は来ない。さびしいけど、お仕事じゃしょうがないよね。

それに、チャバにドーンとぶつかられても困っちゃうし(笑)























。」




「なあに、ワルター。」




「…明日から…当分は来れない。」




「えっ…そうなの?」




「……ああ。」




「親衛隊長の仕事?」




「そんなようなものだ。」




「そっか…寂しいな。」




「…すまない。」




「あら、何で謝るの!?私は大丈夫よ。心配しないで…。」




「ああ……。」












最後、ワルターは心配そうな顔で私を見てたなぁ。


でも…それよりも、仕事みたいなものだって言った時の辛そうな彼の顔の方が気になる。












― 私、ワルターのが心配だわ…。











そういえば、私の話はたくさん聞いてくれるのに、ワルターは自分の事を話そうとはしない。
もしかして私…信頼されてないのかしら。




そう思うと、悲しくなる。




…ううん、違う。ワルターは自分の事を話すような人じゃないものね。きっと、大丈夫!!





































































ちゃーーーん!!!」




ボケッと考え事をしていたら、私を呼ぶ声が聞こえた。

ちゃん付けしてるし、今私を呼ぶ人はチャバしかいない。








「チャバ!いらっしゃい。」



「来たよ☆ちゃんとお喋りしたり歌聞くために、チャバ参上っ!」



「あははっ!!」







チャバはにこにこしながら私の目の前に座った。









「ねえチャバ。あなたってよく童顔って言われない?」




「言われるけど…。なんで?」




「チャバって実際の年齢より幼く見えるんですもの。」




「?実際の年齢って……。ちゃんにオイラの歳教えてないよね?」




「ふふ…そうだけど、きっとチャバは二十歳くらいだと思うの。ええ、ただの勘よ?」







チャバはびっくりして目を点にすると、ほけ〜っと私を見た。そして、







「すごい!!すごいよちゃん!大当たり!オイラ二十歳なんだよーっ♪」






チャバは大手を挙げて喜んだ。






「やっぱり、そんな気がしたの!」





私も便乗して喜んだ。






























            *





























「そっかぁ。ちゃんはそのお仲間さん達と元通りになりたいんだね。」




「うん。でもね、怖いの。私を受け入れてくれなかったらと思って。」





私はほんとに軽く、実名とか実際の事とかを伏せて、悩み事をチャバに話した。
チャバは凄く真剣に聞いてくれて、ちゃんと話に相槌を打ってくれた。(ワルターは相槌どころか、意見もなく「そうか。」って言うだけなのよ。あ、不満ではないの。聞いてくれるだけで嬉しいんだから!!それに彼は事情を知ってるし。)






ちゃんも勇気出さなきゃね。でもさ、そのお仲間さん達も同時に勇気出さないと、お互い空回っちゃうかもしれないね。」



「…そうよね。」



「実はオイラのアニキも、何だか最近そんな事で悩んでるみたいなんだ。だから子分のオイラ達がハッパかけてるんだけど、なかなかそうもいかないみたいでさーっ。」





チャバは「やんなっちゃうよ。」と肩を上げた。





「チャバのアニキさん?」




「うん。アニキは凄いんだ。子分のオイラ達を家族だって親しんでくれて……。オイラの憧れなんだ!」




「へぇ…チャバが憧れる人なのだから、とっても素晴らしい方なんでしょうね。」




「うん!いつか会わせてあげるよ!」




「ありがとう、チャバ!




…さあて、そろそろ歌おうかしら?」







私がニヤリとすると、チャバもニヤリとした。









「待ってましたーっ!!」




「じゃあ、歌うわね!」

















目を瞑って深呼吸。














そして息を大きく吸って目を開けて歌い出そうとした時、庭の入口にセネルがいるのに気付いた。








その瞬間、私の顔が引きつる。
…声も出ない。体も動かない。











― 怖い!!!










セネルは目を見開いて私を見ると、ずんずんとこちらに歩いて来た。
チャバも彼に気付く。チャバは「あ。」と言うと立ち上がった。







セネルにはチャバが見えてないのか、いきなり私の腕を掴むと、






「ウィルが呼んでる!!!」





と言って引っ張った。








「あっえっ…。」








無理やり引っ張られて転びそうになりながら私はチャバの方を見た。
チャバは呆気にとられている。









「ごめん、チャバ!歌はまた今度披露するわね。」



「……あ、うん。…じゃなくて、どうしたんですかセネルさん!!」








チャバは彼の名を呼んだ。






セネルの名を。






― どうして?セネルとチャバは知り合いなの!?







セネルは小さく舌打ちして立ち止まると、振り返った。
彼の顔は、悲しみと怒りに満ちている。









― 怖い。








私は再びそう思うと、彼から顔を逸らした。











「なんか用なのか、チャバ。」




「…いえ。アニキもウィルさんの家にいるんですか?」




「モーゼスもいる。」











― !?

  チャバのアニキさんて、モーゼスだったんだ…。





…チャバが憧れるの分かるかもしれない。モーゼスって仲間とか家族に対しては、凄く繋がりを大事にするものね。














セネルは私を掴んでいる手の力を強めた。







「仲間がみんないる。も連れて行かなきゃならないんだ。」




「そうですか。…じゃあ、また今度歌を聞かせて、ちゃん。」




「ええ、ぜひ。」







チャバは私に同情的視線を送ると、私達を通り越して庭を出ていった。













































― 皆がいるんだ。
  どうしよう…。どうすればいいんだろう。どうすれば…。







ウィルの家に着くまでの間、私とセネルは一言も話さなかった。掴まれている手は痛くないのに、そこから伝わる体温が私の胸をズキズキさせた。




















ウィルの家に着くと、セネルはそのドアを乱暴に開けた。






「来たか。」





恐る恐る入ると、皆揃っていた。
数日振りに見る顔。でもなんだか、懐かしい。







「………。」






仲間達は一斉に私を見た。



その視線の痛さは前とちっとも変わっていなくて、私は耐え切れずに目を逸らした。
こんな目を向けるのなら、いっそ私を連れてこないでくれればいいのに。
私は悲しくなって目を伏せる。








にも俺達と一緒にシャーリィに会いに行ってもらう。」






ウィルはそう言うと「いくぞ。」と皆に声をかけた。
皆は彼に続く。私も何も言わず彼に続いた。







― そういうことかぁ。




シャーリィに会いに行くんだ…。私も会いたい。けど…、


どんな顔すればいいんだろう?どんな顔してシャーリィに会えばいいんだろう?


それより、なんで私も皆と一緒に行かなきゃいけないのかしら?


こんな私なんていらないような雰囲気の移動なんて、お互い辛いだけなのに。


























― 牢屋にいるみたい。








































































「着いたぞ。」



「皆さん、わざわざお疲れ様です。」




今までなかった声を聞いて顔を上げると、そこにはひまわりのようなフェニモールの笑顔。






さん、お久しぶりです!」



「フェニモール!!!久しぶり!!!」





私はつい嬉しくて、フェニモールを抱きしめた。
フェニモールは照れたようにくすくす笑ったが、文句も言わずに静かに抱きしめられてくれた。







「さ、入ってください。シャーリィに会って、色々励ましてあげてくださいね!」






フェニモールはそう言うと私から離れて皆を案内しようとした。
その時、庵の方から誰かが歩いて来る。










「あ、ワルターさん…。」









フェニモールが声をかけると彼はこちらに気付く。









「!?貴様ら…!!」








ワルターはセネルを見つけると睨みつけた。それに対抗するようにセネルも睨みつける。









「何しに来た!?ここは貴様らが来るところではない。帰れ!!」





「親書を渡しに来たのでもか?」





「……。」





「文句はないよな。」





「くっ……。」








悔しそうなワルターの顔。
私は心配で心配で、彼の顔をじーっと見ていた。
それに気付いたみたいで、ワルターはセネル達の中にいる私を見つけると驚きの声を上げた。












「……!?……」











ワルターにとって、この中にいる私はどんなに滑稽に見えたでしょうね?
きっと今の自分の顔を表現すると、怖い所に一匹で放り投げられた子犬が助けを求めるように彼を見ているみたい、だと思う。


そのぐらい、今まで心地よかったこの場所にいるのが辛いの。







私は涙を堪えるように口を一文字に結ぶと、ワルターだけを見つめた。


ワルターは一瞬口を開きかけたけど、ゆっくり閉じて私を見た。















そしてその両手を、私のために広げてくれた。


















「ワルターッ……!!」
















私は彼に向かって、一目散に走っていった。
ワルターはそんな私を抱きとめると、耳に囁いた。









「すまない、こんな事になっているとは…。」





「ううんっ!!!」





「大丈夫か…?」





「うん…。でも、怖かった…。」










ワルターは優しく抱きしめてくれた。
そしてセネル達を一睨みすると、













「フェニモール、は俺が連れて行く。」






と言って私を歩くように促した。










「…あ…はい。」









フェニモールの驚いたような声が聞こえる。
そしてちらっとセネル達を見ると、皆が皆、私の行動に驚いているみたいで、状況が分からず立ちつくしていた。













*******************

結局ワルター絡み(苦笑)

今回やりたかった事。 → ワルターに泣きつく。
書いていて幸せでしたよぅ♪(笑)

チャバが何だか物分りのいい男になっている!?
うわーん、エセチャバだぁ!!!!
とか言いながら、話はこのまま続いていきます。

2006/06/18