「ロマンティックだわ〜。」
「そうか?
水舞の儀式の他にも、私達には色々な儀式がある。陸の民にはないのだろう?」
「ま、あるわよ!でも皆バラバラ…。たくさんの考え方があって様々なの。
だから昔からの伝統などは消えて行く…。」
「寂しい種族だな。」
「そうかもしれないわね。」
「メルネスー!メルネス…!!」
「…なんだ、何か用か?」
「ああ。
ではなく!…メルネス、何をしている!?この女は陸の民ではないか!!」
「そうだが?」
「そうだがだと!?」
「そう睨むな。この娘は陸の民にしては珍しい娘なのだ。
あぁ、こいつはな、私の親衛隊長だ。」
「…親衛隊長さん?こんにちは、初めまして。
…そういえばあなた、メルネスという名前なの?」
「メルネスとは私の役職のようなものだ、名前ではない。
して、何か用があったのだろう?」
「…あ、ああ。長が呼んでいる。」
「わかった。お前はこの娘の相手をしてろ。堅いお前もびっくりするぐらい面白い思いをするだろう。
いいか?私が帰って来るまでこの娘を逃すのではないぞ?」
「……。」
「これはメルネスとしての命令だ。」
「…はっ。」
この出会い…。
全ては、私の……。
(これ、あのイメージの続き…?)
ガバッ
ガンっ
私は勢いよく起き上がった。その勢いでジェイとおでこをぶつけてしまう。
「てっ………。
イキナリ起き上がらないで下さいよ!」
「いたた〜っ、だってー…、あら、なんで皆私を見ているのですか?」
ジェイとおでこがぶつかったのもこのせい。皆が、寝ている私を見ていたみたい。
ちょうど私が起き上がる位置にいたのがジェイってこと。
「があまりにもうなっとるからじゃ。」
「うなって…?」
「変な夢でも見とったんか?」
「夢……そうかもしれません。」
「僕に頭をぶつけるくらいの夢、聞かせてもらいましょうか?」
「…ジェイ、目が恐いです。」
私達がぎゃあぎゃあ騒いでいると、ウィルが溜め息をついて立ち上がった。
「お前達、もう行くぞ。」
「はーい。」
私達は浜辺を出ると、次の目的地へと歩き出した。
私以外の皆が目的地のイメージを見ているので、そこを見つけるのは容易いはず。
「。」
「ん、なんですかクロエ。」
「は…その、クーリッジのこと…」
「セネルのこと?」
「どう思ってる?」
クロエの意図はわからなかったけれど、なんとなくこう答えなければいけないと思って、
「好きです。」
と答えた。
「えっ…!!」
「セネルもクロエもみーんな大好きです!!」
「皆…?皆か。」
クロエが聞きたい事、分かったような気がする。
…もう、クロエったら!
「ええ!
…もしかしてクロエ、セネルの事好きなのですか?」
「うぇっ!?」
「…クロエは素直ですねぇ(笑)」
「う…。」
「大丈夫です!私も協力しますから!」
「本当か!?」
「はい!」
次のモニュメントに着くまで、私達はセネルについて話し合った。
この恋のお話のお蔭で、遠かったクロエとの位置が一気に縮まった気がする。
もしかしてクロエったら、セネルのことで私を避けていたのかしら?
うーんっ?
なんだか足取りが重い。あんなにたくさん寝たはずなのに疲れが溜まってフラフラする。
どうしよう…もう着くのにいつもより皆の足手まといになりそうなくらい辛い…。
「クーリッジはシャーリィのことを本当に…
…?顔色が悪いな。大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。
…それで、セネルがシャーリィを何ですか?」
私は適当に誤魔化すと、話を促した。
「着いたー!」
「やっとですね。」
バリーン!!
「ぎゃあっ」
雷が落ちるような音の後、モーゼスの叫びが聞こえた。
私達は彼を見ると、呆れてしまう。
彼は、膝を抱えて震えていた。
そしてその音を恐がった人がもう一人。
「クロエ?」
「…。」
クロエは私に抱き付いていた。
「クロエ、大丈夫ですよ。」
「あっ…すまない、。」
「いいですけど…、クロエは雷が苦手なのですか?」
「…恥ずかしながら…。」
「女の子ですね♪」
私はクロエの頬をつんつんとつついた。
「ここは蒸し暑いな。」
「ええ。それに雷も落ちて来る…。どさくさに紛れてモーゼスさんに雷を落として殺っちゃっても、バレなそうですね。」
「やめぃ、ジェー坊!!」
「あ、聞こえちゃいました?それなら堂々と殺っても大丈夫そうですね。」
ジェイは楽しそうにニヤリと笑った。
「!!ワシを助けると思って手を繋ぐんじゃ!」
「え?あ、はい。」
ジェイとモーゼス二人だけの会話だったはずなのに、何故だか巻き込まれてしまいました。
私がモーゼスと手を繋ごうとすると、ジェイが走って来てモーゼスの手を叩く。
「やだなぁ、冗談ですよー。モーゼスさんたら冗談が通じないんですからー。」
ジェイの顔、冗談だなんて顔はしてない。
「…残念じゃのう。」
「…雷落としましょうか?」
「ー!」
「…チッ。嘘ですよ。」
ジェイは舌打ちするとモーゼスを引っ張っていった。
「は人気者だな。」
「?何でですか?」
「クー、ちゃんは鈍いんだよ。」
「そうなのか?」
「私が鈍い?」
「そーそー。
えーとね、ちゃんには他の人にはないような魅力があるって話だよ。」
「魅力だなんて、そんな…。」
「本当だって!だってさ、私達には見向きもしないようなワルちんもちゃんには心許してるでしょ?
だからちゃんもワルちんだけは普通に喋るし。」
「そうなのか!?」
「…クーも鈍いね。例外はリッちゃんとかフェモちゃんとか。
でもそれ以外だとワルちんだけなんだよ。」
そうなんだ!
自分でもよくわかってなかったけれど…ノーマってよく見ていますねぇ。
確かにそうかもしれない。
あとステラとチャバにかしら…、普通に話すのはこの方達だけかもしれない。
…でも、どうしてなのだろう。
「あたし達も仲間なんだからさ、普通に喋ってよ!」
「それは俺も思ってた。」
セネルが話に入って来た。
「ワルターだけなんて、ずるいよな。」
「思ってただなんて、セネセネが一番始めに気付いたんじゃないの?
それでセネセネが悶々としてたの、あたし知ってるんだからさー。」
「悶々なんてしてないぞ!」
「あっそー、まぁいいけど。
だからさ、普通に喋ってよちゃん♪」
「そうじゃ!ワシも普通に喋って欲しいのぅ。」
いつの間にか皆集まって来た。
この雰囲気は「喋ってよ?」というよりか、「喋れ!」という雰囲気…。
「…は、はい。」
私が返事をすると、ノーマはチッチッと指を振って、
「はい、じゃないよー。」
と言った。
…はぁ、ちょっと違和感があるけど、
「うん。」
と答えてみた。
すると皆嬉しそうな顔で、「うんうん。」とたくさん頷いてくれる。
「あ、でも条件があるわ!」
「え、何!?」
「時々出てしまうですます調に文句を言わない。
あと、ウィルとグリューネには前のままで話します。年上の方ですから。」
私が手をぎゅっと握り締めて訴えると、皆は圧倒されたように頷いた。
「…俺はが話しやすいのが一番だからいいぞ。」
「おっ、オヤジ無理しちゃって〜。」
「無理などしてない。」
腕を組んで膨れるウィルが可愛くて、私は笑ってしまった。
…ウィル、ごめんなさいね。
「あ、一つ目。」
喋りながらだと、進むのも早くなる。
魔物に会うこともなく一つ目の菱形の光る物体に辿り着いた。
そしていつもの様にセネルとクロエが触れる。
「流れ星?」
「流れ星だったわね。」
「…なんだか違和感があるな。」
クロエが突然妙な事を言った。
「流れ星に違和感?…クロエさん、何かに気付いたんですか!?」
ジェイはクロエに食いついた。しかしクロエは顔を赤くすると、
「いや、の口調が…。」
「…そんなことですか。紛らわしい事言わないで下さいよ。」
ジェイは怒って彼女に言った。
「す、すまない。」
クロエは小さくなると、ますます顔を赤くした。
「ジェー坊、何であげなもんが見えたんじゃろか?」
モーゼスはジェイに言った。しかしジェイは両手を挙げると、
「わかりませんよ。」
と言って先に歩いて行った。
「ジェイ、どうしたのかしら。」
「どったの?ちゃん。」
「…なんだかジェイがカリカリしてない?」
「そっかなぁ?いつもと一緒だと思うけど。」
いつもと一緒ならいいのだけど…、やっぱりなんだかカリカリしてる気がする…。
「二つ目見っけ〜。」
ノーマの言葉に皆振り向く。そこには二つ目の菱形の光る物体。
「よしっ。」
二人は手を挙げた。
「海?」
「海だ。」
「海だな。」
「海じゃな。」
「海ですね。」
「海だねぇ。」
「海だわねぇ。」
皆はもういいっていうほど海という言葉を連発した。
見えたのは本当に海だけ。何の意味があるのだろう?
「…考えても埒があかんな。先に進むぞ。」
「ああ。」
ウィルはそう言って歩き出した。私達も無言でついていく。
皆あの映像のことを考えてるんだろうな。あまりにも不明過ぎるもの。
本当に、何が言いたいのかわからないよ…。
そう思っている間に、三個目の菱形の光る物体に辿り着く。
今度見えたのは水柱。
「ちょっと「誰か」!もっとわかりやすく説明してよー!!」
ノーマが叫ぶけれど、何の返答もない。
「ダンマリだな。」
セネルはそう言うと、肩を落とした。
「しばらく休むか。」
「そうね。」
セネルの提案に私達は頷いた。
私の疲労感はどんどん増している。魔物がでないだけ助かってるわ。
一体どうしてこんなに疲れてるのかしら。もーっ。
「、聞いていいか?」
「何?」
「はヴァーツラフと随分歳が離れてるよな。」
セネルはそう言うと笑った。
「ヴァーツラフの子供でもおかしくないだろ?」
「うん。兄様と歩いていると、若い恋人か娘によく間違えられたの。
兄様はそれを気にしていたわね。ふふ。」
「やっぱりな。実は少し考えちゃったんだ。もしかしたら子供なんじゃないかってさ。」
「まぁ。」
私達は笑い合うと、クルザンドの話を少しした。
他の皆はというと、休んでいたりストレッチしていたり。
部屋の隅ではノーマとクロエがまたひそひそ話をしていた。
私は立ち上がると、彼女達の方へ歩いて行く。
「…だから、頑張るのよクー!!」
「ほ、本当にやるのか?」
「ったりまえでしょ!!…ってちゃん!?」
ノーマは私がその内緒話を聞いているのに気付くと、かなり驚いていた。
聞いてはいけなかったのかしら?
「あ、いいんだノーマ。」
「え、なに?ちゃん知ってるの?」
「…う、うん。」
ノーマの問いに、クロエは赤くなった。もしかしてセネル関係の話かしら。
「セネルに何かするの?」
「そーそー。雷が鳴ったどさくさに抱き付いちゃえって作戦をね☆」
私は手をポンと打つと、
「それはいいわね!!」
と賛成した。
それほど良い案はないじゃない!
これなら誰にも邪魔されずにクロエはきっかけを掴めるわ!!
なーんて思っていたのだけど…。とんだ邪魔が入ったの。
バリーン!!!
「キャあ……。」
「あ…。」
雷が鳴ってクロエも準備万端だというとき、セネルに抱き付いたのはなんと、
モーゼスだった。
「何やってんだよ、モーゼス。」
「どうもデカイ音は苦手でのう…。クカカ。」
クロエは抱き付く寸前の微妙な恰好で放心状態。
なんてことなの!?
私はモーゼスの行動に頭に来ると、
「モーゼス、こっちに来なさい!」
と彼の手を握った。
そして離さない。
「!!!手を繋いでくれるんか!?」
「ええ!(二度とクロエのチャンスを逃さないためにね!!)」
「ワシの気持ちが通じたんじゃな!」
「モーゼスの気持ち…?」
私が訝しげにモーゼスを見ると、彼の顔がどんどん近付いてきた。
え?
えっ…?
もう少しで触れそうという所で、モーゼスは横に吹っ飛んだ。
「あ、すみません。いたんですかモーゼスさん。」
「ジェー坊…ワレ…!!」
モーゼスとジェイの追いかけっこが始まった。
私は状況がよく飲み込めずに立ち尽くしてしまう。
そしてノーマにポンと肩を叩かれて我に返った。
ノーマはクロエを無言で指差した。
クロエを見てみると、まださっきと同じ恰好で放心している。
「可哀相、クロエ。」
「うん。でもちゃんは危なかったけどね。」
「え、私が?」
「…鈍感。」
鈍感…?
ノーマは私にそう言うと、放心状態のクロエを揺り起こした。
「まだ次があるって!」
「はぁ。いいんだ、私など…。」
クロエは大きな溜息をついて明らかにガックリしていた。
…本当にクロエは可哀相。
最後の部屋に着いた。
頭がガンガンして足がフラフラする。
こんな場合じゃないのに!
立っているのがやっとなんて。
私は壁に手をつくと、深呼吸した。
最後の電撃に耐えないと!
皆の足手まといだけは嫌。私一人が足手まといになるだけで、誰かが怪我をするかもしれない。
もしくは…。
ううん、そんなこと考えてはだめ。気を確かに持つのよ、!!
私はそんなやわな人間じゃないわ!
私は頬をパンッと叩くと、セネルとクロエを見守った。
そして彼らが菱形の光る物体に触れると同時に来る痛み。
「ああぁっ!!」
それも今度のは、いつも以上に鋭い痛み。
どうしよう………私、だめかもしれない……。
ふと途切れる意識。
そしてどこか遠くに飛ばされるような感覚。
「!」
「さん!」
「ちゃん!」
最後に聞こえたのは、皆が私を呼ぶ声……。
************
微妙なとこで終る(笑)
純粋にクロエを応援するヒロインはいいとして、セネルをちょっと可哀相と思うノーマがいたり。
ノーマはクロエを応援しつつ、ちょっとした発言でセネルの想いをヒロインに気付かせようとしてみたり。
でもやっぱり気付かないヒロイン(笑)
2006/07/09