私達は夕食を軽く済ませ、浜辺に座った。



私が倒れているうちに、ジェイがこのイメージを見せている「誰か」を暴いて、滄我だということを突き止めたみたい。


皆は、ハッキリと次の目的地のイメージを見せられていた。
















もしかして私は、最後まで皆と違うものを見ることになるのかしら。




































シャラ…









首もとで鳴った音が気になって、ペンダントと指輪を探る。










兄様に連れられて遺跡船に来て、いろんなことがあった。
クルザンドで過ごしているだけでは絶対に経験しないようなことばかり。



私、兄様を自分の手で葬るなんて…そんなこと、思ってもいなかった。



それに私の中にステラがいて、私の前世?は水の民との繋がりを示していること。










私が見ているイメージ、あれは私の以前の姿なんだろう。











…遥か昔の私も、銀色の髪だったんだ。
でも今の私より社交的かも。










あんなに楽しそうに、幸せそうに笑って…、以前の私もこの世界に生きていることに喜びがあったんだろうな。































































ちゃん。」



「!!…あら、何?ノーマ。」



「質問第二弾やっていい?」



「(第二弾?)いいわ。」







浜辺には皆が寄り添うように座っているけど、誰も他人と話す事なく海を見ていた。
だからいきなり話しかけられてびっくりしてしまう。









ちゃんてさ、結婚してたんだよね?ヴァーツラフが夫がどうのって言ってたでしょー?」


















ピクリ。















なんだかノーマの質問に、他の皆の耳がこっちに向いた気がする。
まぁ、隠すことではないし聞かれたのだから話さないと。








「正確には、夫ではないの。…婚約者かしら。」


「へーっ、そうなんだ!どんな人だった?」


「そうねぇ…強くて優しくて、穏やかで、かっこいい人だったわ。」


「うわーっ!!申し分ないじゃん!!理想の人過ぎだよ!ワルちんよりかっこよかった!?」




















ピクピクッ



















周囲の耳がもっとこちらに向いた気がする。






「そうね、ワルターよりずっとかっこいいわよ。」


「Σなにっ!?ワルちんよりかっこいいの!!うらやましー。」







ノーマのかっこいい人って、ワルターが基準なのね(笑)







「どういう出会いなんだ!?どっかの国の王子とか?」






今度はクロエが質問してきた。けっこうミーハーな質問ね。







「どっかの王子様ではないわ。ヴァーツラフ兄様の副官。クルザンドの貴族よ。」


「ヴァーツラフの副官!?それが穏やかな人だったのか?」












ウィルが興味津々に言う。


結局、皆聞いてるのね。












「ええ。彼は戦いを拒み、いつも前線には出なかった。素晴らしい剣技を持っているのにね。」


「副官が前線に出ないなんて…あのヴァーツラフが許していたというのか…。信じられん。」


「兄様は、彼だけは認めていたから。」


「へーっ、すごい人だったんだねー!じゃあちゃんはその人に剣を習ったの?」


「あ、えーと、剣は一番上の兄様に習ったの。」







私がそう言うと、ウィルはポンと手を打った。



「そうか!そういえばクルザンドの三兄弟は有名だったな。



一番目の王子は素晴らしき剣技、

二番目の王子は鋭い槍さばき、

三番目の王子は力強い拳。



それぞれが強い爪術を使う。















…そして歳の離れた妹姫、銀の髪を靡かせて外すことのない矢を放つ。




クルザンドは揺るぎない軍事国家である。」








「……。」






他の国でそんな噂があるなんて知らなかった。それも私の事まで…。







「それ、僕も聞いた事がありますよ。」







ジェイが声をあげた。













「…さっきから聞いていて思ったんですけど、皆さんはさんに遠慮なく質問し過ぎではありませんか?

国の事や家族の事、さんは触れられて欲しくないんじゃないですか?」






本当にジェイは優しい。私のこと気遣ってくれてとても嬉しい。
でも、






「いいの。私は私の事を皆に知ってもらいたいから。だから何でも聞いて!ちゃんと話せる範囲で話すから。」





今まで内緒にしてた分、皆に私をたくさん知ってほしい。
それで皆ともっと仲間として繋がりが深くなるなら…。




私がこう言ってジェイにニコリと微笑みかけると、彼は溜め息をついて引き下がった。









「じゃあさ、いつ婚約したのー?」



ノーマはお構いなしに聞いてくる(笑)







「えーとね、クロエには話しづらいんだけど、ガドリアとの戦いの時なの。」





クロエはさほど気にしていることもなく、私の話の続きを待つ様に私を見た。










「こんな事皆に聞いてもらうのはなんだけど、彼と婚約した次の日に、私は彼を失ってしまったの。」


「え…。」








息を飲む音が聞こえる。
本当はこんな事はなすべきじゃないのはわかってる。
でも、どうしても皆には聞いてもらいたかった。
どうしても。





















「私の初陣を心配して、前線に出ないはずの彼は出て来てくれたの。
私はその時、たくさんの人を殺して狂ったようになってた。そして自分を無くしたいくらい落ち込んでたの。




彼はそんな私に婚約という希望をくれたの。
私達は好きあっていたし、考え方も似ていたからうまくいくはずだったのよ。




でもその次の日、ガドリアの将軍が傷を負った私を狙って剣を突いた時、彼は私を守って代わりに刺されたの。
彼は私の目の前で命の灯を消していったの。」


















誰も何も言わない。
完全に私の独り舞台になっている。






けれど、最後まで言いたい。

















「目の前で死に逝く彼がくれたのがこの指輪なの。」












私はシャランとペンダントと指輪を鳴らした。











「私達は結婚したら、二人で戦いのないどこかに住むはずだったの。約束してたのよ。



だから、この世界の戦いを一つでも多く無くしたい。


それが彼と私の願いなの。」

















最後まで話し終わって、私は一息ついて皆を見た。












































































「…ノーマ、なんでそんな泣きそうなの?


クロエ!なんで涙を流して……!?」








二人は目に涙を溜めて私をじっと見ていた。
クロエは頬を伝う涙を拭うと、口を開いた。








「すまない。なんだかとても悲しくて…。

は大変な思いをしてきたんだな。」

「ホントだよ!!あたし、ちゃんが幸せになるまで絶対見守るからね!」






二人はそう言って笑ってくれた。










「でも私、皆が思えないほどの人を殺してきたのよ?


私のこと、恐くないの?」








ノーマとクロエは黙って私を見た。
今度は私が泣きそうになっている。




何を言っているんだろう。こんな事言ったらまた嫌ってくださいって言ってるようなものじゃない。

―嫌われたくないのに。












「…恐いと思う。」










クロエがボソリと呟いた。












「でも、は私達と一緒にシャーリィを助けようとしてるじゃないか!
この世界の戦いを一つでも減らそうと、努力してるじゃないか!」




「クロエ…。」





















「大切なのは、過去ではなく、今なんだ!!!」
















クロエは私の心に、強く訴えかけてくれた。




















―大切なのは今…。







「ありがとう、クロエ。」



















私の心は、私が認められたみたいでホッとした。









…これからも、皆と一緒にいれそうで良かった。








ああ、なんて素晴らしい仲間なんでしょう!!





















































「…その方は、さんを守って亡くなった。それがヴァーツラフの言っていたことの真実ですか。」


「…ヴァーツラフの言い方は何だったんだ?あれじゃ一人が悪いみたいじゃないか!」






セネルは砂を掴むと、遠くに投げた。






思い出す兄様の言葉。







「…私は結果的に、兄様の右腕をなくしてしまったから…。


彼は、彼がいれば兄様はもっと変わっていたかもしれないのに、私が彼を殺してしまったようなものだから兄様は!!」







私も、力一杯砂を掴んだ。
サラサラと溶けるように手からもれていく。







儚い…。











「じゃが、それでワシらは出会えたんじゃろ?」



「えっ…。」






モーゼスは、私が思ってもみなかったことを言った。






「ワシらはこうして、に会えたんじゃ。じゃから…」


「無駄な事は一つもないんです。

僕は、さんに出会えた事を感謝してますよ。」


「俺もだ。」

「私もよぉ。」


皆口々に言ってくれる。







「その人に、私達が出会えた事を感謝しなければいけないな。」

「そうそう!!」


クロエとノーマも笑い掛けてくれた。















私はいつも、あの出来事で失った事ばかり考えていた。
けれど、失うという事は新しい何かを手に入れるきっかけなのかもしれない。





私はこうやって、大事な仲間を手に入れたのだもの。



















































…あなたを失ったことで、私は新たな大切なものを手に入れることが出来たのね。



 私も、あなたにたくさん感謝しています。



 ありがとう。









































碧の指輪そっと触れる。
彼が、私に微笑みかけているような気がした。
















































































、婚約者は素晴らしい剣技を持っていたと言ったな。」








ウィルが私に問う。私は頷くと「一番目の兄と対等くらいの技を持っていたの。」と言った。




ウィルは少し考え込むと、






「そのぐらいの剣の使い手なら、前線に出て無くても有名なんじゃないか?…差し支えなければ、名前も教えて欲しいのだが。」





ウィルは化石とか珍しい魔物だけでなく、人にも興味があるのかしら?











「名前は…サレイジェ・ベネトですけれど。」








「「「!?」」」









その名前を聞いた途端、ウィルとクロエとジェイが反応した。







「?」



「なんだって!?」






最初に言葉を発したのはクロエ。









「サレイジェ・ベネト…。」




「鬼神のサジェか!?」









ウィルはいとも簡単に彼の通名を口にした。





…何故、知っているの?








さんは知らないようですけど、鬼神のサジェといえば、知る人ぞ知る二十年前のクルザンドとガドリアの戦いで有名になった人ですよ!!」






…二十年も前の話なのに、何でジェイは知っているのかしら。









「その剣技は、風の中を舞う葉のように自然。妖しき美で人を惑わす鬼神サジェ。」





「えっ…確かに言われてみれば…その通りですけれど…。」




さんはそんな方と婚約していたのですね。」











ジェイはそう言うと、肩をあげと「かないませんね。」と言った。








「のう、ジェイ。そのの相手は二十年前に戦っとったんじゃろ?と歳が合わんじゃろが。」








モーゼスの質問に、ジェイは無言で私を見た。
まるで、「自分で答えてくださいよ。」って言っているみたい。







「え…えと、彼は三年前、確か三十歳ちょっとだったかしら?」

















……














……

















「えぇっ!!!」










驚いたのはもちろんモーゼスとノーマ。それにセネルとクロエ。













ちゃんて、オヤジが好みだったんだ…。」




「ちょっ…ノーマちが!!」











私は否定しようとしたけど、ノーマには聞こえてない。
挙句の果てには、














「良かったね、オヤジ!チャンスはあるぞ☆」












とウィルに言う始末だった。

















「…もう寝るぞ!」



ウィルは怒ってしまうし。





















…ノーマったら、もう。












































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これが57話の後半場面になるはずだった話です。あまりにも長すぎて58話になりました(笑)
ヒロインの昔話を聞く皆。もう、繋がりも大丈夫かな?なんてとこまで来ました〜。


2006/07/13





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