「らっしゃい!」



ドアを開けると、カラカラ音が鳴る。お客が来たと知らせる鈴だ。
とセネルは親しそうに話ながら店の中に入った。


「おう、今日は可愛い子を連れてるな!これか?」


武器屋の親父はセネルに話掛けると、小指を立てた。
それを見たセネルは焦って否定する。


「そ、そんなんじゃない!!」


は意味がわかってないのか、ニコニコと二人のやり取りを見ていた。











「弓はあるか?」

セネルは武器屋に聞いた。


「おお。あるぞ。今日入ったばかりの新品だ!…だが、お前が使うのか?」


「いや、彼女が使うんだ。」



セネルはを見て言う。


「そうか!実は、入ったのは女用の弓なんだ!!」

武器屋は嬉しそうに言うと、店の奥に入っていった。









「セネル、付き合わせてしまって、ごめんなさい。」


がセネルに言った。

セネルは優しくほほ笑むと、

「大丈夫だ。」
と言った。

はそんなセネルの顔をまじまじと見つめる。

セネルはにあまりにも見つめられるため、少し恥ずかしくなって目を逸らした。



「シャーリィはセネルと似ているのですか?」


は問い掛けた。


セネルはその発言に少し驚くと、

「シャーリィに会った事があるんじゃないのか?」
と聞く。

「シャーリィの事は、金髪の長い髪を見ただけです。あとは、壁越しに話した事があるだけ…。」

はぼそりと言った。
は自分の手を胸に強く当てると、唇を噛みしめる。



「セネル。それでも、シャーリィを助けたいこの気持ち、信じてくれますか?」



はセネルを見上げた。
の顔は悲しそうであるが、固い決意をした表情だった。



「俺は…」



セネルが言いかけると、店の奥から武器屋が弓を持って出て来た。


「これはどうだ?」


見せられたのは銀色で所々細かな細工が施された弓だった。
全体がほっそりし、グリップはの手に吸い付く様で、とても持ちやすかった。


「まぁ、素敵な弓ですね。でも、高そう…。私に買えるかしら。」


は心配そうに全財産を出す。

セネルは弓を見ると、弓について分からないのか色々な部分を震える手で触っていた。


「うーん、少し足りないな。」
武器屋が言った。


は他に何か持ってないか探ったが、自分が調合した薬しか持っていなかった。



― 薬は信用がないと買ってもらえない。



はそう思うと出すのを止めた。


「これしか…ありません。」
は悲しそうに言うと、武器屋を見つめた。


「まけられないのか?」


セネルがそう言うが、武器屋はこっちも商売だし…と渋る。







そこへ他の客が入って来た。


「あ、あんたさっき噴水広場で歌ってた人だろ!」


客はを見るとそう叫んだ。

はお客の方を向くと、恥ずかしそうにお辞儀をした。


「やっぱり!こんな所で会えるなんて嬉しいなぁ。」


お客は嬉しそうに喋り出した。


「おやっさん、いいなぁ。こんな娘と喋れて。それも、武器まで買ってもらっちゃってさ。」


「む、そうなのか?」


「そうそう!すごい歌い手なんだよ!」


武器屋と客の話は終わる事なく盛り上がっていった。
とセネルはお互いに目を見合わせるばかり。

とうとう武器屋は、テンションの高い客に乗せられて


「歌ってくれたらまけてやる!」


という発言をした。


、いいのか?」
セネルが心配そうに言う。


「私の歌で宜しければ。」


そして、は歌いだす。

透き通った声が店の中を反響する。

その声は、店の外まで溢れ出し、店の周りに観客が集まるくらいだった。



歌が終わると、武器屋はなんとも言えない顔で、の手を握った。


「うおぉ!素晴らしかった!!こんな歌、聞いた事ねぇ。」


感動した武器屋は、先ほどの弓を半額にまけてくれた上に、矢を三十本おまけに付けてくれた。


がセネルにウインクすると、セネルはそれを見て笑った。

は、他に残ったお金で軽い胸当てとロングブーツ、雑用品を買い求め、街を出た。






















「あぁ、楽しかったです!」


は荷物を抱えながら笑う。
セネルはそれを見つめた。


「あ、セネルには申し訳なかったですね。」


見つめられているのに気付くと、は謝った。
が買った荷物は、二人で二分割して持っている。
セネルは全部持つと言ってくれたが、さすがにそれは出来ないので、二分割にした。
それも申し訳ないという気持ちで謝る。


「いや、いいって。」
セネルは言う。

「仲間なんだからさ、気を遣わなくていいよ。謝られるより、感謝される方がいいよ。謝る方も、謝られる方も。そうだろ?」

セネルはニカッと笑った。

「そうですね。ありがとう。セネル!」
は明るく笑うと歩き出した。





…可愛いな。




セネルは心の中で思うと、を追いかけた。


「…さっきの話なんだけど。」

セネルはに話しかける。



「俺とシャーリィは似ていない。本当の兄妹じゃないんだ。」


セネルは悲しそうに言った。


「…そうなんですか。」


はセネルの言葉に答える。

そして、少し歩くと立ち止まった。



「シャーリィは、あなたの事を話す時、すごく幸せそうでした。楽しそうに、お兄ちゃんが…と喋ってくれました。」


はセネルを振り返る。


「血の繋がりなんて関係ないのです。お互いが、どんなに想い合っているかが大切なのですから。」


はセネルの目を見る。


「セネルは、こんなにもシャーリィを大切に想っているでしょう?」


は荷物を持っていない方の手で、セネルの手に触れる。
は優しくその手を取ると、自分の胸に当てた。

セネルはの行動に面食らって、目を見開いてを見つめた。



「迷わないで、セネル。あなたがシャーリィを迎えに行かないで、誰が迎えに行くというのですか?」



はセネルの手を強く握る。



「大丈夫。シャーリィは必ず取り戻せるます。ね!」



は目を細めて、優しく笑った。

セネルは、を真っ直ぐ見つめる。




…安心する。といると、なんだかほっとするようだ。




「…あぁ!」
セネルは真っ直ぐの顔を見つめながら、力強く頷いた。


「さぁ、早く戻りましょう。」


はセネルの手を引き、ダクトへと歩き出す。

セネルはそんなの姿を見ながら呟く。


は不思議な人だな。」


は少し驚き、ころころ笑う。


「兄妹そろって同じ事を言うなんて。」


セネルはを見つめる。


… 不思議というか、すごい。
  
  俺の迷いを見抜くなんて。
  
  仲間にだって隠して来たのに。自分にも隠してきたのに。
  
  言われてしまえば、こんなちっぽけな事。認めてしまえば、こんなに自信に繋がる。
  
  俺は、こんなことで燻っていたのか。



セネルが考え込んでいると、が声を掛けた。




「セネル、自分の弱さを認める事も、自分の強さに繋がるのですよ。」




はセネルの心を読んだかのように言った。
がそういっても、セネルはもう驚かなかった。

「そうだな。」
セネルはそう言うと走り出した。





… シャーリィがなんで彼女に俺の事を話したのがわかる気がする。


クロエに咎められて、とっさに言った言葉だけど、改めてそう思うよ。




「セネル、待ってください!」




二人はダクトに走り付く。
「いきなり走りだすなんて…」


が息をあげる。



「そんなんじゃ、俺達についてこれないぞ。」

セネルは笑った。

笑顔が眩しい。













。俺は、を信じる。…誰がなんと言おうとも!!」












セネルは言う。

ニカッと笑う顔がとてもさわやかで清々しい。


そんな顔で信じてくれると言われれば、嬉しくないはずがない。




「ありがとうございます!!セネル!!!」




は荷物を放り出すと、セネルに抱き付いた。


セネルはびっくりして荷物を落とすと、顔を赤らめて硬直した。







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セネル〜!
セネルって、難しい。
最初は鉄砲玉見たいだけど、彼が仲間思いで優しいお兄ちゃん
だって事がどんどん分かってくる。どんな彼と出会おうか考えた
上での出会いでした。
やっぱり、セネルは仲間思いで優しいお兄ちゃんであることが
一番かなぁって思います。
そして、微妙な絡みでごめんなさい。
彼女、次は戦っちゃいますよ☆

2006、1/31