「本当に一人で大丈夫なの?」
「大丈夫に決まってるじゃない」
「それならいいんだけど…」
「お母さんもお父さんと楽しんできてよ!お土産期待してるからさ☆」
「…わかったわ。じゃあ、行ってくるからね」
「うん、いってらっしゃい」
そう言って、お父さんとお母さんは旅行に出掛けていった。
珍しくとれたお父さんの夏休み。
だから、日頃あたしとお父さんの我が儘を聞きながら主婦業を頑張ってるお母さんに、リフレッシュ旅行をしてほしい。
そしてあわよくばもっとお父さんと仲良く……なんてね。
だから、今あたしは一人。
八月も終わりそうなころ、まだ暑いけど一人で家事とか頑張らなきゃ。
家を見回すと、いつもより広く感じる。
いつもはお母さんがくるくる動きながら料理したり掃除したり洗濯したり…。
そんな姿を思い出しながらぼーっとする。
…あたしはどんだけマザコンなんだ(笑)
「よしっ、何しよっかな〜」
レジェンディアはクリアしちゃったし…、違うのっても何か…
え?家事をしろ?
また後でやるって。
そういえば、レジェンディアは面白かったけど、納得いかないとこがあったな。
「フェモちゃんの死と、ワルターの死が………」
ドカンッ
呟いた途端、寝室からすごい音が聞こえる。
びっくりして立ちすくんじゃったけど、ここには今あたししかいないし、何があってもあたしが対処しなきゃなんだ!!
恐怖心を押さえて、恐る恐る寝室に向かう…。
……
一体何が……
ガチャ…
ドアノブを回して部屋を覗く。
いつもと変わらないあたしの寝室……!?
って、ベッドに誰か寝てるし!
それも金髪!?
誰!?
「あの〜、そこはあたしのベッドなんですけど…」
「…うっ…」
唸った!?
…よく見ると、この人血だらけじゃん!
それに着てる服も何だか変………こんな服着てる人見たことないよー。
……でもこれって、なんだかどっかで見たことあるような模様の服…
「うぅ…」
あ、寝返り?打ったよこの人。
ってこの男の人………ワルターじゃん!!
この人、顔がワルターだよ!!ちょっと、ねぇ、誰か!
なんでワルターっぽい人がここにいんの!?
「…セネ…ル…」
セネルとか言ってるし!ワルターだよ!本当にワルターだよ!!
どーしよー!!!
「う……
…き…貴様は誰だ…?
うわっ気がついた!
「わ…あたしは、 よ」
「…
ここは死の世界か…?」
「死!?何言ってんの!違うのわよ!」
バシンっ
「っ痛……」
「ああっ!ごめんなさい。怪我してるのよね、今手当するから!救急箱どこだったかしら?
待っててね、ワルター!!」
「!?まっ…待て!貴様何故俺の名を知っている!」
あわわわわ!やっちゃった!名前知ってるとか、明らかにおかしいし!
「そっ…それは…」
もう、わけわかんなくて涙が出てきた。
両親が旅行に出掛けたと思ったら、いきなり目の前にゲームのキャラが現れるなんて!!
唇を噛み締めて涙を耐える私を見て、ワルターは困った顔になると、
「…とりあえず手当するんだろう…?」
と呟いた。
あ、なんだか思ってた感じと違って優しい…。
あたしはうんうんと頷くと、救急箱を取りに部屋を出た。
「…何なんだ…あの女は…」
*
「…というわけなのっ!」
手当をしながらワルターの名前を知ってる経緯を話す。
彼は目を白黒させながら聞いていたけど、周りの雰囲気とかを感じとったのか信じてくれたみたいだった。
「やはり死の世界か…」
「違うってば!」
でも、死の世界だと思い込んでるみたい。
…そこは譲らないんだ?
「まあいい、悔しいがきっと俺はセネルに負けたのだ
…ところで、俺のいた世界が、ゲームの世界と言ったな
…どんなだ?」
ワルターは興味津々に言う。
「だ〜め。あなたの世界のことを教えられるわけないじゃない」
「フン、なら関係するモノを探させてもらう」
ワルターはガサゴソと部屋を這い回った。
「……字が読めん」
攻略本を見つけたにも関わらず、字が読めないのでほっぽらかす。
「……」
「残念だけど、諦めてよ!」
ワルターは少し考え込むと、肩を落とした。
「何か使えないかと思ったのだが……しょうがない」
あたしを利用しようとしたんだ。へぇ〜。
それよりあなた、帰る方法探しなよ。
な〜んて、ツッコミたい気持ちがいっぱいだったけど、(一応初対面だし)押さえてにっこり笑ってみた。
「…いきなり笑うな、気持ち悪い」
「……」
「まあいい、貴様は害がなさそうだしな…俺が海に還るまで世話になる」
「えぇっ!?」
世話になるって、ワルターがレジェンディアの世界に戻るまで面倒見るってこと!?
「……?」
…今、お母さん達いないし…ま、いっか。なるようになるなる!
「わかったわ!」
胸をドンっと叩くと、ウインクした。
「……もっと普通に返事をしてくれ」
ワルターはじとーっと私を見るとこう言った。
なんだと!?せっかく頼りがいのある女を演じたのに!
もー!いちいち発言がムカつくのよ!!!
顔はとてもカッコイイくせに、性格がいただけない!
だからゲーム中、ワルターを好きになれなかったんだわ!
あたしがプンスカ怒っていると、ワルターは微かに唇に笑みをもたらせた。
あ、ちょっと笑った。
可愛い…
ニヤニヤすると、ワルターはギロリと睨んでそのまま後ろに倒れる。
「、俺は寝る。」
「あのねー…、さっきから、呼んでるけど、あたしの名前は!!
はワルターの誠名みたいなもんなの!」
ワルターはガバッと起き上がると、あたしの顔を見た。
「は誠名なのか?」
「うー…うん。そう…ねえ。」
「…そうか。」
そう言って、彼はパタリと後ろに倒れる。
そしてそのままベッドに寝入ってしまった。
「よっぽど、疲れてたんだろうなぁ。」
彼はきっと、セネルとの戦いで倒れてこっちの世界に来たんだろう。
死の世界とか言ってたもんね。
ワルターは、この世界から消えたら死んでしまうのかな…。
どうなんだろう。
でも、うちにこのまま居られても困るし。10日後には親も帰ってくるし。
ああ、あたしの一人を満喫するはずだった時間が…。
…ま、いっか。
なんとかなるなる!
ワルターの性格を直すぐらいの勢いで立ち向かわないと(笑)
…さてと、夕飯でも作るかな〜。
ワルターはこっちの料理、食べれるかしら…。
あたしの不思議生活は、こうやって始まった。
【両親が帰ってくるまであと9日】
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いやーかなり突発的(笑)自分のためだけに頭の中で展開してます♪
私って幸せな人間ですねー。
2006/08/23