「おい、起きろ!」










やだ〜夢?
ワルターの心地良い低い声が聞こえる…。









「…!」








苗字まで呼んでくれちゃってるよ!すっごい夢だな〜。









「………」






!!








「痛い痛いっ!」








あまりにも起きないのが気に食わなかったのか、この人私の髪の毛引っ張ったよ。








「やっと起きたか、寝ぼすけめ」

「乙女の髪の毛を引っ張るなんてヒドイわよ!」

「…乙女だと?」

「………」

「……」

「っはいはい!すみませんね!どーせ乙女じゃありませんよーだ!」








無言であたしを見るワルターに、「べーっ」と舌を出した。

それが気に触ったのか、バコンと殴られる。










「ちょっ…痛いじゃないのよ!」

の頭は丈夫そうだからな、大丈夫だろう」









大丈夫なわけないだろー!
あなた格闘系でしょ!!一撃必殺とかあるんじゃないの!?

…なんてツッコめるわけなく、あたしはじとりと彼を睨んで立ち上がった。










「朝ご飯作ってくる」

「……ああ」








ワルターは生返事をすると、ゴロンとベッドに横になる。





…なんか用があって起こしたんじゃないわけ?
まさか、朝ご飯食べたかっただけとか!?

…ワルターだったらありえそう。





あたしはそんな事を考えながら冷蔵庫から色んなものをパパパッと出すと、簡単に調理し始めた。














                 *












「はいっ、家特製の朝食!」








彼の前にバンッとお皿を置く。
大きなお皿一枚に乗ったパン、トマト、ウインナーと茹でインゲン。
飲み物はミルクティー。

極めつけのデザートはヨーグルトよっ!!





完璧!!





私が満足顔で座ると、ワルターは朝食の品々をしばらく見て呟いた。










「朝からこんなに食うのか…?」

「なっ…!!」








せっかく作ってあげたのに、文句ばっかし!!

…完璧な朝食のはずなのに…。







「…じゃあいいよ、食べられなかったら残して」







怒る気力も失せちゃう。
あたしは小さくため息をついて食べ始めた。









「………」








ワルターも何も言わずに食べようとしたみたいだけど、急に目を細めて何かを探し始める。

あたしが何を探してるのかと思って見ていると、それに気付いたのか声を掛けて来た。









「…何で食べるんだ?手か?」

「!!」







ああっ、そっか!!あたし、箸しか出さなかった!









「ごめん!今フォーク持ってくる!!」








一目散に台所に駆けて、フォークを取ってくる。
ワルターはそれを分取ると、食べ始めた。








「おいしい?」

「……」







何か答えてくれたっていいのに!もーっ!!



ムカムカ…







あたしはぷんぷんしながら朝食を平らげた。

一息ついてワルターを見ると、驚いたことに全部食べ終わってる!!










「ワルター…残すんじゃなかったの?」

「…そんなことは一言も言ってない」









…確かに。

でも、ワルターってこんな人だったの?

…思ってたより全然我が儘じゃない。









「…ありがと」

「フン」







やっぱり可愛くない!!

あたしは頬っぺたを膨らませると、食器を片付け始めた。










「この後どうしよっか?」

「…任せる」








任せるって言われてもな〜。

何にもやることないし…ワルターは怪我してるからどこにも連れていけないし。





そうだ、包帯変えてあげなきゃ。









「ちょっと、服脱いで」









あたしの発言にワルターは目をカッと開いた。
それも片目しか見えないから恐い。








「なっ…何?」

「それはこっちのセリフだ。

 いきなり脱げとか言うな、気持ち悪い」







!!


っ…やだ!
あたしそんな言い方しちゃったんだ。


恥ずかし〜!









ワルターの文句を気にすることなく、あたしは自分の発言に赤くなる。







やだっ


やだやだっ…
ワルターにそんな事言うなんて…





本当に…






「気持ち悪い…」

「……」








思わず声に出してしまう。声のトーンで、自分が気持ち悪いと言われてるのがわかったのか、ワルターはあたしをギロリと睨むと顔を逸らした。










「……脱げと言ったのは自分だぞ……」








そして拗ねる。
ちょっと可愛いかも。




確かにねー。あたしが脱げって言ったのに、あんまりワルターを良く思ってないからって、ワルターが悪いように言っちゃうなんて失礼だよね。











「ごめんね、ワルター」

「わかればいい」









…こいつ…!!










あたしは彼の体に巻いた包帯をゆっくり解き始める。

白い肌がキレイでびっくり。さすが水の民!





あたしもこんな美白になりたいなー。家に篭ってたらこうなるかしら。








それにしても、昨日と比べるとワルターの傷の具合が良くなった気がする。
昨日は痛々しいくらい凄かったのに、今日はほとんどが白い肌に戻ってる。










、どうした?」

「あ、ううん。何でもない」







気のせいよね。
傷が一日であんなによくなるはずないもんね。








「そうか。あんまり変な顔をするな、板につくぞ」

「なんですって!?」









あたしはワルターの意地悪に噛み付こうとする。彼はそんなあたしを笑うと、








「そっちの方がらしい」







と言った。








「えっ……」







や…嫌だ…。
そんなカッコイイ顔で言われると照れるじゃないの!





あたしは顔を真っ赤にして俯く。
胸がドキドキする…



とりあえず、照れ隠ししなきゃっ










「何言ってんの!たかが一日であたしの何がわかるって言うのよ」









照れ隠しで吐いた言葉。我ながら正しいと思う。

でも、










「…そうだな…」










ワルターの寂しそうな声を聞いてハッとなる。





今、あたし酷いこと言った?

…普通だったら流すような他愛もない会話じゃん。




でももしかして、ワルターは寂しく思ってくれた?



あたしと、仲良くなりたいと思ってくれたの?



それって、すごく嬉しいかも!!










包帯を巻く手を止めると、あたしは彼の顔が見えるようにズイと寄った。











「ワルター!!ごめん、あたし……!!」

「…なんだ?」

「あたし、もっとあなたと仲良くなりたい!!」










ワルターはびっくり顔になると、顔を押さえて逸らした。












「な、何を言うか!

 俺が貴様と仲良く?

 考えられん。

 …勘違いするな。この死の世界で俺の正体を知っているのは貴様だけだ!
 
 だから俺は、貴様を利用したいだけ…

「そう…なの?」











ワルターの言葉に胸が苦しくなる。心が寂しくなる。

もしかして、さっきのワルターはこう寂しかったんじゃないの?

あたし、同じ気持ちなのに…

嘘なの?










涙が出そうになって手で顔を覆う。
ワルターのことそんなに良く思ってないはずなのに、どーしてこんな悲しくなるの!?



あたし、おかしいよ!!















指の隙間からワルターを見る。
彼はあたしをじっと見て、呟いた。














「……貴様を利用したいだけに決まってるだろう!!!」

そう言った彼の顔は、真っ赤で、目が泳いでて、

あたしが照れた時とおんなじだった。






そんな彼の姿を見て、心がほっこり暖かくなる。
































…ワルターともっと仲良くなろう。


あたしは今日、決意した。



























【両親が帰ってくるまであと8日】














**************

二話目でーす。
現代を生活するワルターを書くのがかなり楽しいです☆
妄想を膨らませながら〜♪むふふ…。

2006/8/24