「なんで!?なんでなのよ!!!」
「…うるさい」
「だって、ありえないじゃない!」
「…あのな…!」
ワルターの包帯を変えようと緩めてびっくり。
だってだって、三日しか経ってないのに、あんなに酷かった傷がキレイに治ってるのよ!?
叫ぶあたしをうるさそうに睨むワルターは涼しげな顔。
当の本人なのに何も感じないわけ!?
「ここは死の世界だから傷も治るのが早いんだろう」
「死の世界じゃないって言ってるでしょ!」
バシン!!
思わず背中を叩いてしまう。
ワルターはギロリとあたしを睨むと、巻いてあった包帯を全部取り払って服を着た。
「ごめん…」
「フン」
……叩いたら怒るのは、ワルターじゃなくても当たり前だよね。
私は小さな溜息をつくと、出掛ける用意を始めた。
「どこか行くのか?」
「え、うん。友達に会いに行くの。その後は図書館」
「……」
まさか、行くなんて言わないよね。
「…傷が治ったからって、家で大人しくしててよ」
「……
…俺も行く」
「ふーん……って、ええ!?何言ってんの!?」
…行くなんて言ってるし。
こんな変わった人連れて歩いたら、どう思われるか……
ワルターを見ると、「てこでも譲らん!!」って言いたそうな顔。
…うわー、この人本気だよ。
ワルターがこうなったらどうにかしてでも絶対着いて来そうな気がする。
水の民の格好で無理矢理着いて来られるよりは、先に手を打ったほうがいいかもしれない―。
「わかった。しょうがないから連れてく。でも、その格好じゃダメ」
「何故駄目なんだ?」
「あのねー、あたしの服見なさいよ。あなたの服と全然違うでしょ?」
「……」
「…お兄ちゃんの服が残ってたはずだから、それを着てもらうから。いいわね?」
ワルターは少し考え込んだかと思うと、素直に「わかった」と頷いた。
…思ったよりスムーズに受け入れたけど、ダイジョブなわけ?
あたしの不安はなくならないけど、大人しく着いて来そうだし、なんとかなるよね。
あたしはお兄ちゃんの部屋に行くと、ジーパンとTシャツをタンスから引っ張り出した。バッと広げてそれを見る。
濃い目のジーパン(膝少し破けてる)と黒い(今風な柄の)Tシャツ。これならワルターにも似合いそう。サイズが合えばいいんだけど。
「はいこれ。着方わかる?」
「……着替えまで見られてはかなわんからな。出て行け、」
……着替えまで?
ああ、包帯巻いてたときのことか。
フンだ!ワルターが怪我してるのが悪いんじゃない!
「はいはい。出て行きますよ〜」
あたしはそそくさと部屋から出た。
…あたしの部屋なのに!!
数分後、問題なく着替えて出てきたワルターを見て、あたしがズボンのチャックを確認したのは言うまでもない。
こんな顔でチャック開けっ放しとかいただけないしね。
…フウ。ちゃんと上がってる。
ワルターの着替えは本当に完璧。
初めて着るんじゃないみたい!
変なトコをジロジロ見るあたしを、ワルターは不審そうに見た。
それを見て気付くけど、今のあたし本当に不審者だ!!!
あたしは焦って目を逸らすと、部屋に戻って自分の仕度をして家を出た。
後ろにはワルターがいる。
なんか変な感じ。
*
「見て!!あの金髪の人カッコイイ!!」
「ホントだ!!目が青い!!」
「いいな〜、あんな彼氏ほし〜!!」
「あの女の人羨ましいー!!」
……うう…やめて!!!
こんなの、こんなの予想してたけど!
こんなに酷いなんて…。
歩くとそこら中から聞こえる女の子(人)の黄色い声。
目立ちたくないのに!!
こいつのせいですっごく目立ってる!!!!
「どうした?」
「……」
本人は気付いてないし。
ボケ!!
バカ!!
あなたのせいであたしはこんなに惨めな思いしてんのに!!
なんでそんなカッコイイのよ!!
「…?」
「……気にしないで、大丈夫だから」
「…帽子……」
「え?」
「被ってきた方が良かったんじゃないか?」
「あ…、日照りが強いもんね。でも大丈夫」
「そうか…」
…なんでワルターって、時々優しさを見せるわけ?
照れるじゃないの!!
「、さっきから人に見られている気がするんだが、本当にこの服で良かったのか?」
「良かったの。あなたの服なんて着てきたらもっと見られてるわよ!」
「何故こんなに見られているんだ?」
「……(なんて言えばいいのよ!)……知らない」
「?そうか」
あたしはぷりぷりと彼の前を歩くと、待ち合わせの場所に向かった。
ワルターは何も言わずにあたしの後を着いてくる。
「チサちゃん!!」
「あ、ちゃん!!」
あたしは友達のチサちゃんを見つけると、彼女に抱きついた。
「もーやだー!!」
「え〜っ?どうしたのっ?」
「チサちゃんならわかってくれるよね??」
「えっ…?」
「見てよー、彼を」
あたしは後ろから着いて来たワルターを見せた。
チサちゃんならわかってくれる。
だって……
あたしにレジェンディア勧めた張本人だもんっ!
「うわー!カッコイイ彼氏出来たねー、ちゃん♪」
どわっ…!!
『そんなわけあるか!!』
あたしとワルターの声が重なったのは言うまでもない(笑)
*
「うそー!!ホントにワルター君なの!?」
「そうだ」
「ホントなんだってば!!よく見てよ!!!」
「う、うん。服以外はワルター君だ」
チサちゃんは驚くと、ワルターの顔をまじまじと見た。
「なんだ?」
「でも残念。なんでジェイ君じゃないのー?」
「……」
「あっ、ワルター怒らないでよ。チサちゃんは大のジェイ君好きなんだから!!」
ワルターは不機嫌になるとそっぽを向いた。
陸の民嫌いだもんね。それもセネル達の仲間だし。
でもチサちゃんもチサちゃんだよ。
ワルターにそんな事言ってもしょうがないのに。
「私の前にも傷心なジェイ君が現れないかなー」
「あのね!こういう人が身近に現れると大変なんだから!!」
「ふーん、でもちゃん楽しそうだよね。前よりいっぱい元気になったじゃん」
「!?そんなことないない!!絶対ない!!!」
「そお?絶対元気になったよ。ワルター君のお蔭だね」
「……」
「…何、その何か言いたそうな顔は?」
「別に何もない」
「いーなぁ仲良くて。私もジェイ君がいたらもっと元気になれそう!」
「チサちゃん……」
チサちゃんのジェイ君好きは相変わらずだなぁ。
はぁ、チサちゃんならわかってくれるって思ったんだけど、ダメかぁ。
「あたし飲み物買って来るね」
「私レモンティー!」
「はいはい。ワルターは?」
「サイダー」
「サイダー?…わかった」
ワルター、サイダーなんて飲むんだ。
そういえばここ二日、冷蔵庫のサイダーが少なくなったのは奴が原因か…。
あたしはふらふらと自販に向かった。
「ねぇねぇ、ワルター君」
「何だ?」
「ちゃんていい子でしょ?」
「が?」
「って呼んでるの?ふーん」
「で、何か用か?」
「あはは、本当にワルター君はワルター君なんだね」
「?」
「ちゃんさ、ワルター君に会ってすっごく元気になったんだよ。最近はお兄ちゃんが遠くに就職しちゃって淋しかったみたいだし、ワルター君が来て嬉しいんだろうね」
「あいつがか?」
「うん。私わかるもん。でもさ、ワルター君が来た事はちゃんに重荷になってることもあるだろうから、ちゃんと気遣ってあげてよね」
「……」
「例えば、ちゃんは目立つのが嫌いなの。でもワルター君といると目立つでしょ?」
「俺が目立つ?」
「うん。私達日本人はみんな元は黒髪で黒か茶色の目なの。ワルター君は違うでしょ?」
「そうだな」
「日本人じゃない人も居るんだけど、ここは日本だしね。
それにさ、ワルター君てすっごくカッコイイんだよ!!」
「!!」
「…なんで驚くの?気付いてなかったとか?…とにかく、女の子の憧れの的くらいの男前なの。だからとっても目立つんだよ!だから一緒に歩くちゃんも目立っちゃうんだよ。だから気を遣って守ってあげてよね」
「……」
「ちゃんはワルター君のこと思って文句言わないだろうからさー」
「……善処しよう」
「そうこなくっちゃ!じゃ、私はもう行くね」
「もう行くのか…?が…」
「いいの。また会う約束してるし。じゃ〜ね〜!!」
「あっ…おい……」
「あれ〜、チサちゃんは?」
「帰った」
「またかー」
ジュースを買って帰ると、そこにはワルターがポツンと一人で座っていた。
あたしはまたかと思うと彼の横に座ってサイダーを渡す。
「チサちゃんてさ、いっつもいきなりいなくなっちゃうんだよね。でもそんなとこを含めて好きなんだけど。話した?いい子だったでしょ?」
「フ…」
あたしの言葉にワルターは微かに笑った。
…何なの?
「あの女も、のことをそう言っていた」
「え?そーなの!?嬉しいなぁ!!」
チサちゃんがそんな事言ったんだ。
って、ワルターったらチサちゃんとどんな事を話したんだろ?
「」
「えっ?何?」
「図書館に行くのだろう?そこで、俺にお前の文字を教えてくれないか?」
「ええっ!?どうしちゃったの、ワルター!!」
「なっ…ひ…暇だからに決まっているだろう!!!!
…それに、死の世界の文字も必要になるかもしれんからな!!!」
焦ってて怪しいけど、ワルターからそう言うなんて珍しそうだから、気が変わらないうちに教えとくか。
「わかった!!!あたしに任せなさいっ!!」
あたしがウインクすると、ワルターはまた微かに笑った。
あれ、気持ち悪いとか言わなくなった…?
これってちょっと進歩かも。
図書館に向かう途中、ワルターは日陰の涼しくて目立たないところを選んで歩いてくれる。
ワルターの気遣いなのかな?
気のせいかも知れないけど、あたしはとっても嬉しく感じた。
【両親が帰ってくるまであと7日】
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第三話です^^
今回はヒロインの友達登場!!
チサちゃんですが、ジェイ君好きです。
今回ワルター君を見て、いつか自分のところにも
ジェイ君が落っこちてくると信じてます(笑)
ヒロインの名前変換をチサにしている方がいませんように!!
2006/08/25