「ピーター、剣を拭え」















アスランはそう言ってその場に座った。
ピーターが剣を拭い自分の元ヘ来ると、その大きな足を彼の肩に乗せる。

ピーターの左肩はアスランの足の重さに耐えるようにしなる。
でもその顔は、重さに耐えるようなものではなく輝きに満ち溢れていた。
















「オオカミ退治のピーター卿、ナルニアの騎士だ」















アスランは言う。
一瞬アスランの瞳に引き込まれたピーターは、すぐにハッとしてスーザンとルーシーを嬉しそうに見た。
すると、二人は彼と同じように嬉しそうな顔で喜ぶ。














再び、ピーターはアスランの瞳を見つめた。
アスランも同じように彼の瞳を見つめた。













私はピーターの後姿越しにアスランの緑の瞳を見た。
優しく暖かなアスランの瞳には、自信をつけたピーターの凛々しい姿が映っていた。
























































「ピーター」














私は丘で剣の柄を握りながら立っている彼に、思い切って声を掛けた。
どうしても知りたかったの。私が嫌われてるかどうか。
スーザンの時も思ったけど、なんていうか、仲良くなるのって難しいよね。

何が難しいかなんてわからないけどさ。

















「どうしたんだ?」

「うーん、ちょっと話せないかな?」

「うん、いいけど…」















ピーターは目を泳がせるとすぐに逸らした。
私と合うことを避けてるような……。



やっぱり嫌われてるのかなぁ。

















「座ろうか」

「うん、いいよ」
















そう言ってその場に座り込んだピーターは、草の上で片膝を抱えた。
そしてもう片方の足を伸ばすと一面に広がる夕空を見つめる。

漂う雲は橙を反射し、夜になる前の僅かな時間の神秘を繰り広げている。
そんな情景を瞳に映しながら、彼は真っ直ぐナルニアを見つめていた。













その瞳に見られるなんてこと、数える程しかないってなるんだろう。
だって、絶対嫌われてるもん。












私は横に座ると、彼の横顔を見つめた。
どうせ嫌われてるなら、とことん見つめなきゃ!やれることやって、後悔しないんだから!



半ば自棄になりつつ、彼の横顔をじっとり見ながら話し掛けた。
















「きれいな夕日だね」















ホントは夕日なんて見てない。だって、ピーターの横顔見てるもんね。












ああ、…凛々しい表情。
ちょっと戸惑いがあるみたいだけど、引き締まった唇からして王様の風格がある。
白い肌がきめ細かくて、彼の横顔というか、その絹肌を見つめてしまった。















「きれいな夕日だ」















ピーターは頷いた。
彼は、私が見つめてる事に気付いてない。



私は聞こえないような小さな溜め息を吐くと、ナルニアの景色を見渡した。
美しい自然が橙がかって、暖かな空気を作り出すよう。
フンワリとした風に纏われ、私たちはこの世界に祝福されている気がした。

















「ナルニアって、素晴らしいと思わない?」
















景色と自然が…というとこを言い忘れてしまったことに気付かなかった。
でも、やってしまったことにはすぐ気がついたの。



ピーターの顔が沈んじゃったから。


















「正直…わからない。

エドは魔女のとこだし、僕たちは予言の王と王女だし…。

戦争から逃げて疎開したのに、戦争に舞い戻って、騎士になったけれど…。

僕は君みたいに…ルーシーみたいに、この世界にまだ馴染めてないんだ」



















ピーターは溜め息を吐いた。そして草の絨毯に大の字に寝っ転がる。

















「まだ、信じられないんだ。僕が王になる?まだ、子供なのに」

「子供でも出来ることはあるよ!大丈夫。ピーターなら出来る。アスランは、信じてるよ」

「…そうかな、ありがとう」

















ピーターはまだあまり納得したような感じじゃなかった。
でも彼はもうこの話をしたくない感じだったので蒸し返すのはやめた。






















































「ところでピーター、私の事嫌い?」
















話がちょうどいいとこで切れたので、思い切って聞いてみる。
普段だったら絶対、こんな率直には聞かないけど、ちょっと自棄になってたからかな。

聞いちゃった。















「え!?」















ピーターは大層驚いて、目が点になってしまった。つんつんと突いても反応がない。
でもしばらくしてやっと動いたかと思うと、腕を組んで一人で考え込んでしまった。

















「あの…ピーター?」

「…あ、ごめん。どうしてそう思ったんだい?」


















彼は私の顔をじっと見た。












あれ、今はちゃんと私を見てくれてる。
もしかして、思い込みしたのかな?

















「だって、すぐに目を逸らすし…名前も呼んでくれないし…。だから嫌われてるんだと思って…」
















言葉が尻つぼみになっていってしまう。





だって、ピーターったらずるいの。





前と違って私の目を見て話を聞いてくれるし、それに…、お兄ちゃんが妹の話を聞いてくれる時ってこんな優しい顔するのかなって思うくらい、眼差しが柔らかかった。



















「それは、の…」

「今、思い過ごしだってわかったよ!

もう、ピーターったらずるい!」

「え!?」




















彼の言葉を遮ると、私は自分の否を認めた。
だって、そんな眼差し…受ける側になって欲しい。



私恥ずかしいもん。


















「スーザンやルーシーに向けるみたいに、私を見てるんだもん!お兄ちゃんて、こういう感じなんだってわかっちゃった」

「な!、それちが…」

「私にも、お兄ちゃんになってくれる?」


















慌てて何か言おうとするピーターをまくし立てると、私は彼の正面顔を見つめた。



ピーターの顔は心なしか赤く、眉がへの字になっていた。
困ってるような怒ってるような…。















でも、ピーターみたいなお兄ちゃんがいたら、どんなに頼りになるだろ?














じーっと見つめると彼の表情は一変して、甘く優しく見つめ返してくれた。
心の中は、エドマンドのことと戦いの事でいっぱいいっぱいだろうに。

ほんとに優しいお兄ちゃんなんだ!

















「わかった。しょうがない、の兄になってあげるよ」

「ほんと!?」

「ああ。

だから僕がを嫌ってるなんて寝言は、寝てから言うんだ」

「あ…えへへ」

















私は頭をポリポリ掻くと、にっこりと微笑み返した。
ピーターは満足そうに頷く。



















「あー…、私、食事持ってくる。一緒に食べようよ」


















もっと話したいと思ったら、食事しながら作戦がいいと思った。
だって、夕食にはちょうどいい時間だもんね!スーザン達とも食べたかったけど、ピーターと食べるのも悪くないもん。

もっともっと、仲良くなりたい!!!



















「ああ、お願いするよ。

はあ…お兄ちゃんか。そんな風には見てないんだけど」

「え?」

「いや、なんでもない」

















ピーターの呟きはよく聞こえなかったけど、彼がクスクスと笑った(苦笑した?)のでそのまま食事を取りに行った。





















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ピーターとお話を^^
今回は他愛もないお話でしたが、次回からちょっとずつ二人が
近づいて仲良くなれるように願ってます☆

ピーターみたいな兄が欲しかったヒロインは、勢い余って彼を兄に仕立て上げました(笑)


2008/06/18









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