「ごちそうさま」

「私も、ごちそうさま」















持ってきた夕食を食べ終わると、辺りはすっかり暗くなっていた。
橙色だった陽はナルニアの国境よりもずっとずっと、海の向こうに沈んでいた。
空に見えるのはキラキラと光る星たち。
















「すっかり話し込んじゃった」

「うん。楽しかったよ、

「こちらこそ。また、こうやってゆっくり話が出来るといいね」

















ピーターは私をじっと見て深く頷いた。
そして私の分の食器も持ち上げると、軽やかな足取りで川に向かって行く。


































彼は下りきると上を向き、私の顔を見てにっこりと笑った。

















「なに?」

「あそこ、たくさんの森を抜けた海の近くの崖の上」

「えっ…?」

















ピーターの指差す先を目で追う。森が続き、その向こうの方…、既に日は沈んで
真っ暗なはずなのにそれだけは淡く輝く。


















「お城…」

「あれが、ケア・パラベル。僕たちが住むお城なんだ。

も一緒に…、ううん。

僕が連れていく」



















彼の優しい表情に釘付けになってしまう。







私も、一緒に連れていってくれるの?

ピーターが?






こんなに嬉しくて、胸が踊るなんてびっくり。
ドキドキしちゃうよ。

















「うん!」

















私は深く頷いた。
すると、ピーターは満足そうに笑う。
















「ありがとう、お兄ちゃん!」

















でも私がこう言うと、彼はずっこけて食器を草の上に落とした。食器はカツンといってその場に広がる。


















「ちょっとピーター、大丈夫なの?」


















彼の後ろからスーザンが現れて食器を拾いだした。
ずっこけてたピーターも一緒に拾うと、苦笑している。


















「顔が引き攣ってる」

「大丈夫だ。すまない、スーザン」

「どういたしまして」


















よろよろと歩き出すピーターを見遣ってから、スーザンは私を見上げた。
そして叫ぶ。



















!水浴びしましょ!」


















水浴び!





嬉しい響きだった。
ナルニアに来てから、そういう事が出来なくて気になっちゃってたんだよね。
ざばーって浴びたら、気持ちいいだろうな♪















「うん、いくいくー!

あ…」














いい思い付き浮かんだ。
もっと仲良くなるには、やっぱりたくさん話さなきゃだよね。


















「ピーターも一緒にどーお?」

















私は上から大声で叫んだ。
すると、視界に入ったのはスーザンの驚いた顔と、今日二度目のピーターのずっこけ。


















「?」


















なんで?なんて言う前に、スーザンが真っ赤な顔で叫ぶ。


















「ちょっと、!水浴びってなんだかわかってるの!?

バスタイムよバスタイム!!!あなた、言ってることわかってる!?」

「バスタイムって……お風呂……あーーーっ!」


















いやーーーーーっ!









恥ずかしくて叫んで消えたかった。だって、お風呂?
私、ピーターと仲良くなるために裸の付き合いでもするつもりだったの!?











って、裸の付き合い……
















「キャー!今の無し無し無し無し!聞かなかったことにしてーっ!

っ…キャー!!!」
















お約束というかなんと言うか…。落ちました。

うん、真っ逆さまにね。


















!」

「きゃーっ!!」
















ピーターとスーザンの驚愕の叫びが聞こえる。落ちていくのに周りの声がはっき
りゆっくり…。あああ…どうなっちゃうの、私!




地面にぶつかる!というとこで、何かが私と地面の間に入った。

















ボフン!


















もふもふした毛布のようなものに思いきりぶつかったけど、全然痛くなかった。
(顔は潰れるかと思ったけど)


















「う〜」


















唸りながら体を起す。
そして下敷きにした毛布のようなものを見る。





……あれ?




















「「アスラン!!!」」


















ピーターとスーザンの声が重なった。







アスラン…?アスラン…?

















「えっ!?」

















まさかと思って目を凝らすと、毛布のようなものは金色に光る艶々の毛。
そしてさっきまで顔を埋めていたのはふさふさな鬣。








私が落ちたのは、紛れもなくアスランの背中だった。



















「アスラン!」

、大丈夫か?」

「う……うん」
















アスランはゆっくりと腰を屈めて私を下ろしてくれた。
私が、腰が抜けたようにその場に座り込むと心配して目の前に座ってくれる。
彼の微笑みは優しくて、おっちょこちょいな私はとても不甲斐なかった。


















、元気が良いのは素晴らしいことだ。しかし良すぎるのも問題だ」

「はい」

「ピーターと裸の付き合いをしたいのは良いが、節度ある行動をしなさい」

















ギャー!!!
なんだか全てにおいて怒られてるみたい…。




私は真っ赤になったあとしょぼんとすると、顔を上げた。
アスランの後ろでいまだに食器を抱えているピーターは真っ赤になって私を見ていた。
彼にも申し訳なくなって目を逸らしてアスランを見る。
















「はい、ごめんなさいアスラン」

「わかれば宜しい」















しっかりとお辞儀して謝る。するとアスランは立ち上がって私を包むように丸くなった。
ふんわりした毛が私の肌に絡みつく。
くすぐったいはずなのに、それが心地よくてずっとこうしていたいと思っちゃう。

目の前にいるスーザンとピーターは驚いた顔で私達を見ていたけれど、そんなのはもう関係なかった。
だって……






アスランは私の頬に親愛のキスをしてくれたの。













それは優しくて、温かくて……幸せなものだった。



















。君がいなくなったら、私はどうすればいいのかわかならくなる」

「え……?」

「君がいなくなるなんてことは、考えられないのだ」

「アスラン……」



















それは、愛の告白の様な……




















「ピーター?」




















スーザンの声にハッとしてそちらを見ると、さっき立っていた場所から数歩後ずさったピーターと目が合った。
彼は何とも言えない表情で私を見ると、


















「食器、片付けてくる」


















と言って立ち去ってしまった。
スーザンはぽかんとして彼の背を送り出し、アスランも何とも言えない表情で彼の背を見つめていた。
私は、何が起こったのか分からず…今日アスランが言ってくれた嬉しい言葉もそのうちに忘れてしまった。
















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鈍感ちゃんですね(笑)
それにしても、アスランの背中に落ちるなんて恐れ多い!!!
もう少し気をつけて行動しましょう☆^^


2008/06/22






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